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Method of Improving Performance

目標達成への近道! コンディションは“記録”する!(後編)

2019.09.15
目標達成への近道! コンディションは“記録”する!(後編)

前半は記録することの大切さと、何を記録するのか(項目)についてお話しました。後半は、先輩アスリートの体験から記録することの大切さ、また、記録したものを実際にどう生かしていけばよいのか、また、コンディショニングをセルフマネジメントできるアスリートになるためのヒントについてお話します。

記録を生かした先輩アスリートたち

「過去を変えることはできないけれど、日々、自分の身体について記録することで、未来の自分に生かしていくことができます」と、ロンドン五輪のウエイトリフティング女子48kg級で銀メダルを獲得した三宅宏美さんは話してくれました。3大会連続して五輪に出場した彼女ですが、アテネ、北京の両五輪では十分なコンディション管理ができず、ロンドン五輪ではコンディション管理を自主的に行い、十分な練習を積んだことが結果に結びついたそうです。
多くのアスリートは、過去のうまくいかなかった経験から多くのことを学んでいることがわかります。こういった先輩アスリートの言葉からヒントを得て、コンディションの記録をどう生かすか”を考えていくのが、自立したアスリートへの第一歩なのです。

保護者と子どものコミュニケーションツールとして

水分

スポーツを頑張る子どもたちが記録した内容を、保護者や指導者が共有することで、的確なアドバイスやサポートをする際に役立つ場合があります。このときに気をつけたいのが、どのように子どもと共有するかです。
保護者がスポーツを通して子どもと接するスタイルを、近年ではスポーツ・ペアレンティング(sport parenting:下図参照)と呼ぶようになってきており、理想的なスタイル、不適切なスタイルがあるといわれています。その中でも理想的な親子関係としてご紹介したいのが、競泳のトップアスリートである瀬戸大也さんです。子どものころ、父親が有益な情報を収集してきて、身長を伸ばすため、水泳のために徹底した生活を送っていたそうですが、「やらされていた、という意識は全くなかった」と言っています。こういった関係性は、スポーツ・ペアレンティングの理想スタイルのひとつといわれる「自律性支持的スタイル」にあてはまるといえるでしょう。

【スポーツ・ペアレンティングのスタイルによる違い】

スポーツ・ペアレンティングとは、子どものスポーツ場面にまつわる子育てスタイルと、それが関係する親の子どもへの関わり方と定義されています(Holt, Tamminen & Black et al., 2009)。

ビタミンDの効果

※応答性:変化に対しても応じて答える

藤後ら(2017)を参考に
女性スポーツ研究センターが作表

読者、保護者の皆さんはどれに該当するでしょうか? 子どもの状態に合わせた選択肢を提示し、ともに検討し、自己選択を促していくことによって、子どもはセルフコンディショニングができるアスリートへと成長していきます。子どものセルフマネジメント能力を引き出すためには、保護者の皆さんの関わり方も重要なのです。

自立したアスリートへ! ~コンディショニングのセルフマネジメント~

水分

私たちは、コンディション管理に関する研究を通して、様々なアスリートの声を聴く機会があります。彼らは競技を続けていく中で、様々なことを経験し、正しい知識を得る努力をし、それを試し、試行錯誤しながら競技生活を送っています。
また、情報があふれる現代、多くの情報を得ようと心がけることはもちろん、その中から確かなものを選ぶ能力も必要となってきています。そんなとき、自身で記録していた内容は、情報の選択をする際に必ず助けとなります。

「3年間、コンディションの記録をつけてきたおかげで、どの時期にどういったことが自分には必要か、調子に合わせた対処法などがわかってきました。もう自分でコントロールできます」

「スランプに陥ったときに、過去のダイアリーを読み返します。過去の自分に励まされているような気持ちになり、“できることはまだある”と思え、スランプから抜け出すきっかけが得られました」


コンディションを管理し、活かせている選手からはこのような声も聞かれます。ここまできたら、コンディショニングのセルフマネジメントができるアスリートといえますね。
継続は力なり。先輩アスリートのように、コンディションを自分自身で管理できる自立したアスリートを目指して、コンディションの記録を始めてみませんか?

「女性アスリートダイアリー」

コンディション管理に必要な項目を網羅して製作されたのが「女性アスリートダイアリー」です。毎日コンディションを書き込むページは、1か月ごとに見開きとなっており、記録した数値等の変動が一目で把握できるつくりになっています。

https://www.juntendo.ac.jp/athletes/notebooks/download.html
※こちらのURLから、コンディショニングページをご自由にダウンロードしていただけます

「女性」とありますが、実際にはプロの自転車競技の男性アスリートも(例えば「基礎体温」を「体温」とアレンジして)活用しています。「ちょっとした集中力の欠如で大けがを招くスポーツなので、コンディショニングの変化を記録できるこのダイアリーはとても助かる」という声を寄せてくれています。

参考文献
順天堂大学. (2013). Female Athlete Notebook 2013-14.
Bandura, A. (1977). Self-efficacy: toward a unifying theory of behavioral change. Psychological review, 84(2), 191.
Holt, N. L., Tamminen, K. A., Black, D. E., Mandigo, J. L., & Fox, K. R. (2009). Youth sport parenting styles and practices. Journal of sport and exercise psychology, 31(1), 37-59.
新本惣一朗. (2012). 小学生のスポーツ実施状況の違いが特性的自己効力感に及ぼす影響. 発育発達研究, 2012(57), 1-9.
藤後悦子, 川田裕次郎, 井梅由美子, & 大橋恵. (2017). 小学生の地域スポーツにかかわる親のスポーツ・ペアレンティング. コミュニティ心理学研究, 21(1), 80-95.
ベースボール・マガジン社. (2019). 新学期特別企画トップスイマーの1日の過ごし方. スイミング・マガジン 5月号, 3-8.

監修者 桜間裕子(Yuko Sakurama)

監修者 桜間裕子(Yuko Sakurama)
小学校1年生から水泳を始め、筑波大学時代には100m自由形でインカレ優勝、リレー種目で日本記録を更新するなど活躍。卒業後、高校教諭を経て、1997年より青年海外協力隊員として中国・大慶市体育学校の水泳チームを指導。帰国後、2000年よりNPO法人ジュースに入り、「2006世界女性スポーツ会議くまもと」などの国際会議を成功に導いた。2008年より日本パラリンピック委員会勤務。北京、バンクーバーでのパラリンピックで日本選手団総務を務めた。2014年より順天堂大学女性スポーツ研究センターシニアマネジャーに就任、その傍ら2019年3月同大大学院博士前期課程(修士)修了。

女性スポーツ研究センターURL https://www.juntendo.ac.jp/athletes/

今月の菌勝メシ

目標達成への近道! コンディションは“記録”する!

自立したアスリートになるために大切なのが、ジュニア選手のうちから心身の変化やトレーニング内容を記録する習慣。 中でもスポーツをする際に欠かせないのがコンディション管理です。食事からも“健康の要”といわれる腸のコンディションを整えて、さらにパフォーマンスを高めましょう。

きのことれんこんの甘辛蒸し

きのことれんこんに豊富な食物繊維は腸内の老廃物の排出を促し、腸内環境を整えます。さらに味付けに使うコチュジャンときのこのW菌活で、腸にうれしい効果が倍増!腸を整えてパフォーマンスをしっかり発揮できる身体づくりをしましょう!

レシピイメージ きのことれんこんの甘辛蒸し

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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