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Method of Improving Performance

パフォーマンスアップのカギ!アスリートこそ大切にしたい“入浴”のススメ(前編)

2019.12.01
パフォーマンスアップのカギ!アスリートこそ大切にしたい“入浴”のススメ(前編)

みなさんは日々、どのように入浴していますか?毎日しっかり湯船に浸かる人もいれば、季節によってはシャワー浴だけという人もいるかもしれません。近年、アスリートのパフォーマンスにおいても、入浴が大きな影響をもたらすことが実証されてきています。国内随一の温泉湧出量を誇っている温泉県、大分県別府市で多くのアスリートを医学的見地からサポートしている医師が、入浴とアスリートの関係について解説します。

“お風呂に浸かること=身体にいい”ということはみなさんご存じでしょう。身体がぽかぽか温まる、疲労回復効果やリラックスができるなど感覚的には知っていても、湯治 (とうじ) やリハビリで利用しない限り、具体的な効果を考えて入浴する方は少ないのではないのでしょうか。スポーツ界でも最近は、さまざまな入浴方法を積極的に取り入れ、リカバリーやパフォーマンスアップにつなげています。
別府で合宿を行ったアスリートを対象に、温泉入浴効果の実験・検証を行ったところ、彼らは温泉効果を実感して帰っていきます。例えば日ごろ血の巡りが悪かったパラアスリートが、温泉に入ることで汗をかきやすくなり、寝つきもよく疲労回復できたようで、その後入浴を続けた結果、アジアパラ大会で初優勝につながったこともあります。
また、ロンドンやリオのオリンピックでは、選手を後方支援する施設にリカバリープールとして人工炭酸泉や温冷水交代浴といった温浴施設が併設され、選手に大変好評だったそうです。

■入浴とリカバリー効果

高評価の理由として、入浴によるリカバリー効果が挙げられます。
筋肉は、トレーニングさえすれば大きくなるというものではありません。必ずスクラップ&ビルド=壊して建て替えをすることで、いい筋肉として成長していきます。激しい練習では筋肉を壊しているだけですから、ちゃんと建て替えをしなければならないのです。

<入浴によるリカバリー効果① 血流アップ>

お湯の温熱による効果で、副交感神経が働くことで血管が拡張し、さらにシャワーでは得られない静水圧がかかることによって、循環血液量が上がります。
昔は、筋肉に乳酸が溜まることで筋肉痛が起こるといわれましたが、最近では筋肉の中に乳酸が溜まることで赤血球が壊れ、赤血球から飛び出た遊離ヘモグロビンが筋肉の中で痛みを生じさせるといわれています。血行をよくすれば、これらを流すことができ、筋肉のリカバリーに役立ちます。入浴習慣のないラオス出身のパラアスリートが、入浴を続けたことで「ウエイトトレーニング後の筋肉痛が残らなくなった」と感じたのは、この効果によるものと考えられます。
痛みの原因となる遊離ヘモグロビンですが、肝臓に運ばれることによって再利用され、鉄欠乏を防ぐことに役立ちます。乳酸も肝臓では再度グリコーゲンに変えることができます。もちろん、食事でしっかり栄養を摂ることが大事ですが、実はリカバリーにはこのヘモグロビンの鉄やたんぱく質の再利用も非常に大事なのです。

また、疲労回復の指標の一つとなる血管の拡張性を表す血管内皮機能が、シャワー浴と比較して高温温泉入浴時、明らかに改善するというリカバリー効果も認められました。

<入浴によるリカバリー効果② 睡眠との関係>

睡眠と疲労回復効果の関係 睡眠の状態はスポーツ選手のパフォーマンスにも影響するといわれています。最初の90分間の眠りをよくすることや、人は深い眠りと浅い眠りを繰り返していますが、深い眠りがいかに長くなっているかが疲労回復のカギとなるのです。
「寝る子は育つ」といいますが、最初の90分間に成長ホルモンが出て、たんぱく合成が活発に行われ、新陳代謝を促します。また、深睡眠の割合が大きいほどアスリートに必要不可欠なフェリチン(貯蔵鉄)が高い=鉄の回収ができていて鉄を蓄える能力が高いといわれます。眠れなくて疲れがとれないという人は、寝つきが悪く、ここでの疲労回復が十分にできていないのです。

■よい眠りを得るには

睡眠と疲労回復効果の関係 人は身体の深部(脳など)の温度が下がると眠くなります。熱いお風呂に浸かることで深部体温がいったん上がり、血管拡張機能が上昇することで体内の熱が放出され、ゆるやかに深部体温が下がっていき、脈拍、呼吸などがゆっくりになることで深い眠りにつけるのです。
特に暑い夏場は深部体温が下がりにくいもの。アスリートはもともと運動をして昼間の体温が上昇しているので、深部体温の「上がった分だけ下がろう」とする性質を利用するために、入浴によって深部体温を高めることが重要です。夏場はシャワーで済ませがちですが、入浴をすることが質の良い睡眠につながります。

監修者 松田貴雄(Takao MATSUDA)

監修者 松田貴雄(Takao MATSUDA)
独立行政法人国立病院機構 西別府病院 スポーツ医学センター センター長
婦人科(生殖遺伝科)の医師であり、日本スポーツ協会認定スポーツドクターとして、様々なアスリートをサポート。特に、サッカー界における医事活動は長く、1998年より長年にわたり、地元大分のフットボールクラブをはじめ、サッカー女子日本代表“なでしこジャパン”などの帯同ドクターとして、その活躍を支援。2014年度からは順天堂大学女性スポーツ研究センターと共同で文部科学省(現スポーツ庁)事業の、女性アスリート育成・支援プロジェクト「女性アスリートの戦略的強化に向けた調査研究」の一部を委託され、女性スポーツ界の競技力向上のための研究に携わる。

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パフォーマンスアップのカギ!
アスリートこそ大切にしたい“入浴”のススメ

入浴によるリカバリーと合わせて行いたいのが食事による疲労回復です。エネルギー源となる糖質、糖質の代謝を促すビタミンB1を積極的に摂ることでリカバリー効果を高めることにつながります。

きのこたっぷりスタミナ豚丼

疲れを取るためには食事選びも大事なポイントです。きのこに豊富なビタミンB群はエネルギー代謝を促して疲労回復効果が期待できます。また豚肉に豊富なビタミンB1は主にエネルギーの素となる糖質の代謝を促して、きのこのビタミンB群の効果を高め、さらにニラに含まれるアリシンはビタミンB1の働きを高めるため、疲労解消を後押しします。
試合の前日や練習後に食べたいオススメメニューです。

レシピイメージ きのこたっぷりスタミナ豚丼

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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