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知って得する除脂肪体重(後編)

2019.06.15
知って得する除脂肪体重(後編)

LBM(エルビーエム)について理解を深めたところで、成長期の身体のバランスを確認できる筋肉指数「LBMI(エルビーエムアイ)」も活用していきましょう。身長とLBMがともに増加しているというだけでは見破れない、成長期の身体の中で起こっている“エネルギー不足”が、LBMIの数値をみることで発見できます。

大切なのは、身長とLBM(除脂肪体重)のバランス

ゴールまでの“戦略”を立てよう前編で、成長期に注目してもらいたいのは「LBM」だとお伝えしましたが、同時にとても大切なのは、背が伸びることです。第二次成長期(女子:9~13歳、男子:11~15歳)に「身長」と「LBM」、どちらもバランスよく増加することが、最終到達身長の獲得につながるといわれています。
また、LBMの増加は、基礎代謝の増加とも相関することがわかっています。つまり、それだけエネルギーを使う量が増えているということなのです。LBMが1kg増えたら、これまでよりも60kcal(おにぎり3分の1個分がめやす)程、摂取エネルギーを増やして、エネルギー不足にならないように気をつけましょう。

「LBMI=筋肉指数」でバランス確認!

成長期には、身長とLBMがバランスよく増加していくことが理想的。そこで、成長期アスリートの皆さんを対象として研究・開発された筋肉指数「LBMI(Lean Body Mass Index, エルビーエムアイ)」を活用しましょう。LBMIを記録・管理していくことによって、エネルギー不足に陥っていないかなどの体調管理にも役立てることができます。
ではさっそく計算式を使って、あなたの(もしくはあなたのお子さんの)LBMIを算出してみてください。

<LBM(筋肉指数)算出の計算式>

    LBMI = LBM(㎏) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

どう見る? LBMI

LBMIは「筋肉指数」ですので、成長とともにLBMIの数値が増えていくことが重要です。
例をご覧ください。

<例>Bさん(女子)
計測年齢:10歳4か月→10歳9か月(※この間の期間も定期的に計測・管理しています)

10歳4か月10歳9か月比較
身長 129.0㎝135.0㎝+6.0㎝
体重 25.0㎏26.1㎏+1.1㎏
体脂肪率 14.3%13.2%−1.1%
脂肪量 3.6㎏3.5㎏−0.1㎏
LBM 21.5㎏22.7㎏+1.2㎏
LBMI 12.9012.45−0.45

Bさんの場合、5か月の間に身長が6㎝も伸び、LBMも少しですが増加しています。ところが、筋肉指数のLBMIはマイナスの数値となっています。これは、急激な身長の伸びに対して、筋肉の増え方が追いついていないということを示しています。

成長期にも関わらず、LBMIの数値が下がるのは、エネルギーが足りていない=エネルギー不足を意味します。成長期において、こういった推移が起こることは大変な危険信号であり、摂取エネルギーを増やして、エネルギー不足を解消しなくては十分な成長はできません。
自身の身体を飢餓状態にしない、成長するために十分な栄養(エネルギー)が摂れていることを確認する意味でも、LBMIの数値、推移を見ていくことはとても大切なことなのです。ですから、毎月、身長・体重・体脂肪を測り、LBMを算出して、LBMIを導き出し、これらが右肩上がりに増えているかを確認しましょう。

LBMI(筋肉指数)

身長の伸びが止まったら?

成長期を終えた(身長の伸びが止まった)アスリートも、もちろん、LBMやLBMIでのコンディション管理をしていただくことをおすすめします。女子でいえば中学の後半から、男子でいうと高校の後半からは成熟した身体へと変化をしていく時期であり、骨の伸びが止まることで、身長の伸びが止まります。ウエイトトレーニングを始めたりして、筋肉量が増えているのに「体重が増えてしまった」と勘違いして、無理なダイエットをしてしまうと、エネルギー不足となり、ひずみを生み、ケガや病気の原因となることもあります。女子では月経が止まってしまったり(視床下部性無月経)、さらには疲労骨折を引き起こす原因となります。体重や体脂肪率にとらわれて一喜一憂せずに、ぜひ、LBMやLBMIの数値でコンディション管理をしていきましょう。

LBMI管理に役立つツール「スラリちゃん・伸びマッスル表」


LBMIでのコンディション管理をするうえで、一目で確認できる便利なツールをご紹介します。簡単にいえば、「身長とLBMは、成長期にはどちらも大切! ならば、同時に考えちゃおう!」ということで実現したツール。それが、「スラリちゃん・伸びマッスル表」です。
身長とLBM、LBMIがバランスよく増加しているかを目で見て瞬時に確認できるのが特徴で、現在では多くの公認スポーツ栄養士、管理栄養士、トレーナーの方々がジュニアアスリートへの栄養指導、コンディション指導に活用しています。
「身長(縦軸)」と「LBM(横軸)」の交わったところに示される数値がLBMIです。身長が伸びている時期には、1か月に1回、確認するようにしましょう。

身長とLBMのバランスを確認するために開発されたLBMI(筋肉指数)
「スラリちゃん・伸びマッスル表」



ゴールまでの“戦略”を立てよう※身体活動レベルPAL2.0(身体活動が多め=毎日水泳2時間程度)として計算されています。
※色別のゾーン分けにより、より見やすく工夫されています。赤ゾーンに近くなるほどLBMが少なく、紫ゾーンに近いほどLBMが多く筋肉質といえます。
※第二次成長期が始まる前の男子もご利用いただけます。
「スラリちゃん、伸びマッスル表!」のダウンロードはこちら

順天堂大学女性スポーツ研究センター、独立行政法人国立病院機構西別府病院
※平成29年度スポーツ庁事業女性アスリートの育成・支援プロジェクトで作成しました

活用例)146.5㎝、LBMが30.7kgの女の子「スラリちゃん」の例で説明します。

ゴールまでの“戦略”を立てよう ・まずはLBMIを数式で算出
30.7÷1.465÷1.465=14.30となり、14.30がスラリちゃんの現時点でのLBMIです。
・表にマーキング(記録)する
身長が伸びていくにつれ、LBMも増加していくことが望ましいので、今回の14.30の地点から、今後、数値を下げずに右上がりに推移していくこと(ピンク矢印)が理想的です。

※成長期を過ぎたアスリートは、「スラリちゃん・伸びマッスル表」でいうと身長(縦軸)は変わらないため、LBM、LBMIの数値ともに、現状維持か、右にシフトしていくのが理想的です。身長に変化がないのですから、トレーニングなどで筋肉量が増えれば、LBMが増え、LBMIも増えるということです。

今回は、LBMやLBMIについてご紹介しました。体重や体脂肪率で自身の体型やコンディションを管理してきたアスリートの皆さんも多いと思いますが、「筋肉(LBM、LBMI)」を確認することで、身体のバランスをより正確に把握することができます。健やかな成長、充実したアスリート人生のために、「LBM」「LBMI」でのコンディション管理を取り入れてみてはいかがでしょうか。

監修者 関口 晃子 (Akiko Sekiguchi)

監修者 関口 晃子 (Akiko Sekiguchi)
順天堂大学大学院卒業後、カナダのHalifax Alta Gymnastics Club にて約4年間、現地の子どもたちに体操を指導した経験を持つ。帰国後は、英語・体操・アウトドアプログラムを通じて元気なカラダとココロをつくる活動「操SO」を主宰。複数の大学で非常勤講師を務める傍ら、2011年より女性スポーツ研究センターのコーディネーターとしても活動。「女性アスリートダイアリー」初版開発に携わった他、2014年からは独立行政法人国立病院機構 西別府病院 スポーツ医学センター長・松田貴雄医師を中心とした「発育発達期の女子の調査研究」のサポートを行うなど、未来の日本スポーツ界を支える女子アスリートのための調査研究に従事する。
女性スポーツ研究センター コーディネーター
女子美術大学、淑徳大学短期大学非常勤講師(専門分野:成長期女子アスリートの発育発達、幼児期~低学年における体操指導)

今月の菌勝メシ

筋肉作りをサポートする栄養満点レシピ

筋肉をつけるためにはトレーニングももちろん大切ですが、食事から栄養を摂らないと筋肉は作られません。筋肉の素となるタンパク質とタンパク質の代謝を促す潤滑栄養素(=ビタミン・ミネラル)を一緒に摂ることで強い筋肉づくりが叶います。

きのこと鶏むね肉の簡単チャーシュー

良質なタンパク質が含まれる鶏むね肉ときのこを合わせた、ご飯がすすむ晩御飯にピッタリのおかず。きのこに豊富なビタミンB群がタンパク質の代謝を促し、より強い筋肉づくりをサポートします。マイタケのチカラでお肉が柔らかくなり、消化が良くなるのもアスリートにオススメのポイントです!

レシピイメージ きのこと鶏むね肉の簡単チャーシュー

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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