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アスリート必見!大事な睡眠の話(前編)

2020.01.01
アスリート必見!大事な睡眠の話(前編)

人生の3分の1は睡眠時間。睡眠の“質”と“量”の低下が叫ばれる昨今、私たち人間にとっては大問題にもかかわらず、睡眠へのケアは意外と忘れられがちです。発育発達に必要な成長ホルモンにも関連するなど、成長期にも大きな役割を果たす睡眠。アスリートにとっても、睡眠はコンディション管理をするうえで大変重要なものであり、ぐっすり眠ることが翌日のパフォーマンスに好影響を与えます。前回の「入浴」と同様、アスリートの疲労回復に欠かせない要素「睡眠」の基本をご紹介します。

そもそも私たちは、なぜ眠るのでしょうか?
脳の機能の一つであり、具体的な機能としては情報処理説、脳発育説などさまざまな説がありますが、いまだに明確な答えは出ていません。

■睡眠の役割

眠る理由はさておき、睡眠が人体にもたらす効果は、多くの分野で報告されています。

  • 疲労回復
  • ホルモンバランスの適正化
  • 免疫力の向上
  • 脳のお掃除
  • 記憶の整理と定着 などなど

規則正しい睡眠・覚醒は、生体リズムを整えるうえでも重要です。睡眠・覚醒のリズムが乱れてしまうと体内時計も乱れ、不眠症や自律神経失調症、さらにはがんの発症リスクも高まるといわれています。
また練習などでハードに身体を動かすアスリートにとっては、睡眠は心身のリカバリーに欠かせない要素。おろそかにするとプレーに必要な集中力や判断力も落ち、パフォーマンス低下に直結することは容易に想像できるのではないでしょうか。

■必要な睡眠時間とは

推奨睡眠時間 一般的に必要といわれる睡眠時間は7~9時間(最低でも6時間)といわれますが、年齢などによっても個人差があります(上図参照)。また、同じ人であっても、時と場合によって、必要な睡眠時間は違ってきます。
日中に眠気を感じる、起床時の爽快感がない=睡眠不足のサイン。
その時の自分に必要な睡眠時間を見つけ、その±2時間以内を保つよう心がけましょう。

■「寝る子は育つ」の本当の意味

「寝る子は育つ!」とよくいいますが、長時間寝ることが成長に効果的なのだと思っている方も多いかもしれません。じつは、たくさん寝る子が育つというよりも、質のよい睡眠の子が育つということが研究でわかってきました。
では、質のよい睡眠とはどういうものなのでしょう。
睡眠は、脳や身体の状態の違いから「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」に区別されており、「レム睡眠」とは眠っていても眼球が動いていて、脳は活動している浅い睡眠のことをいいます。いっぽう「ノンレム睡眠」とは、眼球が動かず、脳も休息してぐっすり眠れている睡眠のことです。私たちは眠っている間に、この2つの睡眠を交互に繰り返しています。そして、ノンレム睡眠(浅いノンレム睡眠=N1 → 深いノンレム睡眠=N2)→レム睡眠という90分程度のサイクルを一晩で4~6回繰り返すのが、正常な睡眠といえ、そのうち深睡眠は全体の15~20%ほどが望ましいといえます。理想的な睡眠では、この深睡眠のときに成長ホルモンが分泌され、筋肉量を増加させ、脂肪量を減少させるため肥満解消にもつながります。睡眠障害などによる質の悪い睡眠では、深睡眠の割合が低く、成長ホルモンの分泌も低下してしまいます。図にあるように深睡眠は、睡眠初期に多く現れるため、最初のサイクルでいかに深睡眠を確保するかが特に大切です。

正常な睡眠における睡眠ステージと機能

■眠くなるスイッチ

質のよい睡眠には、寝始めの90分が肝心。そのためには、いかにスムーズに入眠できるかがカギとなります。

眠くなるスイッチ その① 体温(深部体温=脳や内臓などの温度)

手足が暖かいのは眠い証拠 人体のリズムとして、体温は夜急激に低下するものなのですが、この低下時に寝ることができればスムーズに入眠ができます。赤ちゃんが眠くなったときに手足が温かくなるのも、手足から体内の熱を放散して深部体温を下げるための現象といえます。
その現象を、人為的に行い、睡眠に有益な効果をもたらしてくれるのが入浴です。湯船に浸かって身体を温めると、その後、深部体温が急速に低下。それによって眠気が起こって入眠しやすくなり、深睡眠も増加することがわかっています(※前回のコラム「入浴」もご参照ください)。
42℃の全身浴なら5分程度、半身浴なら10分程度の入浴が効果的です。ただし、寝る直前ではなく、入眠の1時間前までに入浴を済ませましょう。

眠くなるスイッチ その② 脳

寝る直前のスマホやテレビが睡眠によくないというのは知っている方も多いでしょう。脳が活発に活動していると、脳の温度は高いまま。つまり、脳温≒深部体温が下がるのを邪魔してしまうのです。
また、眠りにつくにはリラックスモードの副交感神経が優位になることが大切ですが、スマホなどで脳が興奮していては緊張モードの交感神経が優位となり、入眠が妨げられてしまいます。脳をリラックスさせるため、脳のスイッチをオフに切り替えることが重要です。

前半では睡眠の基本をご紹介しました。後半は、睡眠の質をよくするための専門的なアドバイスをお伝えします。

監修者 葛西 隆敏(Takatoshi Kasai)

監修者 葛西 隆敏(Takatoshi Kasai)
心不全や冠動脈疾患等の心臓病と睡眠時無呼吸症を主な研究分野として研究を行う傍ら、順天堂医院循環器内科、虎の門病院睡眠センターなどで臨床医を務める。2006年、医学博士(循環器内科学)の学位取得。スポーツの現場において睡眠の“質”に関する知識の普及・啓発が重要と考え、女性スポーツ研究センターでは「女性アスリートの睡眠の質の低下に影響を及ぼす因子に関する研究」を実施している。自身も中学校時代からバスケットボールに勤しみ、カナダ・トロント大学睡眠医学研究室の研究員としてカナダ滞在期間中も現地のチームでプレーするなど、スポーツとの関わりも深い。

順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 准教授
順天堂大学医学部附属順天堂医院 睡眠・呼吸障害センター センター長
順天堂大学大学院医学研究科心血管睡眠呼吸医学講座 准教授 併任
順天堂大学大学院医学研究科循環器遠隔管理学講座 准教授 併任
日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本睡眠学会専門医

今月の菌勝メシ

アスリート必見!大事な睡眠の話

アスリートのコンディショニングに欠かせない睡眠。実は睡眠の質を高めるために、食事も大切な役割を担っています。特に朝ごはんをしっかりと食べて身体にスイッチを入れることが重要です。

朝ごはんに!きのこのピザトースト

オススメは具材をのせてトースターで焼くだけで簡単にできるピザトースト。睡眠ホルモンと呼ばれる『メラトニン』の原材料となるトリプトファンが豊富なツナとチーズ、メラトニンの合成に必要なビタミンB6が含まれるきのこが一緒に摂れ、さらにパンでスイッチとなる糖質も補給できます。忙しい朝でも簡単に作れる栄養満点メニューです。

レシピイメージ 朝ごはんに!きのこのピザトースト

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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