人と菌の物語

歴史が育んだ、きのこの効果と人体の秘密
第11回 万病に繋がる「内臓脂肪」を撃退! ダイエット成功のカギを握る「腸」

2021.02.01
歴史が育んだ、きのこの効果と人体の秘密<br>第11回 万病に繋がる「内臓脂肪」を撃退! ダイエット成功のカギを握る「腸」

美味しくヘルシーなきのこ。しかし、「菌類」であるきのこは、私たちを食卓で楽しませてくれるだけでなく、人類が誕生する遥か昔から地球に存在し、生態系の循環や生物の進化を助け、豊かな地球環境を創り上げてきた存在でもあります。

また、人の体の中で最も菌が存在する場所は「腸」。古来の動物は「腸」しか持っていなかったともいわれるほど、腸は脳や全身と密接に繋がっており、人体の健康を司っています。その「腸」を守っているのが、きのこ等の菌類や腸にいる腸内細菌です。

このコラムでは、地球の生命誕生に深く関わり、古代より地球環境を整えてきた微生物の物語や人体ときのこの関係をわかりやすく紹介していきます。

人と菌の物語 過去の記事はこちら

今月のテーマはダイエット。

動物性脂肪を多く含む欧米型の食事が定着した現代日本の食生活では、肥満の増加や腸内フローラの悪化が深刻な問題となっています。その改善へとつながるダイエットの要になっていたのも実は「腸」でした。

ヒトの健康を害する原因は「内臓脂肪」

30代半ばから40代に入り、中高年期がはじまるとヒトは健康に不安を抱え始めます。とりわけダイエットに関しては、色々試してもなかなか痩せず、健康診断でも改善の兆しがみえない……。そういった悪化の元凶は、「内臓脂肪」にあります。

体に蓄積する脂肪は、大きく分けて皮下脂肪と内臓脂肪の二つ。
皮下脂肪は、皮膚のすぐ下につく脂肪のこと、特に女性の二の腕や腰、太股などにつき、過剰にたまると下半身が太り洋梨のような体型になってきます。
一方、内臓脂肪は男性に多い脂肪で、お腹の周りにつきやすいのが特徴。大腸や小腸を広範囲に支えている「腸間膜」という部分に脂肪がつき、各臓器の隙間を埋めるように脂肪が増え、お腹がぽっこりと前にせり出し、丸いリンゴのような体型になることもあります。

その内臓脂肪が増える大きな原因は、糖質の摂りすぎです。
ヒトは30~40代頃から徐々に、生きるための体内のエネルギー生産システムが変わり、糖質が必要不可欠でなくなります。境となっているのが50代頃といわれていますが、それまでと同じ量の糖質をとり続けると、エネルギーとして使い切れなかった分の糖質は中性脂肪に変えられ、体内に内臓脂肪として蓄積されてしまいます。

脂肪細胞自体は、いざという時のエネルギー源として必要なもの。そして、脂肪細胞からは体に必要な働きをする「善玉物質」と、そうでない「悪玉物質」が分泌されます。比較的健康への影響が少ない皮下脂肪に対し、内臓脂肪はこの「悪玉物質」を分泌する “危険な脂肪”。高血圧や糖尿病、動脈硬化、がんや認知症、肝臓病といった様々な病気のリスクが高まるといわれています。

まさに内臓脂肪は「万病のもと」なのです。

デブ菌の好物を減らし、ヤセ菌を増やすには――。

ダイエットの天敵である内臓脂肪を効率良く落とすには、体を痩せやすい状態にして、体内の脂肪が減っていく流れをつくることが大事です。

そのために重要なカギをにぎっているのが「腸」。
私たちの腸内に棲んでいる100兆個以上の腸内細菌のタイプによって、「太りやすい」か「痩せやすいか」が決まってきます。

第8回で紹介したように、私たちの腸内にすむ腸内細菌の70%を占める日和見菌の中には、肥満を引き起こす「デブ菌」と、そのライバルであり、糖や脂肪の吸収率を下げる「ヤセ菌」がいます。このデブ菌を減らし、ヤセ菌を増やすことで体が痩せやすい状態にシフトするのです。

デブ菌の好物は、白米やパン、麺類など精白された炭水化物をはじめ、ケーキやアイスなどの甘いものや揚げ物など。日頃から糖質や脂質の多い高カロリーの食事ばかりだと、デブ菌が増殖しますが、たとえば白米を五穀米や玄米に変えるだけでもその勢力を縮小させることが期待できます。

さらに、きのこや野菜、海藻、納豆などの食物繊維が豊富な食材を摂ることでヤセ菌が増えます。食物繊維は腸内に長く留まって、余分な糖や脂肪を吸着しながら発酵します。その発酵した繊維が善玉菌やヤセ菌のエサとなります。

短鎖脂肪酸が脂肪を燃焼させるカラクリ

ヤセ菌が食物繊維を食べて消化すると、短鎖脂肪酸をつくり出します。第9回でも紹介した短鎖脂肪酸は、腸内細菌だけがつくることができるオールマイティな健康体促進物質で、内臓脂肪を減らす重要な役割も担っています。

腸で産生された短鎖脂肪酸は、腸の粘膜から血液中に入り、様々な場所で内臓脂肪が増えるのを阻止します。例えば、短鎖脂肪酸が脂肪細胞に行き着くと脂肪細胞にある受容体が短鎖脂肪酸をキャッチし、それを合図に脂肪の取り込みが抑えられます。

短鎖脂肪酸をキャッチする受容体は自律神経にも存在し、血流に乗って短鎖脂肪酸が到来すると自律神経が興奮。より脂肪を燃やしてエネルギーを消費するように号令がかかり、代謝活動を高めて脂肪燃焼を促進させるように働きます。

つまり、普段から食物繊維が豊富な食事を摂ってヤセ菌を増やすことで、腸内でつくられる短鎖脂肪酸の量が増し、内臓脂肪が落ちやすい体内環境をつくることができるのです。

食物繊維が豊富なきのこのパワーで内臓脂肪を落とす!

食物繊維が豊富な食材の代表格は、何といってもきのこです。
エリンギには100g中4.3グラム、シメジには3.7g、シイタケには3.5g、マイタケには2.7gの食物繊維が含まれます。さらにきのこは、血糖値の急激な上昇を抑えたり、腸内細菌のごちそうとなる水溶性食物繊維と腸の蠕動運動を刺激し、便通を促進させる不溶性食物繊維といった2種類の食物繊維をバランス良く含んでいます。

四季を通じて手に入りやすく家計にもやさしいきのこは、和洋中どんな料理にも合うだけでなく、調理も簡単。耐熱容器に入れて塩をかけて電子レンジで加熱し、粗熱がなくなった後に密閉容器に入れて冷蔵保存する冷蔵きのこも常備菜として活躍します。

また、ダイエットの大敵である老廃物の排出におすすめなのが、冷蔵きのこにヨーグルトをかけるだけの「きのこヨーグルト」。きのこに豊富な食物繊維と善玉菌のエサになったり善玉菌の生きやすい環境を作ると言われているヨーグルトの乳酸菌を一緒に摂ることで腸内環境がよりいっそう改善し、蠕動運動が促進されてお通じを良くします。

さらに、毎日の食事にきのこを取り入れる生活習慣を実践することで、乳酸菌やビフィズス菌といった腸内の善玉菌が増加し、内臓脂肪の蓄積が抑制されたという実験結果もあります。

古くより日本の食卓に寄り添ってきたきのこは、現代社会においては特に、食生活を整えて健康な身体をつくるのに一役買う存在。まさにダイエットの強い味方だったのです。

監修:藤田 紘一郎
東京医科歯科大学医学部卒、東京大学医学系大学院修了。医学博士。東京医科歯科大学名誉教授。NPO自然免疫健康研究会理事長。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『原始人健康学』『水の健康学』『パラサイト式血液型診断』(新潮社)、『笑うカイチュウ』(講談社文庫)、『免疫力を高める快腸生活』(中経の文庫)、『アレルギーの9割は腸で治る!』(だいわ文庫)など著書多数。

出典

  • ・藤田紘一郎,図解 腸の名医が実践している 内臓脂肪をごっそり落とす最強の食べ方,永岡書店,2020年
  • ・藤田紘一郎,ヤセたければ、腸内「デブ菌」を減らしなさい! 2週間で腸が変わる最強ダイエットフード,ワニブックス,2017年
  • ・『きのこで菌活』 による腸内フローラの改善および肥満抑制効果,日本農芸化学会2018年度大会,2018
生命力を食べる。 きのこふしぎ発見

きのこらぼに無料会員登録をしていただき、ログインした状態で記事をご覧いただくとポイントがもらえます。
貯まったポイントは、プレゼント応募にご利用いただけます。