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アスリート必見!大事な睡眠の話(後編)

2020.01.16
アスリート必見!大事な睡眠の話(後編)

前半では、みなさんに知っておいてほしい睡眠の基本についてお話ししました。後半では、さらに実践的な内容で、よりよい睡眠へと導く方法、睡眠で気をつけたいことなど、自分に合った睡眠習慣を身につけるためのヒントをご紹介します。

■よりよい睡眠を得るために

寝る前はスムーズな入眠、睡眠の質の向上を意識した行動をとりたいもの。仕事や学校、アスリートであれば練習や試合のことはいったん忘れる、スマホやテレビにはなるべく接しないといったことも脳の興奮を鎮めるためには必要です。また深呼吸をすることも効果的で、寝る1時間前くらいまでのストレッチやヨガは呼吸を安定させてくれます。
眠る前にホットミルクを飲むのもお勧めです。牛乳には、睡眠ホルモンといわれる「メラトニン」の原料であり、幸せホルモン「セロトニン」も生成する必須アミノ酸「トリプトファン」が含まれており、神経を落ち着かせるカルシウムも豊富です。鎮静効果やリラックス作用もあるカモミールティーを飲むのもいいでしょう。いずれにしても“冷えは安眠の大敵”ですから、温かい飲みものがベターです。
好きな香りや音楽の利用(環境音楽や自然音も効果的)など、自分に合った入眠準備行動でリラックスモードに入れるよう工夫してみましょう。

睡眠にとってよいこと・よくないこと

■どうしても眠れない時は

無理に寝ようとするほど眠れなくなるものです。そういう時は、何かを飲む、トイレに行く、深呼吸するなど気持ちの切り替えをしてみてください。考えることをやめて、目を閉じてぼんやりするだけでも眠気を感じやすくなります。どうしても眠れなければあきらめて寝ない(寝床に入らない)のも一つの手です。

■気持ちよく目覚める方法

スムーズに入眠し、質のよい睡眠が得られたら、その仕上げとして朝の目覚めも気持ちよくすっきり覚醒へと導きたいものです
そのためには、起きたらすぐにカーテンを開けて日光を浴びるようにしましょう。日光は体内時計にスイッチを入れてくれます。軽いストレッチを行うことも、頭と身体の準備体操として効果的です。また食事も身体のリズムを整える効果がありますので、朝食はしっかり摂りましょう。ここでのスイッチの切り替えは、日中のパフォーマンス向上には欠かせません。

■昼寝はアスリートに効果的

短い時間の昼寝は、日中のパフォーマンス向上につながります。ただし、1時間以上の長い睡眠は、夜の入眠を妨げるばかりか、深睡眠を減少させてしまいます。昼寝をするなら、午後の早めの時間(2時頃)に20分程度がよいでしょう。

■睡眠時間が短いと肥満に?

睡眠不足は翌日の食欲を高め、特に高カロリー食を欲するといわれます。これにはホルモンが関係しており、睡眠時間が減ることによって、食欲を抑制するホルモン(レプチン)が減り、食欲亢進ホルモン(グレリン)が増えます。減量したいアスリートは、食事制限をするのではなく、まずはしっかりと眠るようにしましょう。

■いびきにご用心

いびきにご用心 習慣的にいびきをかく場合、睡眠時無呼吸の可能性があるかもしれません。睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に空気の通り道が狭くなることで呼吸が弱まり(止まり)、心血管系に悪影響を及ぼしたり、睡眠の質を低下させる疾患のことです。
原因としては、肥満や顎が小さいといった近代の日本人にみられる身体的傾向が挙げられます。放置しておくと、日中の眠気や倦怠感だけでなく、糖尿病や高血圧、心臓病の発症リスクが高まるともいわれます。
アスリートでは、競技によって大きな体格が有利となるスポーツ(ラグビー、重量挙げ、レスリング、柔道、相撲など)もあることから、体重を故意に増量させた場合や、頸部の筋肉の発達などによって発症するケースも考えられます。一方で、強度の高いトレーニングや試合、またコンディショニングの一環での昼寝の習慣などから日中の眠気を感じにくいため、受診の必要性を自覚しにくい選手も多いようです。的確な診断・治療を行うことで、アスリートにとって重要なパフォーマンスや集中力の向上につながる可能性もあり、実際にアスリートにおける治療の有益なデータも報告されています。我が国の国技である相撲界では多くの力士が治療を受け、就寝時にマウスピースを利用するなどで睡眠の質が向上し、取り組みにおけるパフォーマンス向上を実感したという話も耳にします。しかしながら、まだまだ受診率や診断率は低く、さらなる研究報告はもちろん、アスリート自身や周囲のスタッフへの普及啓発が必要といえるでしょう。

睡眠は、生活習慣の中でも非常に重要なものです。
忙しい平日に睡眠不足だった分を、週末の寝溜めで補うといった話もよく耳にしますが、それでは「睡眠負債」は返しきれません。平日も週末も規則的に寝ることが大事。寝不足だけでなく、寝過ぎもよくありません。決まった時間に寝て起きることが体内時計を保つ秘訣です。
ぐっすり眠ってすっきり起きるための“自分に合った方法”を、この機会にぜひ見つけてみてください。一人ひとりがセルフマネジメントの一つとして、アスリートのみなさんはコンディショニングの一つとして、自分の睡眠について見直してみてはいかがでしょうか。

監修者 葛西 隆敏(Takatoshi Kasai)

監修者 葛西 隆敏(Takatoshi Kasai)
心不全や冠動脈疾患等の心臓病と睡眠時無呼吸症を主な研究分野として研究を行う傍ら、順天堂医院循環器内科、虎の門病院睡眠センターなどで臨床医を務める。2006年、医学博士(循環器内科学)の学位取得。スポーツの現場において睡眠の“質”に関する知識の普及・啓発が重要と考え、女性スポーツ研究センターでは「女性アスリートの睡眠の質の低下に影響を及ぼす因子に関する研究」を実施している。自身も中学校時代からバスケットボールに勤しみ、カナダ・トロント大学睡眠医学研究室の研究員としてカナダ滞在期間中も現地のチームでプレーするなど、スポーツとの関わりも深い。

順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 准教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科心血管睡眠呼吸医学講座 准教授 併任
順天堂大学大学院医学研究科循環器遠隔管理学講座 准教授 併任
日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本睡眠学会専門医

今月の菌勝メシ

アスリート必見!大事な睡眠の話

アスリートのコンディショニングに欠かせない睡眠。実は睡眠の質を高めるために、食事も大切な役割を担っています。特に朝ごはんをしっかりと食べて身体にスイッチを入れることが重要です。

朝ごはんに!きのこのピザトースト

オススメは具材をのせてトースターで焼くだけで簡単にできるピザトースト。睡眠ホルモンと呼ばれる『メラトニン』の原材料となるトリプトファンが豊富なツナとチーズ、メラトニンの合成に必要なビタミンB6が含まれるきのこが一緒に摂れ、さらにパンでスイッチとなる糖質も補給できます。忙しい朝でも簡単に作れる栄養満点メニューです。

レシピイメージ 朝ごはんに!きのこのピザトースト

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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