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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第32回 水泳・金藤 理絵さんインタビュー

2023.07.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第32回 水泳・金藤 理絵さんインタビュー

アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、競泳の日本代表選手としてオリンピック2大会に出場し、2016年リオデジャネイロオリンピックの女子200m平泳ぎで金メダルを獲得した金藤理絵さん。金メダルにたどりつくまでの歩みや葛藤、その心と体を支えた食事についてお話しいただきました。

はじめに、水泳を始めたきっかけを教えてください。

私は3人きょうだいの末っ子で、兄姉が泳いでいるところを見て「楽しそうだな、私もやりたい」と、小学生3年生の時にスイミングに通い始めました。

オリンピックはいつから意識していましたか。

小学校6年生の卒業文集に「将来の夢」を書くコーナーがあって、そこに「オリンピックの金メダル」と書きました。でも、高校生の頃までは「人生を懸けてオリンピックに出るんだ」という強い気持ちはまだなかったですね。大学2年生の時に2008年北京オリンピックに出て、北島康介さんのレースを見たときから、自分も心からオリンピックで金メダル取りたいという目標を語れるようになったのだと思います。

初出場だった北京オリンピックでは女子200m平泳ぎで7位入賞を果たしますが、その4年後のロンドンオリンピックは出場権を逃します。しかし、次のリオデジャネイロオリンピックでは金メダル。当時を振り返っていかがでしょうか。

振り返ると、(ロンドン五輪の出場権を逃してから、リオデジャネイロ五輪までの期間は)私の中では凄く辛い時期ではあったのですが、あのような時期を過ごしたからこそ私はメダルまでたどり着くことができたのだと思います。それに、上手くいくことばかりだと、子どもたちに何か伝えたくても、才能だからとか、金藤理絵だからだ、で片付けられてしまいます。苦しかったことは今の自分の武器になったと思います。

リオデジャネイロオリンピックは、実は予選と準決勝はあまり良いイメージで泳ぐことができなかったんです。決勝もベストの状態ではなく、アップをしていても何かうまくいかないといった状態でした。

ただ、それまでの世界大会ではそこでさらに粗探しをしてダメになっていったのですが、リオの時は「ここまできたら細かいことを考えても仕方がないな」と思って、「泳ぐしかない」と気持ちを切り替えることができました。そこが、それまでの世界大会と違ったところでした。

リオオリンピックの決勝のレース前の心境は、不安はあるけど、どうやって不安を解決していくかというよりも、不安も一緒に抱えて泳ごうという感じでした。

表彰台では、2位と3位の選手の国の観客以外はみんな1位である私を見ているのが分かって、すごく注目されているという恥ずかしさがありました。「君が代」が流れた時は泣かなかったのですが、表彰式の後にプールサイドを歩いていると日本チームのみんなが「おめでとう」と言ってくれているのを見て、涙が溢れてきましたね。

ここからは食生活についてお尋ねします。子供の頃はどんな食生活でしたか?

高校までは自宅だったので、食事は母が作ってくれていましたが、好き嫌いが多い方だったので、母は苦労したと思います。

自然豊かな所で生まれ育ったので、フキノトウなどの山菜やつくしを採ってきて、それでお味噌汁や佃煮を作るような家庭だったのですが、私はほぼ食べず、親泣かせでしたね。実はキノコも椎茸だけは苦手でした。だから母はいつも頑張って刻んで料理に入れてくれていました。

子供の頃の食生活で良かったなと思うのは、小学校から帰ってきた時のおやつが、焼き芋だったり、煮干しだったりで、お菓子ではなかったことです。親からは好き嫌いをしないようにと言われるのはもちろんでしたが、よく噛むように言われていました。

スイミングクラブでの練習後はどのような食事でしたか。

帰宅後に母が夕食を作ってくれるため、練習が終わってから夕食まで時間が空きました。そのため、迎えに来てもらった車でおやつのような感覚でおにぎりを食べていました。情報として、運動をしたらすぐにエネルギーを摂った方が良いと聞いていたからです。帰宅後もしっかりと夕食をとっていました。

普段から母は時間をやりくりしながら食事をつくってくれていましたし、体育教師である父が栄養に関する情報を仕入れてきて母がそれを実践するという感じでした。高校生の頃は「ジュニアプロテイン」を飲むこともありましたが、やはり基本は食事から摂るという意識が強かったと思います。

大学生になって実家を離れた後の食事面は、どのようにしていたのでしょうか。

大学に入る時に東海大学を選んだ理由のひとつが、学食でアスリート用の食事を出していただけることでした。一人暮らしだと食事の面で偏りが出てしまったり、外食が多くなったりしてしまうというデメリットがあるので、競技に集中しやすい環境だったと思います。

食事の大切さを子どもの頃から感じられていた金藤さんですが、きのこを食べる機会は多いですか。

引退して子供ができた後のことなのですが、3歳になった私の子どもがきのこ大好きなので、お味噌汁の具にしたり野菜炒めに入れたりして、現役の時よりもいっそう食べる量が増えているんです。

きのこはすごく栄養がありますし、食物繊維が豊富。冷凍すると保存がきくのも嬉しいですね。食べると体に良いということは、現役時代よりむしろ今の方が知識として持っているかなと思っています。

きのこを使った料理はどのようなものをつくりますか。

3歳の娘が特にマイタケが好きなので、どんな調理方法が良いか、私もいろいろ調べています。マイタケ以外にもシメジやエノキも好きで、料理方法としてはお味噌汁に入れるのが一番多いです。栄養バランスも良いですし、切って煮るだけでいいので、手軽さもあります。ゆでると栄養が出てしまいますが、お味噌汁ならその心配もありません。

きのこが腸内環境の改善に良いことはご存知でしたか。

はい。大学進学以降、毎年1回栄養士の講習を受けていたので知っていました。その知識があったので現役時代も便秘をすることがなかったですね。

引退後はジュニアの指導をしているということですが、日頃から大切にしていることはありますか。

子どもたちには「ただ泳ぐだけでなく考えながら泳ごうね」と伝えるようにしています。それは、毎日私がアドバイスできればいいのですが、それができないからです。特に低学年の子どもたちには、説明をした後に、「これから何を考えながら泳ぐんだっけ?」、泳ぎ終わった後に「今何を考えながら泳いだ?」などを聞くように意識しています。このようにすることで、少しでも記憶に残り、普段泳ぐ時に思い出してもらえたらいいなと思っています。
また、タイムが出ない、練習がきつい、うまくいかないという理由で水泳を辞めてしまうのではなく、辞める時は納得して前向きな気持ちで次の目標に向かって頑張って欲しいという気持ちがあります。なので、困難に直面した時に、あともう少し頑張ってみようと思ってもらえるようなアドバイスなどをしていきたいと思いながら子ども達と接しています。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

最後に、スポーツを頑張る子ども達への食事面でのアドバイスをお願いします。

子ジュニアの選手の子たちには、まずは食事からきちんと栄養をとろうね、ということを一番に言いたいですね。私の子ども時代に比べると情報は多いですし、すごく真剣に取り組んでいる親御さんが多いと思うのですが、情報があるからこそ、サプリメントについて聞かれることが多いのです。

でも、中学生くらいまでは食事メインが一番いいのかな、と思います。食事から栄養をしっかりと摂取する生活をすることで、海外に行ったときでも何でも食べられるとか、大きな大会の時でも何でも食べられるようになると思います。そういう理由もあって、小さい子どもには「嫌いでもいいから一口食べようね」ということを伝えています。

金藤さんの Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
「一歩」
2011年に大学を卒業して社会人1年目になった時、社会人として責任を持って進んでいきたいという気持ちを込めて「一歩」というテーマを掲げました。結果として、ロンドンオリンピックには出場することさえできず辛い時期が続きましたが、どんなに上手くいかなくても、足を上げ続ければ大切な何かを手に入れることができるのだということに気づきました。今も色紙に一言書くときは「一歩」と記しています。

■競技人生の中で最も忘れられないシーンは?
2016年4月の日本選手権になります。リオデジャネイロオリンピックの選考会だったこの大会は、日本人選手で初めて2分20秒を切った節目の試合でもありますが、それ以上に、自分の心の持ち方が今までの試合と全然違っていたというのが大きかったです。
一時期はもう応援しないでほしいという、ひどいことまで思ったこともあったのですが、応援しにきてくれた多くの人の姿を見て、入場の時は泣きそうになりました。

■気持ちの切り替え方は?
試合の時は音楽を聴きながら入場してくる選手も多いと思うのですが、私はどちらかというと自分の殻にこもるというよりも、会場の雰囲気を感じたり、会場の音楽を聴いていたり、スタッフの方とお話ししたりすることで気持ちをレースに切り替えていました。

■これからの目標は?
自分が経験してきたことを伝えることで、何か困っている人の手助けになれたら良いなという気持ちで、講演や水泳指導などをやっています。特に子どもたちには、速くなる方法を教えるのではなく、教えるやり方はあくまで手段のひとつであって、大切なのは自分で考えて泳ぐことなんだよと伝えています。

■金藤さんにとって、水泳とは?
小中学生の時は、水泳は私にとって友達に会う場でした。大人になってからは、水泳とは私の生きがいを作ってくれる存在になっています。もちろん、速く泳ぐ方法は学んできましたが、それ以外の人と人とのつながりをもたらしてくれるのが水泳です。

金藤さんの今食べたい菌勝メシ

コメント

現役時代は食事の栄養バランスを意識し、できるだけ品目を多くとるようにしていました。きのこは栄養があり今も良く食べる食材。きのこと牛肉の組み合わせはバランスも良く、アスリートの身体づくりにも良いですね。

きのことピーマンのピリ辛チンジャオロース

きのこには、健康の要である腸内環境を整えることで免疫力を高める食物繊維が豊富。また、ピーマンに含まれるビタミンCや、牛肉に豊富な鉄分・アミノ酸も摂れるので、元気に動ける身体づくりにピッタリです。

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profile

金藤 理絵

(かねとう りえ)

1988年9月8日 156センチ 48キロ 広島県庄原市出身
小学校3年から本格的に水泳を始め、広島県立三次高校時代はインターハイを制するなど活躍した。2007年に東海大学に進学し、2011年卒業。社会人として水泳を続ける傍ら、東海大学大学院に進み、2013年に修士課程を修了した。
中学校教諭・専修免許状(保健体育)・高等学校教諭・専修免許状(保健体育)を持つ。
大学2年生だった2008年に北京オリンピックに出場し、女子200m平泳ぎで7位入賞。2016年リオデジャネイロオリンピックでは同種目で金メダルを獲得した。
2018年3月に現役を引退。現在はイベントゲスト・トークショー・講演活動・水泳指導を行っている。

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