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きのこふしぎ発見

きのこを身につける時代が到来!サステナブルなマッシュルームレザー

2022.09.01
きのこを身につける時代が到来!サステナブルなマッシュルームレザー

低価格で手軽に最新の流行を取り入れることができる、ファストファッション。しかしファストファッションの需要が世界的に拡大したことにより、衣類の大量消費、大量廃棄が繰り返され、ファッションが環境に与える負荷は極めて大きくなっています。

そこで近年、ファッション業界においても「サステナブル(持続可能)」であることが求められるようになりました。その動きの中で注目されているサステナブルな生地素材のひとつが、植物由来の「ヴィーガンレザー」。天然皮革や合成皮革に比べて環境への負荷が少なく、動物愛護の観点からも望ましいレザーの代替素材です。そのヴィーガンレザーの原料として、きのこに熱い視線が集まっています。

本記事では、きのこを原料としたヴィーガンレザー、「マッシュルームレザー」について、従来のレザーと比較しつつ紹介します。

天然皮革、合成皮革の環境に対する問題点

(牛皮と羊皮)

<天然皮革>
天然皮革は、牛や豚、羊など家畜の皮から作られるレザー。天然皮革については、家畜の飼育によって多くの温室効果ガスが排出されることが問題となっています。そのひとつが牛のげっぷで、げっぷに含まれるメタンガスの温室効果は二酸化炭素の25倍。世界全体でみると、家畜のげっぷで排出されるメタンガスは温室効果ガスの4%にあたるそうです。また、牧草地を開拓するための森林伐採も問題視されているところ。

もっとも、天然皮革の原料に使用されるのはおもに食用の家畜の皮であるため、これらの問題は天然皮革というよりも畜産業の問題です。しかし、皮革の加工に有毒な化学物質が使われていることも懸念すべき点であり、また動物愛護の点から天然皮革の使用に反対する考え方もあるでしょう。

<合成皮革>
合成皮革、いわゆるフェイクレザーは、布地にポリ塩化ビニルやポリウレタンをコーティングし、天然皮革の質感に似せたものです。天然皮革に比べると環境への負荷は小さいですが、やはり製造過程に有害な化学物質が使用されています。またポリ塩化ビニルやポリウレタンは石油を原料とするプラスチックなので、自然分解が非常に困難です。

ヴィーガンレザーとマッシュルームレザー

(引用「Our Heritage –
MycoWorks」 https://www.mycoworks.com/our-heritage)

そもそもヴィーガンレザーとは何でしょうか。ヴィーガンレザーという言葉に関しては今のところ厳密な定義はなく、動物由来ではないフェイクレザー全般の意味で使われることもあれば、プラスチックを使ったフェイクレザーと区別して植物やきのこの菌糸体由来のものをさす場合もあります。

植物由来のヴィーガンレザーは、廃棄りんごを使ったアップルレザーやパイナップルの葉を原料にしたパイナップルリーフレザーなど種類もさまざま。その中で、「きのこの菌糸体」を原料としたものがマッシュルームレザーです。

菌糸体とは、植物でいうところの根の部分にあたる組織。繊維状で、マシュマロのようにふわっとした見た目をしています。マッシュルームレザーの製造は、この菌糸体の胞子をシートに植え付けるところから始まります。おがくずや有機物を与えて、温度・湿度を調整した室内で菌糸体を育成。成長した菌糸体は圧縮してマット状にし、なめしや染色といった加工を経て、マッシュルームレザーとなります。

菌糸体は2週間程度で成長するので、製造にかかるエネルギーも少なく、高効率で素材を作ることができます。また、菌糸体を収穫したあとの培地は次の菌糸体育成のための堆肥となるため無駄がありません。さらに、マッシュルームレザーで作られた製品そのものについても、現段階ではまだ完全にプラスチックフリーではないため自然分解はできませんが、ゆくゆくは、使用を終えたあとに自然分解できる製品の開発が目指されています。

そして肝心のレザー素材としての特徴は、摩擦などにも耐えうる高い耐久性があり、見た目、質感のみならず品質も天然皮革に匹敵するというもの。また、プラスチックを使った合成皮革に触るとひんやりするのに対し、マッシュルームレザーの手触りは柔らかく暖かなことも魅力です。

すでに、マッシュルームレザーを使ったヨガマットやスニーカーが発売、あるいは発売予定とされており、日本国内でもマッシュルームレザーを用いた鞄などの試作品が発表され、話題になっています。

きのこの力で別素材もエコに

(引用「Mycoteck Lab – Mylea」https://mycl.bio/mylea)

環境負荷の小さい代替レザー素材として注目されているヴィーガンレザーですが、たとえばアップルレザーにはポリウレタンが使われているように、素材の接着剤として樹脂が使われているのが現状です。

そこで、樹脂の代わりにきのこの菌糸を接着剤に活用したヴィーガンレザーが開発されています。開発しているのはインドネシアのスタートアップ企業。菌糸で接着する素材に、小麦ふすまなどの農業廃棄物や林業で出る樹皮などを使うことで、農業と林業をつなげる仕組みづくりに取り組んでいます。きのこは別素材のヴィーガンレザーの環境負荷を下げるためにも、一役買っているといえるでしょう。

丈夫で環境にやさしく、動物愛護の点からも注目されるマッシュルームレザー。きのこを食べるだけでなく、身につける時代がすぐそこまで来ています。

参考文献

  1. https://www.cnn.co.jp/style/design/35162927.html
  2. https://mtrl.com/magazine/report/mmk15
  3. https://www.mylo-unleather.com/
生命力を食べる。 人と菌の物語

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