プロアスリートを支える食事に迫る。第40回 サッカー・清水 梨紗選手インタビュー
2024.03.01アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場いただくのは、サッカー女子日本代表の一員としてパリ五輪を目指す清水梨紗選手です。2022年の夏からイングランドのウェストハムでプレーする“なでしこジャパン”不動の右サイドバックの清水選手に、海外生活やプロ選手としての矜持、活躍を支える食生活の秘訣などをお聞きしました。
まず、サッカーを始めたきっかけを教えてください。
姉がやっていた影響です。最初は当時としては少し珍しい、関西の女子クラブからスタートしました。姉に付いて行って、一緒にプレーして、どんどんハマっていきました。その後、親の転勤で関東に引っ越しました。それまでもいろんな習い事をやっていましたが、東京でも唯一続けたいと思ったのがサッカーでした。
12歳のころにベレーザ下部組織のメニーナに入団されました。同期には長谷川唯選手、籾木結花選手、土光真代選手らがいましたね。当時のチームの印象を教えてください。
めちゃくちゃ強かったですね。みんな上手くて毎日が戦いでした。切磋琢磨し合った仲間です。同い年の選手とはすぐに溶け込めました。同時に、チームの最年長は高校3年の世代もいて、挨拶や礼儀など、人としても育ててもらいました。
その後、U-14、U-15と世代別の代表チームに選ばれ、U-17女子ワールドカップという国際舞台でも活躍。そして、2013年にはトップチームのベレーザへ昇格され、2015年からリーグ5連覇だけでなく18年には国内三冠、19年にはAFCクラブ選手権も優勝されタイトル四冠を達成しましたね。
タイトルを獲得できるようになって、自信も深まってきました。特に、2018年からの永田雅人監督時代には、戦術やサッカーのスタイルなど、とても刺激を受けました。考えてプレーするようになり、サッカーの見え方も大きく変わりました。
21年には東京五輪に出場。準々決勝でスウェーデンに1-3で敗れる結果となりましたが、初出場となった東京五輪を振り返っていかがでしょうか?
世代別代表を含めれば、いろんな大舞台を経験させてもらいました。でも、自分は良い結果で終われず、毎回悔しい思いをしています。東京五輪の時もそうでしたが、大会ごとにステップアップしていきたいですね。
2022年夏にベレーザからウェストハムに移籍されました。海外挑戦を決めた理由をお聞かせください。
年齢的には遅かったと思います。それまでは海外移籍を考えたことはなかったのですが、東京五輪で海外との差を痛感し、どう対抗していくか考えたときに、ひとつのアイデアとしてありました。ベレーザ時代に積み上げたプレーを海外の選手相手にどう応用させていくのか、そんな楽しみもありました。いろいろと情報を得たなかで、イングランドが一番じゃないかなと、今の場所を選びました。
海外挑戦のメリットはどのようなところでしょうか?
移籍のきっかけとなったひとつに、(マンチェスター)シティに所属しているローレン・ヘンプ選手との対戦経験がありました。速くて、切り返しも鋭くて、シュートも打てて、クロスも上手。身体が当たってもビクともしなかった。そういう選手がイングランドにはたくさんいます。そんな選手たちと対戦する回数が増えて、当初よりは慣れてきた感覚があります。普段から自分の予想を上回る体験ができるのがメリットのひとつだと思います。
それでは、海外に渡った現在の食生活について教えてください。
初めて自炊をして生活しています。食事制限はあまりしたことがなくて、ちゃんと3食ご飯を食べることを意識しています。もともと、たくさん食べられるほうではないので、トレーニング後の補食をして、足りない栄養やエネルギーを小まめに補給する工夫はしています。練習後のお昼はチームで出してもらっています。朝はオプションなのですが、自分はお米が食べたいので、朝夕は自炊です。
競技で活躍するために食事や栄養管理で工夫していること、意識していることはありますか?
普段の食事のルーティンとして、試合前はエネルギーになる炭水化物を沢山摂ることを心がけています。逆に試合後はなかなか食が進まないので、食べやすく疲労回復を重要視して食事するのを心がけています。代表ではシェフに帯同してもらえるようになったので、料理の作り方やコツ、栄養面でのアドバイスなどをもらっています。食事は良いプレーをする上で欠かせない要素。今は食に興味を持つ選手が増えてきているとも感じます。
栄養面も意識しているということですが、低カロリーで栄養も豊富な「きのこ」の印象を教えてください。食事に取り入れることはありますか?
私の家族は全員がきのこ好きなので、小さい頃から食卓にきのこ類が多く、馴染みのある食材ですね。中でもしめじの肉巻きが好きでよく母に作ってもらっていました。それもあって、今もきのこは好きで食べることは多いです。イギリスで暮らしていると限られたきのこの種類しかないですが、イギリスでもきのこはよく使うようにしています。お鍋に入れたり、ホイル焼きにしたりして食べるのが好きです。
きのこには腸内環境を改善する働きも報告されています。腸の状態、腸活について意識したことはありますか?
体が疲れてくると、お腹が張りやすくて、腸内環境が良いときはコンディションがいいと感じるので自分の調子を知る目安になっているのかなと思います。
特に、疲れを取りたい時は刺激を与えず、腸内環境を整えるようにしています。食物繊維などは不足しがちなので、海外生活では特に意識して摂っています。
清水選手は、高校、大学に通いながら選手生活を続けてきましたね。学業とスポーツを両立させるためのアドバイスがあれば教えてください。
学業もサッカーにつながっていると思っています。逆に、サッカーを一生懸命やれば、それが勉強にも生きるはず。両立するのは難しいですけど、努力を重ねることはどちらも同じだと思います。自分の人生を豊かにしていく部分にも繋がってきますよね。
では、ジュニアアスリートへアスリートとして上達するために必要なマインド、競技への向き合い方などのアドバイスがあればお願いします。
まずはプレーしているスポーツを楽しむことが大事です。いろんなことを考えて、いろんな話を聞いていると思いますが、頭でっかちになり過ぎず、思いっきり楽しむことも必要です。自分はジュニアの頃、食が細くて親の助けも借りてきました。自分に合った食事を見つけていくのも必要だと思います。
きのこらぼ限定公開 INTERVIEW
では最後に、スポーツを頑張るジュニアアスリートに向けて、食事面でのアドバイスをお願いします。
今は多くの情報に溢れています。プレーもそうですが、栄養の取り方、身体の作り方などは昔よりもいろんな情報があります。両親や指導者に頼るだけでなく、興味を持つことが凄く大事だと思います。
清水選手の Do my best,GO!
■好きな言葉、座右の銘は?
聞かれたら必ず応えているのが「努力の分だけ花が咲く」という言葉です。中学生の頃に流行ったポエム画像で見つけたのが最初だったと思います。最初に見た時からすんなり受け入れられて、そこから好きな言葉として選ばせてもらっています。
■これまでの競技人生の中で忘れられないシーン、大会は?
悔しい試合のほうが残っています。2015年の皇后杯準決勝(アルビレックス新潟レディース戦)ですね。スタメン出場していたのですが、前半のみで交代になりました。その後チームも敗れて(1-1で突入したPK戦2-3で敗戦)。東京オリンピックや、先の女子ワールドカップでも悔しい想いはしていますが、両大会ではピッチで戦えていた分、やり切った気持ちもありました。自分の課題も見つけられました。でも、皇后杯の時は、チームが敗れるのをベンチから見るしかできなかった。今までにない感情を味わいましたし、教訓として今も忘れずに心に残っている一戦です。
■リラックス方法、切り換え方法は?
サッカーをしている時と、していない時の切り替えはスムーズにできるほうです。オフの日は動画をみたり、映画をみたり、リラックスして次のトレーニングの時に気持ちを入れられるようにしています。最近はキャンドルにハマっていて、部屋を暗めにして、リフレッシュする時間も作っています。
■これからの目標は?
リーグでは勝星を積み上げて順位を上げる。個人では怪我無く試合に出続けることですね。
■清水選手にとってサッカーとは?
小さい頃からずっとやっていて、日常のひとつでしょうか。サッカーを通じていろんな方々に出会い、凄く恵まれていたと思います。そんな出会いが、サッカー以外でも自分の考えや生活を豊かにしてくれています。
清水選手が今食べたい菌勝メシ
コメント
試合前はエネルギーになる炭水化物を、試合後には疲労回復できる食事を選んでいます。きのこは小さい頃から好きでイギリスで暮らす今もよく使っています。たくさんのきのこと様々な食材が入ったスープご飯は食べやすくて疲労回復にもなり、身体も温まるので試合後にぴったりですね。
きのこの参鶏湯風スープごはん
きのこに豊富なビタミンB1は糖質の代謝に関わるので、糖質を含むごはんと合わせれば効率の良いエネルギー補給が叶います。またきのこにはGABAも豊富なので気持ちを整えたい時にもぴったりです。
profile
(しみず・りさ)
1996年6月15日生まれ、兵庫県出身。神戸コスモFC―FCすすき野レディースー日テレ・メニーナ(以降はキャリアレコード参照)。日本女子代表通算62試合・1得点。2009年にベレーザの下部組織メニーナに加入すると、FWから徐々に守備的なポジションへ転向。不動の右SBとして、各世代別代表にも選出。トップチーム昇格後も主力に定着し、リーグ5連覇をはじめ、数々のタイトルを獲得。20年からはキャプテンも務めた。昨年夏にイングランドのウェストハムへ移籍。3CBの右や、左右のウイングバックにも対応し、新チームでも不可欠な存在となっている。
協力:THE DIGEST
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