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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第37回 フリースタイルスキー・モーグル 上村 愛子さんインタビュー

2023.12.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第37回 フリースタイルスキー・モーグル 上村 愛子さんインタビュー

アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場いただくのは、フリースタイルスキー・モーグルでオリンピックに5度出場されすべて入賞、世界選手権優勝やワールドカップでは総合優勝するなど、第一線に立ち続けた上村愛子さん。長期間にわたり第一線で活躍できた経緯、その土台となる食への意識などをお伺いしました。

まず、スキーを始めたきっかけを教えてください。

私は兵庫県の伊丹で生まれているんですけど、まだ自分の記憶がない頃に伊丹から長野の方にスキーに来ているみたいなんですね。その後も長野に行っている中で、気づいたら滑って遊んでいました。

スキーの魅力をどのようなところに感じていたでしょうか?

スピードを出すことがすごく楽しかったですね。小さい頃は自分で風を感じられるのは走るくらいしかなくて、でもスキーは、雪の上に立っているだけで風を感じられるのがすごく面白くて。板を走らせればもっと風を感じられる、思うように風を起こせるのが楽しくて、だからスピードを出すことを楽しく感じていました。

スキー競技の中でもモーグルに取り組んだきっかけはありますか?

小学生の頃からアルペン競技をしていましたが、中学校2年生のとき1人でカナダのウィスラーに行きました。そこでモーグルの試合を見て、そのかっこよさ、斜面にあるこぶを滑り降りる技術が衝撃的で、「こんな競技あるんだ」と驚き、自分でもやってみたいと思いました。

その後、高校3年生だった1998年には長野オリンピックに出場、続けてソルトレイクシティ、トリノと出場し、2007-2008シーズンはワールドカップ総合優勝、2008-2009シーズンの世界選手権ではオリンピック種目ではないデュアルモーグル(2026年大会から採用)と合わせて2冠。素晴らしい成績を残して迎えた2010年バンクーバーオリンピックでしたが、結果は4位でした。どのような大会だったでしょうか。

16歳から世界大会に出て18歳で長野オリンピックに出て、その頃から応援してもらっていました。その中で、自分が何をしたいか、自分で自分を認めるというより、みんなから見てもすごい選手じゃないといけない、ワールドカップで優勝しても「まだまだ足りないよな」と思っていました。
バンクーバーでもまたオリンピックでメダルが獲れなくて、「どうやって自分のやってきたことを腑に落とそう」と考えずにいられませんでした。

その後、休養を選択し、そして復帰しました。

自分の結果で周りをがっかりさせていると感じてしまいましたし、私の場合は精神的に病むか病まないかぎりぎりまで考えて、ぎりぎりまでやらないと自信を持てないと考えて取り組んでいたので、トリノ、バンクーバー、その8年くらいはきつかったのもありました。
休養している間、ずっと考えましたが、でも引退する理由はみつかりませんでした。自分にはスキーしかないと思い、復帰しました。

ソチオリンピックへ向けて再始動しての心境はいかがだったでしょうか。

まわりがどうみているか、評価しているかではなく3年間でできることを現実的に逆算して、かえなければいけないこと、間に合わなくても焦らないことを考え、1年ごとに成績を出すより3年後に間に合わせようと思いました。
自分に対する見方もかわりました。長い間、ちょっとネガティブな感情もあったりしながらもあきらめないで、成績も落ちるわけではなく戦えるように頑張ってきたことは認めてあげようかな、と。

ソチにも出場して5大会連続入賞の4位となり、そのシーズンをもって引退しました。5度にわたりオリンピックに出場するなど長い競技生活はどのような時間だったのでしょうか。

私は戦績がすごく面白いと思うんですよね。7位から始まって6位、5位、4位、4位。オリンピックを一段ずつ上がる人ってあんまりいなくて。
オリンピックを目指している人の成功って、やっぱりメダリストというのが大前提だと思うんです。私もそれを目指していたし、でも一つずつ上がっていけたからこそ長く続けられたところもあったと思います。

成績だけの意味ではなく、20年間やったおかげで自分なりのメンタルの持ち方とか、自分なりの一番いいパフォーマンスを出せる時のルーティンはこうだとか、そういう答えをちゃんと出しながら、本当の意味でちゃんと階段を登ることができたと考えています。
苦しい時間も多かったですけど、20年もすごく好きなことを、一生懸命取り組むことができたのがすごく幸せだなと今は感じます。

長い競技生活の支えには食への取り組みもあったかと思います。アスリートとして食について意識していたのはどのような点でしょうか。

最初のうちはそこまで気にしていなかったと思います。今思えば若い頃は、好きなものだけ食べてしまったり、おかずだけ食べてご飯まで手が伸びなかったり、偏っていましたね。
競技生活の後半になって栄養士さんに教えていただいて変化していきました。動く時間の割には糖質がすごく足りないタイプで、そのために反復練習ができないこと、食べることで練習の内容を濃くできたり練習量を増やしたりできることを学んでいきました。

食事の内容にこだわってしっかり取り組むようになってからは、それこそ風邪をひかなくなったり、練習で今までの倍滑れるようになったり、変化を感じられるようになっていきました。

海外遠征も多かったと思いますが、どのように工夫していたのでしょうか。

好き嫌いはそんなにないタイプなので、その点では苦労はあまりなかったです。
ただ、和食を作ろうと思うと、出汁を取らないとおいしくないじゃないですか。その出汁をとるのが海外だと大変なので、逆に洋食にしたり、それこそトマトとチキンと野菜ときのこを一つの鍋で煮てそれを食べたりしていました。

主食も主菜もこうじゃなきゃいけないってこだわるのをやめた方が海外では戦いやすいんだなってけっこう早めに気づいて、必要な栄養素をちゃんととることを心がけました。

今もスキーをしたりSUPをしたりけっこうアクティブに動いているので、自分の好きなスポーツを楽しめるくらいの筋肉はなるべく長く持ちたいなと思っていて、選手の頃に身につけた食材の選び方などを今も応用しながら生活しています。

栄養面への意識も高い上村さんですが、低カロリーで様々な栄養素を含む「きのこ」の印象を教えてください。きのこはお好きでしょうか?

長野育ちなので、きのこは比較的たくさん食べていると思いますし、好きですね。
しめじや舞茸は香りが良いので炊き込みご飯やマリネにしても美味しい。エリンギは炒め物やすき焼きに入れたり、細かく刻んでバターで炒めてからカレーに入れたりするのも好きです。乾燥しいたけは、戻して甘辛く煮て巻き寿司の具材にしたり、カットされた乾燥椎茸はそのままお汁物に入れたりします。

高1、高2くらいだったと思うんですけど、体力測定の中で体脂肪量の項目があって、18%を切れなかったんですね。体脂肪を落とす方法が分からなくて、めちゃくちゃ走ったりもしたのですが、そのとき糖質をカットしようとご飯と一緒に刻んだきのこを一緒に食べたりしていました。たくさんきのこを食べたんですけど、その後いろいろな料理法をやったことでより好きになりました。きのこは一年中、常日頃から食べられますしね。

きのこは腸内環境を改善する働きもありますが、ご存じでしたでしょうか。

はい。知っていました。
現役時代、体力測定や栄養を学んで取り入れたりしていましたが、ある意味自分の体の実験になっていることが、やっていて面白かったです。ですから、(きのこが腸に良いことは知っていますが、)自分の体で実験してみたいですね。きのこを断った1か月と普段のきのこをたくさんとっている食事、どう変わるのか測定してみたいです。

振り返ってみて、しっかり栄養をとっていると高強度の練習ができたりとか達成感をもてる技術が出せたりと、そこがつながっているというのは体験としてあって、その中できのこはかなり大きな存在だと思うんですよね。断ったことがないので、食べなかったときに自分の体がどうなるんだろうとは思います。それくらい食べていましたし、今もめちゃめちゃ食べますね。

では、スポーツに励むジュニアアスリートへのアドバイスをいただけますでしょうか。

「スポーツ」と自分の中で定義できるものを楽しめる体でいる、イコール、歳をとっても健康でいるということかな、と自分の中では感じています。

体を動かすことっていい意味での副産物がすごく多いと思うんです。のんびり家でテレビを観ていたり本を読んだりするのも好きなんですけど、基本、そういう時間って体を動かさないじゃないですか。体を動かして体があったかくなる、そういうことを楽しいと思えるのが大事な気がしていて、長く体を動かしたいと思えるもの、やりたいことが人生の中にあったらいいなとずっと思っていました。自分はそれがスキーです。

もう一つ、海外の人ってスキーでも形はお構いなしなんですね。自分が楽しいと思えるように取り組んでいて、日本の方はやっぱり答えを求めがちというか、いいと言われるものを身に着けようとしがちです。

それもそれで素晴らしいスタイルだと思うんですけど、小さいときの私が育ったみたいに、雪の上に立って風を感じる、それが楽しいからスキーをしたい、もっと速くなりたいから、スキーを踏むという技術も覚えたい。そして体を動かして気持ちいいなって感じられる。
何かしらそういうものが見つかるとすごく豊かになるかなと思いますし、やりたいことが一つ増えるといいな、と思います。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

最後に、ジュニアアスリートへの食事面でのアドバイスをお願いします。

新しいことを取り入れてみると何かしら変化があって、私自身、自分の体が変わる、メンタルが変わっていくのを感じることはとても面白いと感じています。

食事も健康に良いもの、栄養が豊富なものがたくさんあると思いますが、まずはあまり難しく考えず知識に囚われるのではなくて、その競技をするうえで自分がどうなりたいかを想像して理想の自分になるためには何が必要かを逆算できるといいなと思います。

そうしたら、もっと持久力が必要だな、筋力が必要だなと感じたときには必ず食事、栄養への取り組みが必要になってくるはずです。そうやって新しい取り組みをすることで前より走れる、前より運動強度が高くなるなど変化が生まれると思うので、食事も含めて取り組んでいくことで、自分の体がアスリートとして変化していくことを楽しんでほしいです。

上村愛子さんの Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
「明日笑うために今日頑張る」という言葉が好きです

■競技人生の中で忘れられないシーンは?
現役時代のことだったら、最初の五輪とか総合優勝した試合とかひとつには選べないですが、引退した今になって思うのは、現役として最後に出場した全日本の試合です。あれから時間が経って思い返してみると自分が選手ではなくなったのはあの日だったんだなと感じるようになりましたね。

■リラックス方法は?
もともとリラックスすることが得意なので、逆に仕事をするときにスイッチを入れるような感じです。リラックスしている状態から今日はどんな自分でいたいかなと考えてからお仕事に望むようにしています。現役時代はピリピリする時間が多かったり、気持ちが入りすぎてしまうことがあったので、レース前は音楽を聴いたり、家ではお風呂につかって気持ちを落ち着かせるようにしていました。あとは時々、ひとりになる時間を大事にしています。

■これからの目標は?
やっぱりスキーはすごく楽しくて、選手をやっていたから身についている技術、スキーを走らせて風を自分が感じたり、スピード感をもって速く滑ることもゆっくり滑ることもできるのはやっぱり宝物だなと思っています。冬になって雪が降ってくれて、スキー場がオープンしたら今年も滑りに行こうと毎年できる人でいたいです。

■上村さんにとってスキーとは?
スキーなしの人生はちょっと考えられないですね。あの場を滑りたいと思うから何かチャレンジしようと思えるというか、スキーのことを考えると元気でいようと思うし、スキーがない自分はいないんじゃないかなって思うくらいです。これからも冬に雪が降るのが当たり前であってほしいです。

上村愛子さんが今食べたい菌勝メシ

コメント

現役中は運動量が多かったため、日々しっかり身体をリカバリーできるようバランスの良い食事を意識しており、それによって疲労感の軽減や精神面にも良い効果があったと思います。また腸の健康も意識していて、きのこは良く食べています。こちらのメニューは栄養バランスがよく、細かく刻むことで腸活への効果もさらに高まりそうですね。

菌活キーマカレー

スポーツに取り組むための身体づくりには、エネルギーや筋肉などの素となる三大栄養素と、三大栄養素の代謝を促すビタミンやミネラルといった潤滑栄養素が大切です。きのこには潤滑栄養素が豊富なため、効率的な身体づくりに役立ちます。

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profile

上村愛子

(うえむら あいこ)

1979年12月9日生まれ、兵庫県伊丹市出身
長野県白馬村で育つ。
フリースタイルスキー・モーグルの第一人者として長年に渡り活躍。
高校3年生だった1998年に長野オリンピックに出場、以後2014年ソチまで5回連続でオリンピックに出場。すべての大会で入賞している。
2007-2008シーズンのワールドカップでは総合優勝、2008-2009シーズンの世界選手権ではモーグル、デュアルモーグルの2冠達成。
2014年3月、引退を表明。同月の全日本選手権で8度目の優勝を果たし有終の美を飾った。
引退後は幅広く活動。2022年、イラストを手がけた『ゆきゆきだいすき』を出版。

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