プロアスリートを支える食事に迫る。第49回 ラグビー・山中 亮平選手インタビュー
2024.12.01
明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回はラグビー日本代表・山中亮平選手が登場。ラグビーを始めたきっかけから、日本中が熱狂した2019年ワールドカップで感じたこと、アスリートとしてのキャリアを支えている食生活まで幅広くお話しいただきました。
はじめに、ラグビーを始めたきっかけを教えてください。小学生の頃は水泳をやられていたそうですね。
将来は水泳でオリンピック選手になりたいという目標を持って、かなり本格的にやっていました。地元(大阪)のイトマンスイミングスクールに通って、当時は4つ上の寺川綾さん、2つ下の入江陵介くんという、のちのオリンピックメダリストとも一緒に泳いでいました。平泳ぎでジュニアオリンピックのような大きな大会に出たこともあるんですよ。
でも、徐々にタイムが伸びなくなって、周りがどんどん自己ベストを更新していくなかで、精神的にしんどくなってしまって……。もっと楽しくスポーツがしたいなと思って、中学校に進むタイミングで水泳をやめたんです。
それで中学校ではラグビーを?
最初はサッカーですね。小学校の時に少しだけやっていたので。ただ自分にはちょっと合わなくて、たまたま隣でやっていたラグビーを見ていたら、ルールも何も知らないのですが、すごく楽しそうだなって思えたんです。顧問の先生から「ラグビー、やってみいへんか?」って誘われたこともあって、それで中学2年生から始めた感じでしたね。
その後、東海大附属仰星高校の3年時には全国制覇を成し遂げますが、「ラグビーで生きていこう」と決められたのはその時くらいからですか?
そうですね。高校年代の日本代表メンバーに入るようになってから、この先もずっとラグビーを続けたいなって思うようになりました。
早稲田大学時代には日本代表入りを果たします。初めて代表活動に参加した時の印象はどうでしたか?
やっぱり体格差やフィジカルの差を感じましたね。だから、フィジカル勝負で負けない身体を作るために、食事の量も増やしましたし、ウエイトトレーニングもかなりやるようになりました。大学生の頃は、日本代表に行って帰ってくるたびに身体が大きくなっていましたね。
そして迎えた15年W杯はバックアップメンバーでした。日本が強豪・南アフリカを相手に歴史的な大金星を挙げた時は、どんな感情が沸き上がってきましたか?
W杯には行けないかもしれないなと思っていたので、バックアップメンバーになった時はそこまで悔しさはなかったんです。でも南アフリカ戦を見たあとに、一気に悔しさがこみ上げてきて、「もっと頑張っていたら、あの場にみんなと一緒にいられたのに」って、すごく後悔しましたね。「どうせ行かれへんやろ」って考えが頭のどこかにあって、全力を出し切れてなかったんじゃないかって。
その悔しさを胸に4年後を目指し、日本開催の19年W杯にも出場されました。初戦のロシア戦で初めてW杯のピッチに立った瞬間は、どんな気持ちでしたか?
実はW杯イヤーの19年は、日本代表として大会前に1試合しかプレーしていなかったんです。だからメンバーに入れただけで嬉しかったし、特別緊張することもなかった。ロシア戦もリザーブで、自分に与えられた役割は分かっていたので、試合に出たらそれをやり切るだけだと思っていました。いざピッチに入ったら、すぐにロングキックを蹴る場面が2回あったんですが、それがすごくいいキックになって、チームにパッと勢いがついたのも分かりましたね。
当時はスタジアムだけではなく、日本中がラグビーでひとつにまとまっていましたよね。あらためて、あのW杯は山中さんにとってどんな大会でしたか?
個人的にはW杯出場という夢を叶えられましたし、チームとしても史上初のベスト8入りを達成できた。これまでW杯を目指して諦めずにやってきたことが報われたので、本当に最高の大会でした。
大会後には丸の内でパレードもやらせていただきましたが、ものすごい数の人が集まってくれて、ラグビー日本代表が国民のみなさんにとてつもない影響を与えたんだなって実感しましたね。
その後、いわば“ラグビー人生の集大成”と位置付けて23年のW杯を目指されますが、大方の予想に反して、W杯のエントリーメンバーから落選。ところがその後、怪我人がでて山中さんが急きょ追加招集されました。その時の心境は?
実はイングランド戦(プール第2戦)が始まる前に、胸騒ぎはあったんです。「ここらへんでまた呼ばれたりしそうだな」って。過去にも追加招集の経験は何度かありましたし、そういった予感みたいなものがホンマに僕の中にあって、実際にそうなった。だから、びっくりしながらも、切り替えはスムーズにできましたね。いつ呼ばれてもいいように準備はしていましたから。
山中さんはプールステージ最終戦のアルゼンチン戦に途中出場されましたが、ご自身にとって、あの大会の持つ意味は?
正直、W杯感はなかったですね。途中から参加したこともあって、緊張もまったくなく、とりあえず楽しんでプレーしようと、そんな感覚でした。ただ、リザーブにも一度も入れずに大会を終えた選手もいますし、そういった選手のためにも良いパフォーマンスを見せなくてはならないと思って戦いました。
やっぱり、あの舞台に立つ、立たないというのは大きな違いです。出たくても出られなかった選手がいるなかで、途中参加にもかかわらずピッチに立てたというのは、ものすごく光栄なことでしたね。

ここからは食事面について聞かせてください。幼少期はどんな食生活をしていましたか?
水泳でオリンピックを目指していた僕をサポートするために、母親も栄養面を考えた食事を作ってくれていましたね。僕は太りにくいというか、すぐに痩せてしまう体質だったので、量もしっかりと食べるように基本的にはなんでも大盛りでした。
当時は野菜が苦手だったんですが、オムライスとかハンバーグとか、僕の好物にうまく混ぜながら食べさせてくれていましたね。
トップアスリートとして、食事面で意識していることは?
寿司、焼肉、オムライス……子どもの頃から好きな食べ物は変わりません。ラーメンも好きですけど、ただ脂っこい食事は意識してあまり取らないようにしていますね。本当にたまに食べる程度で、前日に不摂生をしたら、翌日はあっさりしたものを食べて調整するようにしています。
山中選手は栄養面も意識されているということですが、健康の要となる「腸内環境」を整えるなど、栄養の豊富な「きのこ」の印象を教えてください。
きのこは食物繊維などが多くて身体によい食べ物、というイメージがあります。また、どんな料理にも合うし調理もしやすいので、よく食べますね。
きのこ料理で何か好きなものはありますか?
エリンギやシメジを副菜に使って食べることが多いですが、炊き込みご飯、味噌汁、エリンギのバター焼き、エノキの肉巻きなんかも好きなメニューですね。
では、トップアスリートを目指すうえでの食事面でのアドバイスをお願いします。
ラグビーはコンタクトスポーツですから、特に身体の大きさが重要になってきます。朝昼晩の3食をしっかり食べることに加えて、いわゆる補食も意識したほうがいいと思います。僕も中学生の頃はラグビーの練習が終わってすぐにおにぎりだけ食べて、その後に家で晩御飯という食生活でしたから。
最後に、山中選手のようなトップアスリートになるためには、何が一番必要でしょうか。
自分が将来どうなりたいか、どうやったらその理想に近づけるかを常に考え、そして行動に移すことだと思いますよ。僕もずっと「今よりも上手くなりたい」と思いながら、ラグビー人生を生きてきましたからね。だからこの歳になっても、暑い日も寒い日も文句のひとつも言わずに走り続けているんです。
山中選手のDo my best,Go!
■ 好きな言葉は?
最近は、「今を楽しむ」ですね。以前は「どこにいるか、ではなく、そこで何をするか」だったんですが、2023年のラグビーワールドカップ(W杯)を境に変わったんです。
一度は日本代表メンバーから落選して悔しさを味わい、その後、怪我人が出たことで大会途中に緊急招集され、試合にも出場できました。あの2、3か月の間にそうした大きなうねりを経験したことで、人生においてはとにかく「今を楽しむ」ことが大切なんだなって、強く感じたんです。
■ 競技人生の中で忘れられない大会は?
やはり日本代表として戦い、初のベスト8入りを成し遂げた2019年のW杯です。あんな興奮や感動は、この先もう二度と味わえないんじゃないかって思えるくらい、本当にすごい1か月間でしたからね。
どの試合も素晴らしい思い出ですが、決勝トーナメント進出を決めたスコットランド戦はもちろん、敗れはしましたが準々決勝の南アフリカ戦も、強く印象に残っています。スコットランド戦は、最後に僕がキックを外に蹴り出して試合が終わりました。おかげで大会後も、その瞬間の映像がたくさんテレビに流れて、めちゃくちゃラッキーでしたね。
■ リラックスや切り替えは?
クラブハウスから家までの15~20分くらいの道のりで、車を運転しながらお気に入りの曲を流して、ひとりで歌うことですかね。いいストレス発散になりますよ。
よく聴くのは、小中学校時代に流行っていたような懐メロ。対向車とすれ違う時に、あんまり大声で歌っていると恥ずかしいので、最近は口を大きく開けずに歌う方法を身に付けました。家に着く頃にはすっかりリラックスできていますね。
■ 今後の目標は?
先の目標というよりは、とりあえず目の前のことばかり考えていますね。どうやったらラグビーがもっと上手くなれるのか。例えば関節の動きなど、より効果的な身体の使い方を調べたりするのも好きですし、練習ではそれをどう実際のプレーにつなげられるかを確認しながらやっています。ベテランと呼ばれる年齢になって、身体のあちこちにガタが来ていますから、そういったことに若い頃よりも気を使うようになりましたね。
もちろんチームで優勝するとか、もう一度W杯に出たいとか、大きな目標もありますが、結局そこに到達するために、自分が何をすべきかが大切なので。だから今の目標は? と聞かれたら、「ラグビーがもっと上手くなりたい」。そう答えるだけですね。
■ 山中さんにとってラグビーとは?
人生、ですね。本当になくてはならないもの。もしラグビーと出会わなかったら? まあ、(今より)良くはなっていないでしょうね。
山中選手が今食べたい菌勝メシ
コメント
普段の食事では「無駄な油は取らない」・「試合前は炭水化物を取る」ことを意識しています。きのこは食物繊維などが多くて身体に良く、どんな料理にも合って調理もしやすいのでよく食べますが、大好きな回鍋肉と合わせればご飯もすすんで良いですね。

きのこのスタミナ回鍋肉
きのこには、エネルギー代謝に関わるビタミンB1が豊富なため、エネルギー不足を防いでパフォーマンスアップを応援します。また、豚肉のタンパク質と、タンパク質を代謝するきのこのビタミンB6の働きで、筋肉のケアもサポート!ご飯がすすむアスリート応援メニューです。
profile
(やまなか りょうへい)
1988年6月22日生まれ、大阪府出身。188㎝・90㎏。
東海大仰星高3年時に全国制覇を果たすと、早稲田大学でも天才肌のSOとして活躍し、大学生ながら日本代表に選出された。2011年に神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現コベルコ神戸スティーラーズ)に入団後はCTBも経験したが、18年以降はFBが専門。19年のラグビーW杯で史上初のベスト8入りに貢献すると、23年W杯にも追加招集で出場。日本代表キャップは30(68得点)。
協力:THE DIGEST
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