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きのこふしぎ発見

今も昔も、世界中で愛される「きのこ」!古今東西のきのこ食文化事情をご紹介

2022.11.01
今も昔も、世界中で愛される「きのこ」!古今東西のきのこ食文化事情をご紹介

秋は野生の多くのきのこが旬を迎える季節です。人工栽培のおかげで、シイタケやシメジ、マイタケ、ナメコなどは一年中スーパーマーケットで手に入れることができますが、いずれも本来の旬は秋。そしてもちろん、この時期にしか収穫できないマツタケも秋のきのこです。

この記事では、そんな秋ならではの、古今東西のきのこの食文化をご紹介します。

数千年以上前から人はきのこを食べていた

世界の多くの人々に愛されているきのこ。きのこは、いつ頃から人々の食卓に上がるようになったのでしょうか。
もっとも古い痕跡のひとつは、南米のチリにあります。いまから約1万3000年前のチリの遺跡からは食用きのこが発見されており、当時きのこが食べられていた可能性があります。また、約4600年前の古代エジプトでは、きのこは「不死の植物」であると考えられていました。そのため、エジプトのファラオはマッシュルームを独占して食べていたといわれています。さらに古代ギリシャや古代ローマでもきのこは重宝されており、アジアでは、中国で古くからきのこが食用や薬として利用されてきました。

きのこ愛を歌に詠んだ日本人

では日本では、いつ頃からきのこが食べられているのでしょうか。
1983年に青森県八戸市で発見された約4000年前の縄文時代後期の遺跡から、きのこの形の土器がたくさん出土しました。この発見により、少なくとも約4000年前には、日本人はきのこを食用にしていたと考えられています。

マツタケ

時代は下り、平安時代になると、書物の中にきのこについての記載が見られるようになります。平安時代の辞書である「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」にはきのこの記載があります。また、万葉集の巻10には「高松のこの峰も狭(せ)に笠立ててみち盛りたる秋の香のよさ」という歌が収録されています。詠み人知らずのこの歌は、マツタケの香りのよさを歌ったもの。平安時代の日本人も現代人の私たちと同様、マツタケの香りを愛していたことがうかがい知れます。

万葉集だけではなく、「今昔物語」や「宇治拾遺物語」、「徒然草」など多くの文献にきのこの話が登場するのも、きのこが好きな民族と言われる日本ならではかもしれません。江戸時代に出版された「料理物語」という料理書には、食材としてのきのこの項が設けられ、それぞれのきのこに適した調理法が書かれています。

「料理物語」第6の項に『きのこの部』とあるのがわかります。(引用元https://www.library.tohoku.ac.jp/collection/exhibit/sp/2005/e-tenji/list1/001.html)

また、平安時代の貴族たちは、行楽として秋の山でマツタケ狩りをしました。桃山時代になると、武士もマツタケ狩りを楽しむようになります。かの豊臣秀吉もマツタケには目がなかったようです。そして戦国時代が終わり、江戸時代になって世に平和が訪れると、マツタケ狩りは町人など一般庶民にとってのレジャーになりました。

ヨーロッパで盛んなキノコ狩り

きのこ好きな民族である日本では、もちろん現在もきのこ狩りは人気ですが、ヨーロッパでも今なおきのこ狩りが盛んです。ポピュラーなのはポルチーニ茸(フランスではセップ茸と呼ばれる)やアンズタケで、イタリアやフランス、ドイツ、フィンランドなどでは、多くの人々が近所の森や山へ出かけてきのこ狩りを楽しみます。とくにチェコでは、きのこ狩りは「国民のスポーツ」と言われるほど。またイタリアでは、地域によって、採集したきのこを保健所へもっていくと、食べられるものと食べられないものを選別してくれるサービスも行われています。

ポルチーニ茸(セップ茸)

きのこに目覚めたアメリカ

一方アメリカでは、1800年代にきのこを使ったフランス料理が紹介されるまで、日常的にきのこを食べる習慣はありませんでした。
しかし最近は健康志向の高まりとともに、きのこの抗酸化作用や免疫力を向上させる作用が注目され、さまざまなきのこの加工品が作られています。

なかでもブームになっているのが、マッシュルームコーヒー。コーヒーに、霊芝やヤマブシダケ、冬虫夏草など薬用として使われるきのこのエキス粉末を混ぜたもので、免疫力を高めたり、ストレスを和らげたりする効果が期待されています。そのほかにも、シイタケをビーフやポークのような食感に加工したシイタケジャーキーや、きのこが配合されたエナジードリンクなど、きのこの新しい加工食品が次々と誕生しています。

Four Sigmatic社のマッシュルームコーヒー(引用元:https://us.foursigmatic.com/m/why-am-i-so-tired1)

今後のきのこ市場

アメリカでの例のように、いま、人々の健康に対する意識は高まりつつあります。栄養価の高さはもちろんのこと、優れた健康機能性を持つきのこは、世界の多くの地域で今後市場が成長していくと予想されています。

アメリカの調査会社は、世界のきのこ市場が2020年から2027年の予測期間中に、年平均成長率8.3%で成長するだろうとレポートしています。きのこ市場の成長の主要な要因になると考えられているのは、きのこの加工食品やきのこを使った代替肉の需要増加です。(きのこのを使った代替肉について 詳しくはこちら>)また、とくにインドや中国などの新興経済国では、人口増加と健康意識の高まりにより急速にきのこの需要が増加すると予想されています。

きのこは数千年以上にわたって私たちの食文化を豊かにしてきました。そんな愛すべき美味しいきのこは、これからも人類の健康にとってなくてはならないものとして存在し続けることでしょう。

参考文献

  1. 日本人ときのこ、日本調理科学会誌、Vol.34 No.3(2001)
  2. https://nittokusin.jp/kinoko/contents/culture/culture.html
  3. https://rrcultivation.com/blogs/mn/exploring-the-role-of-mushrooms-throughout-history
  4. https://shokulab.unitecfoods.co.jp/article/detail125/
生命力を食べる。 人と菌の物語

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