子どもの神経発育に欠かせないゴールデンエイジとBDNF
2024.05.13初夏の気候となり、子どもたちは屋外で遊ぶ機会が多くなったり、運動会が行われたりするこの時期。太陽のもと、思い切り身体を動かしてほしいと思います。
皆さんは、「ゴールデンエイジ」という言葉をご存知ですか?ゴールデンエイジとは、子どもの運動能力が著しく向上する、成長におけるとても重要な時期で、様々な動きの即座の修得ができるといわれています。ゴールデンエイジは、一般的に10歳前後の時期といわれますが、その前の5歳から8歳までの時期をプレ・ゴールデンエイジといいます。
プレ・ゴールデンエイジ期にしっかりとからだを動かしておくことによって、身体を動かすための基礎的な神経のネットワークを構築することができ、ゴールデンエイジ期に、より順調にいろいろなことができる、修得することができるようになります。この様な意味においても幼少期の遊びは、とても重要な役割を担っています。
<Column>
運動で神経の肥料ともいえるBDNF(脳由来神経栄養因子)をつくる
BDNFとは子どもの神経の成長に欠かせないもので、神経細胞の生存や成長、学習と記憶にとって極めて重要な働きをします。BDNFは身体を動かすことでつくられるといわれているため、幼少期に豊かな環境下で様々な体験をすることが脳全体に良い刺激を与え、子どもの健やかな発達を促してくれるのです。
<Let’s Play!>
前回は、1歳~7・8歳の幼児期から学童期前半に行いたい、身体操作の基本となる「バランス」遊びについてご紹介しました。
プレ・ゴールデンエイジ期にもこのバランス遊びが重要になるため、今月は、先月よりもさらにレベルアップした「バランス」を育てる遊びを紹介します。子どもの成長に合わせてぜひ毎日1種目ずつトライして、楽しみながら子どもの成長を促しましょう。
■ 親子で出来るバランス運動遊び
膝の上に立ってみよう!
(レベル1)
① 大人は床に仰向けになり、脚の裏を地面につけて膝を立てます。
② 子どもは大人の手を掴みながら、ゆっくりと大人の立てた膝の上に登ります。
③ バランスがとれたら手を放し、立ってみましょう。
*大人の人は、膝を安定させるために両足を少し開きます。さらに膝を安定させるためには、両足は開いたままで膝をくっつけると良いでしょう。
(レベル2)
① 大人は床に仰向けになり、膝を胸に近づけるよう足を上げます。
② 子どもは大人の手を掴みながら、ゆっくりと上げた足の膝付近に登ります。
③ バランスがとれたら手を放し、立ってみましょう。
さらなるチャレンジ①手のひらの上に立ってみよう!
①大人は床に仰向けになり膝を立て、肘を地面について手のひらを上に向けます。
② 子どもはバランスを取りながら、手のひらの上に立ちます。
* 大人の手の位置を低くしたり、子どもも最初は膝を曲げた状態で手の上に“乗る”ところからはじめましょう。
* 大人は、脇を締め、肘を体側に付けるようにすると腕が安定します。前腕を床に対して垂直にし、筋肉ではなく、骨で子どものからだを支えるようにすると良いでしょう。手の上にバランスよく、サッと乗れるようになるために、何回も何回も練習することが大切です。
* 子どもが手のひらの上に乗る時にもう一人の大人の人が子どもの手をもって、支えてあげると手のひらに乗り易くなります。
さらなるチャレンジ② 肩の上に立ってみよう!
① 大人は少し膝を曲げた状態で立ち、子どもの両手を持ちます。子どもは、大人の膝、胸、肩へと登ってゆきます。大人は、子どもが自分の肩の上で立てるように、子どもの手を子どもの体より前方に位置するように子どもに合わせて上方に挙げて行き、子どもの重心が後ろに行かないように手の位置を考え、調整します。
② 大人は子どもの手や脚や腰を支え、子どもは少しずつ肩の上でバランスを取りながら、立ち上がります。上手くバランスが取れるようになると、手を離すこともできるようになるでしょう。
* 大人、子どもともにバランスが大切なので、お互いしっかりと声をかけ合いながら行いましょう。
*子どもが肩の上で立つか否か、また、肩の上で立って、手を放すか否かは、子どもの判断に任せましょう。バランスがうまく取れないときは、恐怖心が先に立ちます。恐怖心がある子はケガに繋がったり、楽しさが失われて挑戦する気持ちや成長の機会が失われることにも繋がるため、無理することは避けましょう。
■ 1人でできるバランス運動遊び
お尻バランスでこんにちは!
① お尻を床につけ、手で足を支えながら足をあげ、お尻の一点でバランスをとります。
② 足を閉じた状態で3秒間バランスをとりましょう。
③ バランスを保ったまま、「こんにちは」といいながら、両足を開きます。
* 手は、はじめのうちは膝の裏を支えるようにし、少しずつ足首当たりを持てるよう、支える位置も移動させていきましょう。
■ 友達とできるバランス運動遊び
立った姿勢で手押し相撲
① 友達と向かい合って立ち、手のひらを合わせます。
② 足を動かさず、手で相手を押したり、ひいたり、かわしたりして相手のバランスを崩すようにします。バランスを崩して、足を移動させてしまったら負けになります。
蹲踞(そんきょ)の姿勢で手押し相撲
① 友達と向かい合ってしゃがみ(蹲踞の姿勢)、手のひらを合わせます。
② 足を動かさず、手で相手の手のひらを押したり、自分の手をひいたり、かわしたりして、相手のバランスを崩すようにします
*蹲踞の姿勢をとると、足首の硬さに気づくことがあります。足首の硬さはケガの原因になったり、走る・跳ぶ・蹴るなど様々な動作におけるパフォーマンスの低下につながります。近年、足首が硬くて、足の裏を地面につけて腰を下ろすと後ろに転んでしまうという現象がみられます。小さい時から砂場で遊ぶ、地面にお絵かきをする、地面にいる虫を観察するなど、子どもが自然と足の裏を地面につけてお座りする姿勢が取れる環境を作ってあげましょう。積極的にこちらの遊びを行なうのもおすすめです。
<Let’s Eat!>
外遊びがしたくなる、そんな爽やかな新緑の季節になりました。今月は、外遊びの機会や運動会が行われる地域が多くなる時期に合わせて、外で思い切り身体を動かした後、爽やかな風を感じながら食べたい「お弁当」にぴったりのきのこレシピをご紹介します。
子どもの身体づくりに必要な栄養素がたっぷりなうえ、見て、触って、味わって…と五感を刺激するお弁当で、元気で健康な身体づくりをサポートしましょう。
<おすすめレシピ>
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きのこのカラフルサンド
手で持って手軽に食べられるサンドイッチは、外遊びのお弁当の定番。きのこも野菜もたっぷり使った具材は、カラフルで見た目から食欲を掻き立てます。具材のきのこや野菜は、子どもが不足しがちなビタミンや食物繊維を含み、子どもの健やかな成長をサポートします。特にきのこに豊富なビタミンDは、チーズなどに含まれるカルシウムの吸収を助けて、動いたあとの骨づくりを助けます。
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きのことアスパラガスのカラフルむすび
てまり型のおむすびは、見た目もかわいらしく、行楽のお弁当にもぴったり。実はおむすびを硬すぎず、きれいに成形する力加減は大人でも難しく、手先の器用さを身につける良い機会に繋がるため、お子さんと一緒に作るのもおすすめ。糖質がたっぷりなおむすびに、糖質の代謝を助けるビタミンB1の豊富なきのこを加えることでエネルギーチャージに最適な一品です。
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きのこ入りミートボール
お弁当の定番料理のひとつ「ミートボール」が入っていると、子どもはお弁当を開けた瞬間に嬉しくて笑みがこぼれるかもしれません。子どもの身体づくりに欠かせない肉類のタンパク質と、タンパク質を代謝するきのこに豊富なビタミンB群を合わせることで、子どもの身体づくりをサポートします。
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きのことジャガイモのガレット風
旬の新じゃがときのこを卵でまとめた、ちょっとオシャレな一品。なんだろう?と子どもの興味をそそるこのメニューは、卵、チーズ、きのこ、ジャガイモと子どもが好きな食材でつくられています。きのことじゃがいもに豊富な食物繊維は腸を整えることで栄養素をしっかりと吸収できる身体をつくり、近年の子どもに多い便秘改善にも役立ちます。
profile
松本大学人間健康学部健康栄養学科専任講師
兵庫大学を卒業後、管理栄養士を取得し、運動と栄養の両面から研究する運動栄養学を大阪体育大学大学院で学ぶ。大学院卒業後は、スポーツクラブアクトス、チームニッポン・マルチサポート事業(栄養)で健康づくりの運動指導やトップアスリート栄養サポートに従事して現職に就く。現在は、運動栄養学の教育・研究とともに、県内・外のアスリートの栄養サポートを行う。
【資格】
管理栄養士、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士、スポーツ科学修士
松本大学人間健康学部スポーツ健康学科教授
日本体育大学卒業後、日本体育大学大学院在学中に中国北京体育学院へ交換留学。聖徳大学短期大学部、聖徳大学専任講師を経て、2002年度より松本大学に着任。信州大学大学院 医学系研究科 加齢適応医科学専攻で医学博士を取得。現在は、幼児の運動能力に関する研究などに取組み、レクリエーション関連科目や運動と遺伝子などの講義を担当する。
【資格】
レクリエーション・コーディネーター、体育学修士、医学博士
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