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Method of Improving Performance

「のどが渇いた~」は、もう遅い! 熱中症&脱水は水分補給でしっかり予防(前編)

2019.07.01
「のどが渇いた~」は、もう遅い! 熱中症&脱水は水分補給でしっかり予防(前編)

ムシムシした梅雨が明けたら、すぐに暑い夏がやってきます。この時期、特に気をつけたいのが「水分補給」です。アスリートにとっては、コンディショニングの一つとして水分補給は大切なものですが、夏ともなれば「脱水症状」や「熱中症」を予防する意味でも、普段以上にしっかり水分を摂る必要があります。アスリート本人はもちろん、指導者や保護者の方も、水分補給について正しい知識を身につけていただき、暑い季節のコンディション管理に役立てていきましょう。

水分補給がパフォーマンスに影響?!

ここ数年の猛暑で、水分補給の重要さをよく耳にするようになりました。スポーツの現場でも日本スポーツ協会をはじめとする各種団体が、夏のスポーツ活動時のガイドラインを作成し、インターネットや冊子等で“水分補給の大切さ”について情報を発信しているのをご存知でしょうか。

日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」

これらは、熱中症対策としてスポーツを安全に行ってもらうためのガイドラインですが、大会や競技会が多く行われる夏の時期、アスリートたちに本来の力を存分に発揮してもらうためのものでもあります。
というのも、身体の中に十分な水分を保持しておくことは、アスリートにとってはウォーミングアップと同様、競技のパフォーマンスに大きな影響を与えることが研究によってわかってきています。

水分損失率

図1 水分損失率(対水分)により現れる症状および運動能力の関係

上の図にあるように、水分損失が体重の2%不足するころからは運動能力が低下し始めます。運動能力の低下は、練習の成果が発揮できないばかりか、体力消耗や思わぬケガにつながる恐れもあるため、運動時は特に水分補給に気を配る必要があるのです。

水分が必要な理由とは

水分

図2 体内における水の働き

アスリートのパフォーマンス、そして私たちが生きていくうえで、なぜ、そんなにも“水分”が必要なのでしょうか?
私たちの身体は、全体重のうち約60%が水分だといわれます。体内にある血液やリンパ液などの水溶液を総称して「体液」といいますが、この「体液」は、循環することで栄養素や酸素を全身に届けたり、老廃物を排出させたり、汗となって体温を調節するなど、生命にかかわる大切な役割を果たしています。

体水分のinとout

私たちの身体の多くを占める水分には、汗や尿などで排出される水分「out」と、飲食によって取り入れる水分「in」があります。
安静にしている人(体重70kg)の場合、尿や便、不感蒸泄(発汗以外の皮膚や呼気からの水分の蒸発)だけで一日に2500mlもの水分が失われていますから、脱水にならないためには同量の2500mlを体内に補充しなければなりません。食事やその時に摂る水分(汁物やお茶)だけでは、半分程度しか補うことができないため、飲水で残り半分を補充するようにしましょう。
さらに、運動で体温が上昇し、汗をかくアスリートは、もっと多くの水分が身体から失われてしまいます。したがって、脱水にならないように、発汗量に見合った水分を補う必要があるのです。
*出典:「アスリートのための栄養・食事ガイド」(財)日本体育協会スポーツ医・科学専門委員

夏に気をつけたい「脱水」「熱中症」

では、体内の水分が不足すると、どのような症状に陥るのでしょうか。
小児の場合、5%程度水分が不足すると「脱水症状」が起こり、成人では2~4%の不足で身体に顕著な症状が現れはじめ、20%以上の不足で生命に危険を及ぼすといわれています。
また脱水が招く危険な障害として「熱中症」があります。熱中症とは、熱けいれん、熱疲労、熱失神、熱射病といった、暑さによって生じる暑熱障害の総称です。私たちの身体は、運動をすることにより大量の熱が発生しますが、その一方で皮膚に近いところの血管の拡張と汗が出ることによって身体の表面から熱を放散し、体温のバランスを保とうとします。ところが暑い環境でプレーをすると、熱を放散しにくくなるばかりか、生理機能や体温を調節する機能がうまく働かずに熱中症に陥ってしまうのです。それほど気温が高くない状況でも、運動中には大量の熱が作られることで、熱中症になってしまうことがありますので、アスリートや指導者は常に注意しましょう。

熱中症

図3 熱中症予防運動指針

出典:公益財団法人日本スポーツ協会HPより引用

参考文献
「基礎栄養学」山本隆史(南江堂)
Yoshida et al. Eur J Appl Physiol, 2002, 87: 529-534
熱中症を防ごう(n.d.).Retrieved June 20, 2019 from
https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid922.html

監修者 佐藤 郁子(Ikuko Sato)

監修者 佐藤 郁子(Ikuko Sato)
文教大学女子短期大学部栄養科卒業。公認スポーツ栄養士、管理栄養士の資格を持つスポーツ栄養の専門家。横浜市介護予防事業口腔ケア・栄養改善プログラム講師、NPO法人日本スポーツ栄養研究会事務局勤務等を経て、現在に至る。順天堂大学医学部附属順天堂医院・同浦安病院の女性アスリート外来では、婦人科・整形外科と連携し、競技内容やレベル、生活・練習環境に合わせた栄養指導を実施。また現在はフリーの管理栄養士として、特定保健指導、スポーツ選手の栄養サポート、ダイエットトレーナー等、幅広い活動を行っている。
順天堂大学医学部附属順天堂医院女性アスリート外来ウェブサイト https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/wsmc/

今月の菌勝メシ

「のどが乾いた〜」は、もう遅い!
しっかり予防、熱中症&脱水

だんだんと暑くなり運動中の熱中症には気を付けたいところ。食事からも水分補給をすることでしっかり身体に水分を取り込み、バテない身体づくりを心掛けましょう!

きのこと夏野菜のスープカレー

きのこに豊富なビタミンB1はエネルギーの素となる糖質を代謝することで疲労回復に効果的。合わせる豚肉にもビタミンB1が含まれるので相乗効果が期待できます。
またきのこや夏野菜に豊富に含まれるカリウムは体内の余分な水分と共に熱も体外に排出する働きがあるため、夏バテ予防にも効果的です。

レシピイメージ きのこと夏野菜のスープカレー

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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