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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第17回 水泳・大橋悠依選手インタビュー

2022.04.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第17回 水泳・大橋悠依選手インタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。第17回はTOKYO2020の水泳、個人メドレーで2冠を達成した大橋悠依選手に登場いただきます。日本代表入りは21歳と水泳界では“遅咲き”でしたが、大学3年からの急成長の裏には食生活の改善がありました。そして自ら「心配性」と語る性格から導き出された大橋流の準備術にも注目です。

まず、大橋選手が水泳を始めたきっかけを教えてください。

小さい頃だったのであまり記憶にないのですが、姉が通っているのを見に行っていて、その流れで始めたと思います。私は身体があまり丈夫ではなかったので、両親が水泳をしたら強くなるのではないか、という期待も込めて始めさせたようです。

水泳の記録は順調に伸びていったのでしょうか?

小学校2年生ぐらいで選手コースに上がってからは1年ちょっとでジュニアオリンピック(JO)のタイムを切れました。それ以降も伸び悩むことはなかったですが、全国では全然上位の選手ではなくて、決勝に残ることもなかったです。

水泳選手は早熟のイメージがあり、中高生の時から代表入りする選手も多かったと思いますが、大橋選手はどのように見ていたのでしょうか?

単純にすごいなって。当時は自分が代表に呼ばれるような立場でもないと思っていましたし、焦りもなかったです。別世界のすごい人たち、みたいな印象でした。

もちろん、オリンピックに出たいという気持ちはありましたが、まだぼんやりとしたものでした。はっきりと現実的になったのは、2016年のリオ五輪の選考会の時に400m個人メドレーで3位になった時ですね。次こそは、という感情が出てきました。

40人中40位という記録が残っている大学2年時の大スランプについて、貧血も原因のひとつだったとうかがいました。貧血の症状は急に表れたのでしょうか?

高校時代まで1度もなくて、大学に入ってから突然でした。食べる量は変わってないのに、練習量が桁違いに増えたことが関係していたのだと思います。

貧血は、血液中にあるヘモグロビンが少なくなることだけではなくて、貯蔵鉄という、肝臓に貯蔵されている鉄分も関係しているのですが、大学1年の時はその貯蔵された分も使ってしまっていて、それがいよいよ底をついて、症状に表われたのだと思います。

具体的にはどのような症状があったのでしょうか?

思い返すと「階段を登るのもきつかったかも」くらいで、わかりやすい症状はなかったんです。水泳で言うとスタートして、浮き上がってきたら、すでに200mとか泳いだ後みたいな疲労感で、身体が重くて、思うように動かない。その時はおかしいなと思いつつも、原因がわからなくて……。あとからお医者さんに言われたのは「アスリートはもともと普通の体力じゃないから、日常生活はできてしまう」ということで、一般の方より気づきづらいそうです。

ですから、自分自身も、周りの人もなかなか身体の中の不調に視点がいかなくて、そんな状態で半年ぐらい練習していましたね。「やっぱり気持ちの問題なのでは」と言われたこともあって、それは結構しんどかったですね。

貧血を経験して変わったことはありますか?

やはり食事への意識は変わりましたね。とくに鉄分が多いと言われている、シジミ、アサリといった貝類やひじきなどは毎日欠かさず食べていました。何か足りないなと感じた日は、自分でも料理をつくりましたし、母親も実家からクール便で送ってきてくれるなど協力してくれました。

ただ、貧血になる前からも、できるだけバランスの良い食事を摂ることは意識していました。練習量が増えるとすぐに体重が減ってしまうタイプなので、3食に加えて練習前後などにこまめに補食を摂るようにもしています。

別のインタビュー記事で、苦手だったきのこを克服したと読みました。きのこに挑戦しようと思ったきっかけがあったのでしょうか?

社会人になってからの話なのですが、練習帰りによく食べに行くお店のマスターが、(栄養のことを考えて)品数をたくさん出してくれるのですが、その料理にきのこが多くて。栄養のことを考えてつくってもらっている以上、残せないなと思って食べ始めたのがきっかけです。

今では、きのこは食物繊維やビタミンが豊富に含まれていて、体調管理やコンディションを整えるためにも、アスリートにとって必要不可欠な食材だと思っています。

たとえば国立スポーツ科学センターの食事でもきのこは絶対に使われているのですが、それだけ重要な、必要なものだということ。アスリートにとって身体を大きく、強くするということも大事ですけど、身体の調子を整えるというのもかなり重要なので、その面において、きのこが必要なのかなって。自分でつくる時もお鍋や味噌汁にきのこを入れるのが好きです。

食物繊維といえば腸を整えるイメージが強いですが、身体の調子を整えるという点で、腸について意識したことはありますか?

試合の日とかは特にですが、調子が悪いという状態をつくりたくないので、腸もいい状態を保っておきたいと思っています。

先ほど補食のお話もありましたが、レースとレースの間に何か食べたりはするのですか?

レースとレースの間に、ダウンと言って軽く流したりしながら泳ぐのですが、その時にエネルギーゼリーなどをとります。次まで15分とかしかない時はジャージのポケットに忍ばせておいたり、トレーナーさんにマッサージを受けている間にサッと飲んだりもしています。その日のレースのためでもありますが、そこでしっかり補給しておかないと、次の日に影響しちゃうと思うので、補食は意識していますね。

大橋選手は栄養についてご自身で勉強もされて、アスリートフードマイスターの資格を取得されているのですね。

もともと栄養に興味があったのですが、私はアレルギーをもっていましたし、それこそ貧血になったっていう経験もあって、自分でできる範囲で勉強したいなと思って取り組みました。競技生活においてもプラスになっていると思います。

目標であり夢だった五輪で金メダル。モチベーションを含めた気持ちの面での変化はありましたか?

オリンピックまでは自分の感覚が本当に合っているのか手探りでした。それが、ちゃんと結果に出たことで、自分が良いと思ったことを信じられるようになれました。そして、自分の一番良い泳ぎの感覚というのは好きなので、それをもう1回したいというか、それを超えるような、泳ぎをもう1回したい。それが今のモチベーションですね。

大橋さんの泳ぎ方は「きれい」と評されますが、意識はしていますか?

そのために泳いでいるわけではないですけど、泳ぎがきれいと言われるのはとても嬉しいです。もともとパワーがあるタイプではないですし、抵抗の少ない泳ぎが多分一番速いと思うので、それを突き詰めていった結果、今の泳ぎになりました。

今後の課題、取り組みたいと思っていることはありますか?

過去のケガの影響もあって、身体の左右差が大きくなってしまっていて、バランスが少し良くないと感じています。完全に左右差をなくすというのは難しいんですけど、もうちょっと弱い方を強い方に近づけたいと思っています。

夢に向かって頑張るジュニアアスリートたちへメッセージをお願いします。

アスリートはメンタルが強い方が良いと思われていますよね。でも私個人としては、不安なこと、心配なことを自分でわかる方がいいなと思っています。それに対して対策ができれば問題はないわけですし、自分で考える力、準備する力が養えます。だから緊張とか、心配とか、不安とか、別にあってもいいのかなって。

私はかなりの心配性なので、隣を泳ぐ選手がどういうレースをするのか、個人メドレーの場合はどの種目が得意で、どの種目が不得意なのか、前半から行くタイプなのか、平泳ぎから上がってくるのかなどを、かなり入念に調べて事前に頭に入れておきます。そして、レースのいろいろな状況、展開をシミュレーションしておきます。そうすることで、たとえばいま並ばれても焦らないで大丈夫とか、次のターンからこういけば多分勝てるなとか、レース中にも対応することができるんです。

自分のこの心配性で、いっぱい考える性格は、競技においてかなりプラスになっていると確信しています。だから、子どもたちには、悩むことや迷うことは悪いことじゃないし、弱いことじゃないよ、って伝えたいですね。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

最後に、ジュニアアスリートたちへ、食事の面でのアドバイスをお願いします。

たくさん食べることも重要ですし、できるだけ、栄養素的に抜け落ちるところがないようにいろんなものを食べた方がいいですね。あとは、早食いはやめた方がいいかな。身体への負担がかなり大きいですし、太る原因にもなります。同じ量でもゆっくり食べるだけで変わりますから、そこは意識してほしいと思います。食事も大切にしながら、頑張ってほしいですね。

大橋選手の Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
小学校か中学校の時の学級通信の題名だった「意志あるところに道は開ける」っていう言葉が好きです。

■競技人生のなかで忘れられないシーンは?
(代表入りにあと一歩まで迫った)2016年のリオ五輪の選考会の400個人メドレーのレースです。翌年の世界選手権で初めてメダルを獲り、次はいよいよ頂点へ、という道を目指す上でのターニングポイントになる試合でした。

■リラックス方法、切り替え方法は?
男の子のでも、女の子のでも、アイドルがすごく好きなので、ライブ映像とか見たり、歌を聴いたりしています。

■これからの目標、目指す姿は?
自己ベストを更新することがまず一番の目標です。あとは、オリンピックの金メダリストとして、注目してもらえる機会も多いと思うので、それに見合った姿を何かを目指す子たちに、レースでも、そうじゃないところでも、見せていけたらいいなって思っています。

■大橋選手さんにとって水泳とは?
水泳は自分の合っているスポーツです。他のスポーツができないので、身体的な特長はもちろん性格も、水泳に向いているなって思います。持論ですが、泳ぎ方にはその人の性格が出ます。やればやるほど、年齢を重ねるほど色濃く出てきますから、おもしろいですよ。

大橋選手が今食べたい菌勝メシ

コメント

バランスの良い食事を意識しているので、多くの栄養素をまとめて摂取できるところがいいですね。きのこは体調管理やコンディションを整えてくれる印象がありますし、スープは内臓を温めてくれるので、練習で疲れている時にも嬉しいメニューです。

春野菜ときのこのトマトスープ

エネルギーチャージを助けるアスリートメニュー。きのこに豊富なビタミンB1が糖質の代謝を促し、玉ねぎに豊富な「アリシン」がビタミンB1の効果を高めます。また、きのこの食物繊維やトマトのビタミンCが身体ケアもサポートし、内側から整えます。

詳しく見る>

profile

大橋悠依

(おおはしゆい)

1995年10月18日生まれ、175cm

イトマン東進所属、滋賀県出身。
姉の影響を受けて幼稚園の時に水泳を始め、小3の時に50m背泳ぎで初めてジュニアオリンピックに出場。高校時代には滋賀県記録を次々に塗り替えて東洋大学へ。2年時に貧血に見舞われるも、それを克服し、翌2017年に初の世界選手権代表入りを果たす。日本のエースに成長し臨んだ2021年東京五輪では400mと200mの個人メドレーにおいて日本競泳女子史上初の2冠に輝き、紫綬褒章も受章した。競泳にストイックに打ち込む一方、アイドル好きという一面も。故郷彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」も好き。

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