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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第13回 スキージャンプ・葛西紀明選手インタビュー

2021.12.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第13回 スキージャンプ・葛西紀明選手インタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。第13回に登場していただくのは、まさに「レジェンド」の呼び名がふさわしい、スキージャンプの葛西紀明選手です。50歳目前ながら監督兼選手として活躍し続ける気力や体力を支えているものは何なのか。還暦ジャンパーを目指す葛西選手に、食生活やコンディションづくりの秘訣を伺いました。

まずは葛西選手の幼少期の生活や食事について、またジャンプとの出会いについて教えてください。

小学1年くらいまでは体が弱くて、毎日のように病院に通っていました。それで何かスポーツを始めたほうがいいだろうということで、マラソンを始めたんです。それからどんどん体も強くなって、気が付いたら下川町で一番足の速い男の子になっていました(笑)。
それからどんなスポーツも好きになって、サッカーも野球もやりましたね。当時はゲームなどもないので、釣りをしたり、ザリガニやカエル、サンショウウオを獲ったり。クワガタなんて夏休みに100匹くらい獲っていました。また、親父に連れられてしめじや落葉きのこ採りもしていましたね。北海道でよくとれるので、毎日のようにきのこや山菜採りに行っていました。

ジャンプとの出会いですが、マラソンを始めたきっかけで、冬場はクロスカントリーのスキーをやっていたんです。そこでたまたまスキー場で滑っていたら、友達に誘われて、小学校3年の時に初めてジャンプを飛びましたね。最初は怖かったし、ジャンプになりませんでしたが、だんだんバランスが分かってきて着地も立てるようになると、友だちと競い合うようになりました。それが楽しくて、ジャンプにのめりこんでいきました。

幼少期、中学時代から様々な記録を残されてきた葛西選手ですが、高校時代は1年生の時から代表チームで活躍されていたとのこと。練習で大変だったことや、食事面で意識していたことはありますか?

当時は国内で大人も合わせた大会で1位を取ったりもしましたが、初めて高校1年で海外遠征に行った時にレベルの違いに打ちのめされて、これじゃダメだと高校2年の時には死に物狂いで、誰も見ていないところでもトレーニングしていましたね。スキー部のトレーニング以外にも自主トレをして、食事もバランスを考えながら腹いっぱい食べて筋肉をつけてというかたちでした。

明確に栄養に対する意識が変わったのは、社会人になってからです。地崎工業に入社してからすぐに栄養士、調理師をつけて、1日のカロリーをコントロールしていくなかで、次第に自分でも食事の大切さを理解していきました。高校時代はバランスは考えていても基本は好きなものを食えという感じだったんですが、地崎工業に入ってからは、合宿地には必ず栄養士や調理師がついて、バランスの良い食事を教えてくれました。

それを私生活にも取り入れていったのですね。では、年齢を重ねていく中で食事への気を付け方は変わっていきましたか?

多少は変わりましたね。初めから五大栄養素は気にしていましたが、例えば若いころは肉に脂身がついているものを食べていました。30歳を超えてからは、肉はヒレ肉やささみに代わりましたし、一番摂りにくいと言われているビタミンCもなるべく摂るようにしたり。40歳を超えた今では、同じトレーニングをして同じ食べ物を食べても、前とはやっぱり違います。代謝が悪いのか、なかなか体重も落ちなくて、断食をすることもあります。3日間一切食べずに、水とブラックコーヒーだけで減量するんです。

ただ、やっぱり今でもおなか一杯にしたいという気持ちもあるので、その時はきのこを食べることが多いです。野菜だけだとすぐにおなかが減ってしまうので、おなかの持ちもよくてカロリーも低くて食べ応えがあるものを探すと、きのこしかないんですよ。下手したら年間を通して一番食べているのがきのこだと思います。
今でも奥さんが必ずきのこを買ってくれるのできのこの消費量は多いですし、ジャンプを始める前から山で採ったりと、きのこにはお世話になっていて、きのこ様様です。そしてきのこは腸にもいいですよね。僕の奥さんもアスリートフードマイスターという免許を持っていて、いろいろ教えてくれるんです。

体重コントロール、具体的にはどのように調整しているのですか?

結婚する前までは、試合前の3日間で断食をしていましたが、結婚してからは奥さんにそれではダメだと言われまして、今は大体1か月前からきのこや野菜サラダ生活を始めて、少しずつ落としていく減量に変わりました。ただ、ジャンプは体重制限があるので、最終的に落ちなかったら断食です。

僕はもともと筋肉の量が多いので、頑張って減らして体重を合わせるタイプなんです。選手の中にはもともと体重が少なくて、水を飲んで増やさなければいけないタイプもいます。そういう選手は朝昼晩しっかり食べているんですが、僕はそれを目の前でじーっと「おいしそうだな」と思いながら見ているしかない。めちゃめちゃきついですよ。

今は選手たちにとって2022年の北京五輪が目標になりますね。東京五輪で刺激を受けた方もいると思います。葛西選手も東京五輪に感じるものはありましたか?

もちろんです。毎日、何種目も見て、釘付けでした。コロナの影響もあって感動や希望、そういったものが、みんなうずいているんじゃないかと思うんです。僕もオリンピックを見て感動して、自分と照らし合わせたりもしました。映像を観ることによって、その選手がどれだけトレーニングしてきたのもわかるので、すごく刺激も受けました。東京オリンピックがなければ、自分の闘志に火が付かなかったと思います。他の選手もそう思っていると思いますよ。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

レジェンドとしていつまでも活躍し続ける葛西選手に憧れてスキーを始める子ども達も多いと思います。最後に、子供たちに食事面でアドバイスをするならどんな言葉をかけますか?

たくさん食べていろんなことにチャレンジしてほしいです。僕はジャンプをずっとやってきましたが、野球やサッカー、釣りだったりクワガタ獲りだったり、いろんなことをして吸収してきました。食事の面でも同じように好き嫌いなくいろんなものを食べて、すべてにおいて挑戦してきました。たくさん食べてほしい、というのはもちろんですが、いろんなものにチャレンジしてほしいなと思っています。

葛西選手の Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
『自分の夢は努力で叶える。』これが僕の座右の銘です。自分で考えた言葉なんですが、おそらく2010年くらいから座右の銘にしています。

■ストレス解消法やリラックスの方法は?
最近は子どもたちと遊ぶことですね。コロナになる前までは温泉に行ったり、海外旅行に行ったりしてストレス解消していました。

■ここまでの現役生活のなかで忘れられないシーンは?
良いことだとソチオリンピックで、41歳でふたつもメダルを取れたことですね。そこでメダルをとったことで、日本に帰ってきたら本当にたくさんの方に喜んでいただけました。7回目のオリンピックでしたが、「感動した、勇気をもらった」とあれだけ言われたのは初めてだったんです。最初は銀メダルで悔しいなと思っていましたが、みんなが声をかけてくれるのですごく嬉しくなりましたし、また頑張ろうという気持ちになりました。応援してもらえることですごい相乗効果が生まれるんだなというのを強く感じました。7回もかけてようやくそこの境地にたどり着いたという感じです。
あの大会があってギネス記録も5個も頂きましたし、自分が頑張ることによってみんなが元気になれるんだというのも実感しました。今はそれが快感というわけではないですが、嬉しくなりますね。「頑張って!」と言われると、また頑張る原動力になるし、それがどんどん積み重なって膨れ上がっていくんです。

■これからの目標、目指す姿は?
近々の目標だと北京に出場して、あわよくばメダルを獲りたいですが、長い目標を挙げるなら……ここまで来たらジャンプをやめたくない、ということですね。僕は北京が終わると50歳、その4年後のイタリアオリンピックは54歳で迎えます。さらに4年後の58歳の時のオリンピックを札幌が招致しているんです。自国と言わず地元ですよ。そのオリンピックが来たらと思うとね。札幌が招致している大会まで、あと10年きっているじゃないですか。なので、そこまで行けるんじゃないか、という気持ちになっているんです。体の衰えも感じていませんし、何だったら後輩に「葛西さんのその体力は何なんですか!」と言われるくらいですし、もしかしたらそこまで目指せるんじゃないかなという気持ちがあります。辞めたくないという気持ちもあるので、還暦ジャンパーまでやろうかと。そういう目標をもってやっていこうと思っています。

■葛西選手にとってスキージャンプとは?
出会うべくして出会った恋人です。僕は1972年6月6日生まれなんですが、72年というと札幌オリンピックで笠谷幸生、金野昭次、青地清二が金銀銅を独占した年です。その年に生まれたということは……オリンピックの申し子、でしかないですからね(笑)。

葛西選手が今食べたい菌勝メシ

コメント

スキージャンプは体重の軽い選手が有利になるので、食事での体重コントロールは特に意識しています。きのこは栄養があり、さらに低カロリー。豚肉、きのこ、野菜がたっぷりの豚汁は筋肉維持や体調管理にも役立つので、減量中にも嬉しいメニューですね。

きのこたっぷり豚汁

きのこに豊富な食物繊維は全身の免疫細胞の約7割が集まる“腸”を整えるため、コンディション維持に役立ちます。また、しょうがには身体を温める効果があるため、体温を高めることで免疫力アップをサポート。食事からの体調管理で、寒い時期も元気で健康な身体をつくりましょう!

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profile

葛西紀明

(かさいのりあき)

1972年6月6日生まれ 176センチ/59キロ
チーム土屋スキー部選手兼任監督。北海道出身

小学3年でジャンプに出合い、中学3年のテストジャンパーとして優勝者の記録を上回り話題となる。1994年リレハンメル五輪団体銀メダル、2014年ソチ五輪個人銀メダリスト。スキージャンプ選手としては異例ともいえる30年以上のキャリアと、40歳を超えてなお一線級の成績をマークすることから「レジェンド」と称され、国内外から尊敬を集める。冬季五輪8大会連続最多出場記録、冬季五輪スキージャンプ最年長メダリストなど5つのギネス世界記録をもつ。夢は “還暦ジャンパー”。

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