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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第22回 バスケットボール・折茂 武彦さんインタビュー

2022.09.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第22回 バスケットボール・折茂 武彦さんインタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、日本バスケットボール界のレジェンドであり、現在はBリーグ レバンガ北海道の代表取締役社長でもある、折茂武彦さん。
現役生活を長く継続できた理由には、40歳を越えた頃から気づき始めた食への意識変化があったといいます。ご自身のバスケットボールを始めてからのストーリーと合わせて伺いました。

お兄様の影響でバスケットボールをはじめた折茂さん。大学時代にはインカレで優勝して、当時は強豪ではなかったトヨタ自動車に入団します。きっかけは何だったのでしょうか。

当時のトヨタ自動車は、1部と2部を行き来するような感じの決して強いチームではありませんでした。インカレで優勝して、M V Pを獲得して、両親を含めて色々な人に「なぜ、トヨタなの?」と言われたくらいです。

自分のビジョンの中でやはり日本代表に選ばれたいという気持ちが芽生えてきました。有難い事に強豪も含めて色々なチームからお誘い頂きました。でも、強いチームに行ったら試合に出られないだろうとイメージがあったんです。試合に出られなかったら、結果も残せないと同時に、日本代表には多分選ばれない。そうであれば、試合に出られる事が先決でした。みんなが思い通りのプレーができて、同時に自分自身の結果も残せるかに焦点を当てた時に、敢えてトヨタ自動車に行くのがゴールに近づけると感じたんですよね。

トヨタ自動車で「チームを優勝させる」と宣言し、9年かけて有言実行へとチームを引っ張っていった折茂さん。自身も何度も代表入りをする中で、36歳の時には北海道という新たな地での挑戦がはじまります。その時を振り返ってどうですか?

これまでも人生の中で色々な失敗があって苦しい時もありましたけど、自分の中では上向き調子でしたが、それが一気に降下する感じでした。その落差に驚いたというか、結構衝撃的でしたね。

トヨタにいた時代は環境も含めてバスケットボールに集中できるパーフェクトなチームだった中で、何もないところに来て、全く違う事も経験しました。街頭でのビラ配り、イベント出演、テレビやラジオへのメディア露出など、当初は何の意味があるのかなと思いました。

しかし、そういう中で生活していると、コンビニに行っても、街を歩いていても、さまざまな場面で色々な人に声を掛けられる。北海道に来るまでは全くそんな事はなかった。

「プロ選手の価値はプレーをするだけではダメなんだ。やはり知ってもらって価値がある」と、その時に気づいたんです。自分たちに価値を感じてくれるからチケットを買ってアリーナで応援してくれるし、色々な事が生まれる。辛い事もありましたけど、良い経験になりました。

プレーヤーとしてというよりも、北海道に来て本当に人間的に成長できたと感謝しています。勝つためだけにプレーしていた過去から、誰かの為にプレーする、応援してくれている人達のために頑張らないといけないと考え方が変わりました。

北海道での現役時代にはB1リーグで戦えるチームへと先陣を切って盛り上げていった折茂さんですが、長い現役生活を経て、食事面も含めた栄養管理に関して、ご自身で意識されてきた事はありましたか。

若い時は基本的に栄養士などサポートしてくれる方々がチームにおらず、栄養管理などは各自に任されていた感じでした。私の場合は太りやすい体質では無かったので、何かを制限せずに好きなものを食べていました。

実は子どもの頃からお菓子は食べない、そして基本的に炭酸飲料も飲まないというのが習慣で。当時は「うちはお菓子が置いていないから貧乏なのかな」と感じていましたが、大人になって親に聞いたら「家に帰った時に食事の前にお菓子などで間食してしまうと、食事をしっかり摂らないでしょう」という返答が返ってきたんです。

だから、子どもの頃はとにかくご飯を凄く食べました。おかずよりも基本的にご飯を食べる感じでしたね。

40歳ぐらいまでは、それまで通りに食べて、動いてという感じだったのでしょうか。

そうですね。40歳まではシーズン中に(動けば動くほど)どんどん体重が落ちてしまう感じでした。

しかし、40歳を過ぎたあたりから体重のコントロールが難しくなってきました。どんなに練習しても体重が落ちなくなる。だから、なるべく油物を避けるとか、体重をキープするために食事制限をするとかして、コンディショニングを整えていきました。

私は、Bリーグがスタートして引退するまでチームの中で1回も練習や試合を休んだ事がないんです。この年齢ですが、あまり風邪をひいたりする事もなくて、やはり食事管理は凄く大事だと実感しました。栄養ってスポーツ選手には非常に大切な部分だという事を、40歳過ぎてから、だんだん理解できるようになりましたね。

年齢を重ねて食事の好みで変わった部分はありましたか。

基本的には変わらないですね。基本的に炭水化物は好きですが、炭水化物って摂りすぎると太るじゃないですか。その部分をコントロールするのは結構難しくて、先程話した通り、量のコントロールをするようにしました。あとは外食ではなく、自炊をする事が多くなりました。

40歳手前までは基本的に肉料理が主流で「スポーツ選手=焼肉」という感覚でいましたが、肉ばかりというよりは魚を焼いたり、野菜やきのこ類、他には豆腐や納豆も食べるようになりました。少しずつヘルシー志向に変化していったと思います。

ヘルシーな食材の一つに「きのこ」があると思いますが、きのこに対する印象や、好きなきのこ料理があれば教えてください。

きのこに関して、肉料理はもちろん、合わない料理は無いと思いますし、食事の中で当たり前のようにきのこを食べている感じです。

私は基本的にホイル焼きにきのこを入れて食べる事が多いですね。調理方法が簡単ですからね。鱈などの魚と一緒に好きな「しめじ」を含めて、色々なきのこを入れて、トースターにホイルを敷いて焼くだけ。味付けは黒胡椒とバター、そして焼き上がりにレモンを掛けるシンプルな感じです。

あとは鍋をするのも好きなので、そこに色々なきのこを入れます。私自身、ポン酢が好きでして、きのこはポン酢と一番相性がいいと思っています。

では、今、バスケットボールを頑張っているアスリートや子どもたちに、プロになるためのメッセージやアドバイスをお願いします。

私から言えるのは、自分に才能がないから、何か特別なものがないから無理だという事を最初から思わないでほしいです。何かを成し遂げる人の全てに、特別な才能がある訳ではないと思っています。私自身も足が特別速い訳でも、凄く高く飛べる訳でもありません。努力をし続けて、色々な事を考えて、ここまでやって来られました。

これから色々な失敗や挫折、そしてスポーツであれば敗北もあると思います。そこはスポーツ以外でも共通で、絶対に乗り越えていかなといけない壁ですし、しっかりと向き合わないといけません。

チャレンジすれば必ず失敗します、でもチャレンジしなければ成功も絶対にありません。成功する為に失敗をたくさんしてもらいたいですし、悪い事ではないので、怖がらないで欲しいです。必ず自分が本気で、覚悟を持って、情熱を持って取り組めば、必ず夢に近づけると思っています。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

では最後に、ジュニアアスリートたちへ食事のアドバイスをお願いします。

やはり体が健康で無かったら結果が出せません。また、体のマネジメントをいかにできるかどうかで変わってきますし、生きていく上でも最も重要な鍵になります。
何でもバランスが重要で、食生活という習慣でもバランスの良い食事を行う事を心掛けてもらいたいですね。また習慣という意味では朝ごはんをしっかり食べるなど、食べる時間もすごく大切になってくると感じています。夜更かしして規則正しい生活を送れず、朝ごはんが食べられない。これだと元気も出てきません。
また、最近の子どもたちは食が細くなってきている中で、成長過程にある中ですからしっかりとたくさんご飯を食べてほしいです。「食事のバランス、時間、量」という習慣を子ども自身ではコントロールするのは難しいですから、しっかりと保護者の方がコントロールして頂きたいと思っています。

折茂武彦さんの Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
「やらないよりは、できない方がいい」です。やってみて出来なかったら、しょうがない部分はありますが、やらないのに出来ないというのは好きでは無いんです。バスケットボールを始めた時も、経営者では無い自分がレバンガ北海道をスタートさせた時も、出来なければ、やれる方法を考えればいい。出来なかった時に、考えればいい。まずは挑戦していく事が大切だと考えています。

■競技人生で忘れられないシーン、シュートは何?
27年間の現役生活の中で通算10,000得点以上も獲得したので、どの場面かというのは無いんですが、大体痺れた場面は記憶にあります。その中でも挙げるとすれば、引退する前に通算10,000得点を獲得した瞬間のシュートやトヨタ自動車時代に初優勝した時に決めたフリースローですとか、凄く心に残っていますね。

■リラックス方法、クリアマインドする方法は?
基本的に釣りですね。実は船舶の免許を持っていて、東京に居た時には所有しているボートで釣りに行っていました。だけど、海釣りは酔うので好きじゃ無いんです(笑)北海道に来てからはイトウ釣りにハマっていて、時間があれば年に数回、朱鞠内湖に行っています。本当に誰もいない静かな場所で、釣りをしながら全てを忘れられますし、色々と考えられる時間を過ごせるのでいいですね。

■これからの目標は?
一人のバスケットボール に関わる人間として、もっと競技が盛んになって、注目されるように一生懸命色々とやっていきたいです。まだまだ野球やサッカーと比べて日本国内ではメジャースポーツでは無い中で、最終的な目標は バスケットボール が日本社会の中で溢れるものにしていきたい。この北海道の中でもっと公園とかにリングを増やしていきたいですね。 自分がこれから歳を重ねていった時に公園で散歩して いる時に子どもたちがバスケットボール を一生懸命やっている姿が見られたら最高ですし、その文化が全国各地に広がるといいなと思っています。

■折茂さんにとってバスケットボールとは?
何か特別な存在とは、正直思っていないんです。もちろん自分自身に取っては、凄く情熱を注ぐ事ができたものです。いつも自分の近くにある存在であり、ごく自然に自分の中に存在していて、当たり前なものみたいなイメージですかね。

折茂さんが今食べたい菌勝メシ

コメント

現役時代はとにかくしっかり食べることを意識していました。きのこは栄養があり、どんな料理にもあうので大好きです。具沢山の丼なら栄養バランスが良いですし、甘辛い味付けでガッツリ食べられるところも良いですね。

きのこと牛肉の甘辛炒め丼

きのこには糖質の代謝を促すことでエネルギーづくりを助けるビタミンB1や赤血球の形成を助ける葉酸が豊富。また、合わせるパプリカには抗酸化作用を持つビタミンCが、牛肉には筋肉づくりに欠かせないタンパク質が豊富なため、アスリートの身体を応援する一品です。

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profile

折茂 武彦

(おりも たけひこ)

レバンガ北海道 代表取締役社長

1970年、埼玉県生まれ

中学校時代に競技生活をスタートさせると、埼玉栄高校から日本大学に進学。大学4年生時にはインカレ優勝を果たし、卒業後の1993年、トヨタ自動車(現 アルバルク東京)に入社。同年、日本代表に初選出されると2度の世界選手権も含め、数多くの国際大会に出場。国内ではトヨタ自動車時代にリーグ、天皇杯を合わせて4度の日本一を経験した。2007年に北海道に移籍。その後、経営難によりチームが消滅すると、2011年にレバンガ北海道を創設し、選手兼クラブ代表を務める。 その後、日本出身選手初 の国内トップリーグ通算10,000得点という偉大な記録を2019年に達成した。翌年開催のBリーグオールスターに出場してMVPを獲得、これはギネス世界記録として認定されている。代名詞でもある正確無比な3ポイントシュートを中心に生粋のスコアラーとして最後まで活躍し、惜しまれつつも、2020年に27年間の現役生活を終えた。現在はクラブを日本一にすべく、代表として日々奔走している。

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