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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第16回 スポーツクライミング・野口啓代さんインタビュー

2022.03.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第16回 スポーツクライミング・野口啓代さんインタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。第16回は東京五輪の新競技スポーツクライミングの女子複合で銅メダルを獲得し、現役を引退した野口啓代さん。彼女のキャリアは競技の歴史そのもの。第一人者が語る、スポーツクライミングの過去と未来、そして「体重管理のためではなく、体調の管理のため」と語る「食事」についてお話をうかがいました。

野口さんがクライミングをはじめたのは11歳の時と伺いましたが、どのようなきっかけだったのか教えてください。またその1年後にはU-18の大会で優勝されていますが、当時、自分の優れていた点は思い当たりますか?

きっかけは小学5年の時に家族旅行で行ったグアムのゲームセンターでクライミングをしたことです。日本に帰ってからも続けて、小学6年の時から全日本のユース大会に出場するようになりました。
私は運動神経が良くなくて、他のスポーツではクラスの一番になるみたいなことすらなかったんですが、クライミングは最初から割と得意で、自分に向いているスポーツがあるんだなと感じました。

中学生の時から世界大会に出場されたり、高校の時には日本チャンピオンになったりもされていますね。その時のことで印象的なことなどありますか?

中学2年生からユース世界大会に出場したり、私がちょうど高校1年生になった年からジャパンカップが始まって、その第一回から出ていたりしましたが、私のキャリアのなかで本当にターニングポイントになったのは、16歳の時に初めて出た世界選手権でした。
それまでもユース世界大会には出場していましたが、その時に初めて日本代表として世界大会に出場させてもらえて、日本の国旗を付けて代表として出るのだから恥ずかしい登りはできないとか、ビリにはなっちゃいけないとか、予選落ちしたら合わせる顔がないなとか、そういったことが気になるようになって、急に日本代表というところに責任を持つようになりました。それで、初めての世界選手権のリードの種目で3位表彰台に上がれたことがきっかけで、もっと世界大会で活躍したいとか、ワールドカップで優勝して世界一になってみたいなと思って、毎年たくさんの世界大会に出場するのがルーティーンのようになりましたね。

提供:TEAM au

キャリアを重ねていくにつれて、メンタル面での変化もありましたか?

そうですね。初めてワールドカップで優勝できたのが19歳の時でしたが、それまでは自分が追う立場でしたが、国内で連勝したり、ワールドカップで優勝して年間チャンピオンを獲ったりして初めて「負けられないな」とか「落ちられないな」とか、そういったプレッシャーを感じるようになりました。追う立場よりも追われる立場になってからのキャリアの方が長かったので、そういったプレッシャーはすごく感じていましたね。

クライミングは体重管理も大事という印象がありますが、食事の面で気を付けていることはありましたか?

私はあまり体重は気にしていませんでした。クライミングは軽い方が有利とか、太っていたらできないと思う方も多いかもしれませんが、全然そんなことはないんです。自分の身体を一番コントロールできる自分のなかでのベスト体重があると思います。

もちろん、食事の内容って自分のパフォーマンスに直結しますよね。それこそ睡眠の質や集中力に直結するので、食事の内容には気を付けていますが、体重については実際に登ってみて自分が軽く感じるか重く感じるのかを重要視していました。私の場合、「体重」管理ではなく、「体調」管理でしたね。

また私の場合は、今でも高校生の頃と体重が全く変わってないんです。体形はすごく変わりましたが、体重は変わらない。スピード(種目の中のひとつ)をやるようになって下半身の筋肉がついたとか、高校生の頃よりも腕が太くなったとか、筋量が増えたとかはあるんですが、体重自体は全然変わらない。それは毎日のように登っていて、毎日自分の身体を扱っていたからだと思います。

年齢を重ねるにつれて、食事の量に変化はありましたか?

3種目をやるようになってからは本当にエネルギーの消費が激しくて、食べていないと間に合わなかったですね。ひとつの大会が終わると体重が1キロとか落ちてしまう。それだけ消費していたので、がんばってタンパク質を入れないとベスト体重から落ちてしまう状態でした。

提供:TEAM au

コンディション維持のために意識的にとるようにしていたものはありますか?また、特に好きな食べ物があれば教えてください。

たくさんありましたが、意識していたのは基本的にはバランスよく食べることでした。ちなみに禁止していたものは一切ありません。
(食べ物については)割と何でも好きですけど、やっぱり和食が好きですね。海外に長いこと行き来して、より日本食が好きになりました。お寿司も好きですし、出汁の味も好きです。海外にはお味噌汁や醬油を持っていきましたし、日本に帰ってきたらお茶漬けとかうどんとか食べたいなと思いますね。
また、きのこも好きでよく食べます。すごく味が出るものが多いので、それこそお鍋を食べて翌日におじやにするとか、そういう日本食がすごく好きです。きのこはグラタンだったり、ドリアに入れることが多いですし、炒めてもいいし、いろんな食べ方がありますよね。

海外では自炊もしていたのですか?

そうですね。以前はアパートを借りて自炊をしながら滞在することもありましたが、最近は日本チームでの行動が多く、自炊することはなくなりました。自分で作ったり選べた方が塩分を抑えたり、食事の種類も充実しますが、今は日本チーム自体の体制もしっかりしていますし、競技に集中できる環境ではあると思います。

そういった環境の充実は、これから野口さんが活動していくなかで目指していくところでもありますね。

日本は世界的に見ても強い国ですが、そういったところの体制は充実させていきたいですね。また、(目指していくところとしては)スポーツクライミングはオリンピックで初めて行なわれた追加種目くらいのレベルなので、もっとオリンピックのなかでも人気種目にしていきたいなと思います。自分が苦労したとは思っていませんが、これからの日本人選手やユースの選手に対して、本当にサッカーや野球のような待遇ができるような種目になってくれればいいなと思いますね。

最後に、これからクライミングに挑戦する方たちへのメッセージをお願いします。

私にとっては役目であったり、自分が好きなこと、活躍できる場がクライミングでしたが、それは人によってなんでもいいと思っています。私はたまたまグアムのゲームセンターで出会いましたが、子供のうちはたくさんのものにチャレンジしたり、得意不得意に関係なくいろいろやってみて、出会いをもってほしいと思いますね。私はスポーツが得意なわけではなかったのにアスリートになったりオリンピックに出たりと意外なところに来ましたからね。これは家族旅行でグアムに行ってクライミングのゲームをやらなかったら始まらなかったことだと思うんですけど、そういうことって日常にすごくたくさんあると思います。なんでもやってみたら案外はまったりするので、いろいろ挑戦してもらえたらと思います。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

ジュニアアスリートやそのご家族、コーチへ食事の面でのアドバイスもいただけますか?

今になって思うこととしては、疲労回復など「食事」で改善されることも多いので、もっと知識を深めて競技に臨めていたら、と思うことが沢山あります。そういう意味では、大人が正しい知識をもとにした食生活を、子どもと一緒に送ることは大切だなと思います。子どもたちへ伝えるのでしたら、一番は健康でいること。よく食べてよく寝てよく動こう、ですかね。

提供:TEAM au

野口さんの Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
現役中に自分に言い聞かせていたのは、「自分に負けない」でした。クライミングは対人競技ではなくて、本当に自分との戦いなので、大会で優勝したいとか、誰に勝ちたいという以前に、自分に負けないような生活やトレーニングをしようとずっと思っていました。大会本番に自信がないとか不安なのは、どれだけ自分が練習してきたか、準備してきたかがメンタルに出てしまうので、やってきたから大丈夫という気持ちで毎回臨みたいなと思っていたので、まずは自分に負けない毎日を過ごそうと思っていました。

■競技人生のなかで忘れられないシーンは?
ふたつあります。ひとつは2019年にオリンピックの内定を決めた世界選手権、八王子の大会です。もうひとつが昨年のオリンピックの決勝の日です。どちらかというと、世界選手権で内定をもらった日のほうが大きいですね。オリンピックに出られるか出られないか、というところをずっと気にしてやってきたので。

■リラックス方法、切り替え方法は?
2018年から飼っている猫です。私にとって初めて自分で飼うペットで、トレーニングから家に帰った時に猫が待っていてくれるのが癒しでした。家でもずっとクライミングのことを考えてしまっていましたが、クライミングとはまったく関係ない猫がいるのがすごく私にとって癒しでした。家族に会っても、家族もみんなオリンピックを目指すのは知っていますけど、猫は私がオリンピックに出ようが出まいが全然関係ないですからね。

■これからの目標、目指す姿は?
競技のほうで第一人者と言われてオリンピックまで競技をやらせていただきましたが、セカンドキャリアでも第一人者と言われる存在になりたいなと思っています。クライミングの普及であったり、後進の育成もそうです。今のスポーツクライミングの選手たちは、引退したら何をするのかがあまりイメージできない状況だと思うので、私がセカンドキャリアでいろんなお仕事をしたり、クライミングを有名にしたりという姿を後輩たちに見せることで、引退してからもいろんなことができるなと思ってもらえるような目標になれたらと思っています。

■野口さんにとってクライミングとは?
自分を変えてくれたものですし、自分に役目をくれた存在だなと思っています。これまでもそうですし、これからも。クライミングのおかげで今の私があります。

野口さんが今食べたい菌勝メシ

コメント

私はお米が好きなので、普段のトレーニングでも補食におにぎりを取り入れていました。パフォーマンスが落ちないよう栄養バランスを心がけていて、お肉やきのこが入ったおにぎりは食べ応えもあり、たくさんの栄養が手軽にとれて良いですね。

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profile

野口啓代

(のぐちあきよ)

1989年5月30日生まれ、茨城県出身。165㎝

TEAM au所属
小学5年生の時に家族旅行先のグアムでフリークライミングに出合う。翌年行なわれた全日本ユース選手権で中高生を抑え、いきなり優勝。その後もクライミングで重要な保持力と呼ばれるホールドをつかむ指先の強さを武器に、国内ではジャパンカップは9連覇を含む優勝11回、海外では2008年のワールドカップボルダリング種目では日本人として初優勝。さらに09年、10年、14年、15年と年間総合優勝を成し遂げた日本クライミング界の女王。初めてのオリンピックとなった東京2020を最後に、現役を引退。

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