「できることが良いこと?」子どものありのままを見て、能力を発揮させるサポートをしよう!
2022.07.017月に入り、早くも一学期が終わろうとしています。テストや成績表が返却されるこの時期、保護者の皆さんの中には、結果を見て一喜一憂してしまう方も多いのではないでしょうか。結果を大切にするのは、責任感があり素晴らしいことだと思います。しかし、“できること”が良いことで、“できない”ことは悪いことなのでしょうか?今回は、できる・できないという結果ではなく、お子さんを自身に目を向けて、お子さんの力を発揮させるための接し方についてお話していきたいと思います。
■今月のTOPICS
・子どもの「ありのままの姿」を見る
・大切な子どものこと、だからこそ陥りやすい、子どもに対する過大評価・過小評価
・「できるようになる」過程を大事にする
・7月の食事 ワンポイントアドバイス~食欲不振を撃退して、夏の元気を応援~
子どもの「ありのままの姿」を見る
子育てをしていると、「失敗しないように」「転ばないように」と、お子さんが躓くことを心配してしまいますよね。躓かずにできるならば、それに越したことはありません。しかし、努力もせずに何でもできるようになるということはあり得ませんので、保護者の方が手を貸して躓くことを回避させてあげるのではなく、躓き、努力し、できるようになる・・・この当たり前の過程を、お子さん自身が行っていけるようにサポートすることが大切です。
子どもはそれぞれ違いますから、何もせずにできることが多い子どももいれば、一つ一つ確認し、学んで身に付けていく子どももいるでしょう。どちらも、理解できたことには変わりがありません。自分の子どもは能力のある人であってほしい、と誰しも心のどこかで思ってしまうものですが、大切なのは“子どもを実物大”で見て、その子の力が十分に発揮できるように導くことだと思います。
大切な子どものこと、だからこそ陥りやすい、子どもに対する過大評価・過小評価
子育てをしていると、子どもが大切だからこそ、自分の子どもを過小評価したり、あるいは過大評価したりしてしまいがちです。ありのままを見ることは大変難しいのですが、その子の力を十分に伸ばすには、必要なことです。
親が子どもを過小評価すると、子ども自身は「まだできるのに、この位で十分なのか」と感じ、自己をさらに成長させようとする気持ちが失われてしまいます。その結果、物事を甘く見たり、自分の力の限り何かを努力したりすることが苦手になってしまいます。
また、親が過大評価すると、子ども自身は、もうめいっぱい努力していて、能力以上の力を出していても、まだ頑張れと言われることになります。大好きな親から頑張れと言われれば無理ということができず、その状態が続いてしまうと、自分はできない子だと自己評価が低くなったり、燃え尽き症候群になったりします。
“ありのままを見る”ことは口で言うほど簡単ではありませんが、子どものありのままの姿を見ることで初めて問題が見え、解決したり、子どもの力を伸ばしたりすることもあります。
以前私が経験した、こんなエピソードをご紹介します。
A君は、幼稚園の頃から虫が大好きで、よく園庭の周りで虫探しをしていました。A君は幼稚園の先生の話を最後まで聞かずに行動してしまい、間違ったことをしてよく叱られているような子どもでした。小学校に進学しても、漢字を覚えたり、計算方法を覚えたりすることが苦手。また、授業中も気づいたことがあるとつい声に出してしまい、先生から叱られます。しかし、自分の興味のある理科や社会科の学習内容は、よく覚えて帰ってきます。
一見、A君は自由奔放で、怖れを知らない、少し困った子のように見えます。しかし、実際はシャイで、苦手な科目や困ったことがあっても言えなかったり、よく叱られることで自分に自信がなかったりします。
困った子どもだと思って叱ったり、何とかしようとして塾に行かせたりする場合もあるかもしれません。しかし、A君にとって一番のサポートは、困っていることを聞き、補ってあげることでした。保護者の方がA君と話をし、A君が理解しやすい学習方法を一緒に探したり、授業中にどうして声に出してしまうのか、その気持ちを汲んだうえで対応方法を教えたりしたところ、A君は叱られることが少なくなり、自信も持て、苦手な教科もできるようになりました。
子どもの姿を見る時に、自分の子どもであるが故に客観視できず、親の思いで判断し、接してしまうことが多いと思います。子どもへの期待は、子どもを育てると共に、誤ると、期待で押しつぶしてしまうこともあります。
子どものことを冷静に見ると、「得意で良くできること」「苦手そうなこと」に気づくと思います。気になることや苦手なことは、じっくり向かい合う課題です。できることや得意なことは伸ばし、課題は、その子に合った方法で向き合っていきましょう。子どもは十人十色。その子に合った方法を、ぜひ、見つけていきたいですね。
*これは、学習のみでなく、生活の中の友達との関係も同じことがいえます。友達付き合いについても子どもの個性があるので、ぜひ、子どもにあった方法でサポートしてあげてください。
「できるようになる」過程を大事にする
子どもが赤ちゃんの時には、食べること、歩くこと、言葉を話すこと等、長い時間をかけて一つ一つできるようになる様子を、保護者の方は1日1日、笑顔で見守り喜びます。しかし、幼児期や学齢期になると、つい「できること」に目が行き、「できるようになる過程」を待てずに教え込みたくなってしまいます。“こうあるべきだ”という概念ではなく、お子さん自身を見つめ、お子さんが理解しやすい方法で一緒に「できるように」なっていければよいですね。
例えば、複数のお子さんを持つ保護者の方は、それぞれのお子さんを同じように育てているつもりでも、物事の理解の仕方の違いに気づかれると思います。
上の子は一つ一つ順を追って丁寧に説明し、やって見せて、やらせて、身に付いていくことが多いかもしれません。一方、下の子は、上の子の様子を見ているからか、特に教えなくとも自然と身に付いていることが多くあります。どちらのお子さんも「できるようになる」ことは達成していますし、できるようになることで達成感が得られ、自己肯定感も高まります。ここで大切なのは、「得意とする学び方」が違うことです。同じことを分からせるにも、方法が変わってきます。お子さんの特性をとらえて接することが、「できるようになる」近道です。
小学生の生活科や理科の授業で行う、朝顔を育てる授業を例にとってみましょう。子ども達はまず、種をまく前に、授業の中で植物の成長やお世話の仕方について学びます。種をまいた後のお世話は個人に任せますが、子どもの中には、先生の言う通りの量の水を上げる子もいれば、たっぷりと水をやりすぎて種を腐らせてしまう子、初めは興味をもって水やりをしますが、だんだんと興味が薄れ、水やりをさぼりがちになる子など様々です。「育たなければそれまで」では済みませんので、一度失敗した子どもは一からやり直すことで、植物の育て方を学んでいきます。
また、理科的な思考の子どもは、朝顔の成長の様子を毎日興味深く観察したり、「つる」の先にできた花芽が、何日で咲くのかを調べたりします。一方、芸術的な思考の子どもは、咲いた花を色水にして絵を描いたり、秋になって残った「つる」でリースをつくるのを楽しんだりします。
子どもは、全員が同じ経験をしていても、それぞれ興味のある事柄が違っています。興味を持てる角度から物事を見ることで、初めて全体像を理解することができるのです。大人が順序立てて教えることも悪いことではありませんが、子どもの理解しやすい方法を優先させることで、大人が想像もしないくらい、すんなりと理解することもあります。
ぜひ、子どもにあった形を大切にしながら、「できるようになる」過程を見守ってあげてください。
7月の食事
ワンポイントアドバイス~食欲不振を撃退して、夏の元気を応援~
夏本番になり、蒸し暑さと日差しが厳しい7月。後半には子どもの夏休みもはじまり、生活リズムが変化することで保護者の方もより一層の体調管理が欠かせない時期です。
そんな夏の体調管理で気を付けたいポイントは「暑さによる食欲不振」を予防すること。食事量が減ると、身体を動かしたり整えたりする栄養が不足してしまったり、お通じが滞ることで更なる食欲低下を招いてしまったり、栄養不足や腸の乱れによって免疫力低下を引き起こしたりします。そのため、食欲がわく味付けや、栄養バランスの整った食事、腸を整えることで、食欲不振を撃退しましょう。
きのこは食物繊維が豊富なので、腸を整え、食べられる身体づくりや免疫維持をサポート。また、酸味の効いた酢や梅干しとうま味たっぷりのきのこを合わせれば、暑い時でも食べやすい味付けになります。さらに、酢や梅干しなどに豊富な“酸”のチカラで、この時期に心配な食中毒の原因菌を抑えるのにも役立ちます。
きのこを生かしたさっぱりメニューを取り入れて、お子様と一緒に夏をもっと楽しめる、元気な身体を目指しましょう。
(監修:ホクト管理栄養士 德田美咲)
いよいよ夏休みです。お子さんと共に過ごす大切な時間を楽しんでお過ごしください。
profile
(ガイダンスカウンセラー、上級教育カウンセラー、特別支援教育士)
東京都の元小学校教諭。
現在はカウンセラーとして小学校を訪問し、授業の様子や児童の活動を観察して子どもの特性やその対応方法、指導法を先生方に伝える活動を行っている。
また、高等学校では友人同士の関わり活動を通して、友人や自分を理解する方法について演習等も実施。
教育カウンセラーを目指す方への学習サポートも行っている。
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