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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第15回 車いすラグビー・倉橋香衣選手インタビュー

2022.02.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第15回 車いすラグビー・倉橋香衣選手インタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。第15回は車いすラグビー日本代表の倉橋香衣選手が登場。頸髄損傷という大ケガを乗り越え、前向きに、そして真剣に車いすラグビーに取り組む彼女はどんな女性なのでしょうか。そして彼女を夢中にさせた車いすラグビーの魅力とは? パラアスリートだからこその食事や体調管理における気遣いとともに伺いました。

まずは、昨年のパラリンピックを振り返って、銅メダルという結果をどのように捉えられていらっしゃいますか?

悔しい気持ちの方が大きいです。自分たちは金メダルを目指してやってきて、そこに届かなかったので。でも大会が終わった後に、たくさんの人からお祝いの言葉をもらって、徐々に喜べるようになったというか、銅メダルを持って帰ることができてよかったと思っています

ご自身のプレーを振り返ってみると?

まだまだ迷うことも多かったですし、角度とか動きとか、細かな反省点を挙げればきりがありません。パラリンピックに限らず、できた!って満足することの方が少ないですね

倉橋選手は小学生の時に器械体操を始め、大学3年生の時、トランポリン中の事故で頚髄損傷という大ケガをされたとお伺いしました。車いすラグビーとの出会いや印象はどのようなものでしたか?

退院してから自分で生活をするための訓練をする施設(寮)に入ったのですが、そこに車いすラグビー部というのがあったんです。人数が少ないし一度見に来たら? と声掛けられて、体育館で見たのが最初ですね。その時は見たのは試合ではなく、寮に入っている2~3人がラグ車(競技用車いす)に乗ってガシャーンってぶつかり合っている姿でした。何より、ぶつかっても怒られないでいいなぁって思って、そこから自分も乗りたいって思うようになりました

ぶつかり合っているのが楽しそうに見えたのですか?

はい。車いすで生活を送る上では、つねに周囲にぶつからないように気を遣わなければなりません。周りの人をケガさせてしまうこともありますし、自分も車いすから落ちたらどうしようもなくなってしまうので、当たり前ですけど、壁とかに激突するとすごく怒られます。危ないことをしてはダメ、と言われ続けてきました。ですが、車いすラグビーだったら怒られない。そのことがとても魅力的に思えました

再びスポーツを始めること、特にそれが車いすラグビーとなると、周囲から心配の声もあったのではないでしょうか?

競技自体というより、実家のある関西から離れて生活することを周りは心配していたかもしれません。大学に復学し、関東のクラブチームに入ることになったので。母としては、私の性格からして反対したところで我を通すだろうし、やるならちゃんとやりって感じだったと思います。私のほうも、パラリンピック(2016年・リオ大会)直前ということもあり、車いすラグビーがメディアに取り上げられるという情報を仕入れては、テレビや新聞記事に出るらしいよ、と親に教えて競技のことを知ってもらおうとしていましたね

チームに入って、実際にプレーしてみた印象はどうでしたか?どのようにご自分のポジションをつくっていったのでしょうか。

球技をやってこなかったので、他の人のことを考えた動き方というのが、全然わからなくて苦労しました。ただ、ちょっとした車いすの向きが重要だったりするので、少しずつ自分にできることを見つけていきましたね。
チーム全体で心がけていることですが、自分はとくに皆よりスピードがない分、次に何が起こるか考えて、先に先に動き出し、それをやり遂げることを意識しています。迷っていると局面はどんどん進んでしまいます。仮に判断が間違ったとしても、それをきっかけに周りの4人が動き始める(車いすラグビーはコート上で4対4で戦う)ので、自分はとにかく最初のプレーを迷わず、速く判断すること。その精度を高めていくことが課題ですね。監督からももっと賢くプレーしろと言われています

倉橋さんのプレーの見どころは?

私の役割は、味方が走るコースやパススペースをつくるために相手をブロックしたり、車いすから突き出たバンパーで相手を引っかけたりして妨害したりすることです。相手の動きを読んで、バンパーを出す角度やタイミングがうまくはまれば、相手のエースを転ばせることもできるんですよ。それができなくても、味方がトライにつながればうれしいです

東京五輪の映像からも、倉橋さんのエネルギー溢れる様子が伺えますが、食事面で気を遣っていることはありますか?

代表に入ったくらいからどんどん食が細くなってしまって、いまは食べることを頑張っている感じです。栄養士さんから色々教えてもらって栄養バランスも考えてはいるのですが、まずはカロリーを取らないと。疲れてしまうと食べることすら面倒臭くなることもあるので、3食しっかりというより、ちょこちょこ小分けにして食べるようにしています。実際に、ちゃんと食事を取ると、次の日の疲れやプレーに影響が出ることは実感しているので、続けていきたいです

昔からあまり食べない方でしたか?

いえ、ケガする前までは、暇さえあれば食べていて、太り過ぎてよく怒られました。まさかこんなことで悩むなんて(笑)。
昔、誕生日に何食べたい?と聞かれた時には“ひじき”と答えたようで、大きなお皿に大量に盛ってもらって1人で食べたらしいです

ハンバーグや唐揚げ・・とかではなかったんですね。

はい。昔から煮物などが好きでした。今もわりとさっぱりしたものが好きなので、野菜とかきのことか好きでよく食べますね。今は一人暮らしなのですが料理もあまりできないので、いろいろな種類の野菜ときのこを甘辛くしたものを母にいっぱい作ってもらって送ってもらい、冷凍庫に保存しています

野菜もきのこも食物繊維が豊富な食物ですね。アスリートには腸内環境も重要といわれていますが、倉橋さんは腸の状態で意識していることはありますか?

私たちは麻痺の関係で排便が難しいので、とても意識しています。私の場合は週1回か2回を排便日を決めて、それに向けて調整していますが、排便日までに食べた物、活動状況によって、排便にかかる時間が全然違います。調子がよければ2時間ほどなのですが、長い時は6時間以上かかることもあります。何をどれくらい、どのタイミングで取るのが自分に合っているのか模索していて、食べる物にも気を遣っています。そんな中で、栄養士さんやチームメイトから腸に良い食材を教えてもらった中にきのこもあったので、母にも伝えて意識して取るようにしています

いろいろ考えて食事をつくってくださるお母さまに感謝ですね。

本当に。私が食べやすいように、そして栄養面を考えて準備するのは、絶対に手間暇がかかるはずです。子どもの頃からずっと応援してくれていたと思いますが、食事面のサポートを受けて、改めてその思いが伝わってきて、より頑張ろうって思います

改めて、車いすラグビーの魅力はどのようなところにあると思いますか?

車いす競技の中で唯一、ルールでタックルが認められている競技、ということが一番ですね。それから四肢に障害がある、という括りはありますが、障害のレベルも全然違うし、同じ障害レベルでも、できること、できないことがあって、そういうところをお互いが認め合い、補い合ってトライをめざすところ、男女も関係なく、コートの中だったらみんな公平にプレーできることも、この競技の魅力だと思います

女性選手はまだまだ少人数だと思いますが、やはり女性にはハードルが高いのでしょうか?

私自身も興味を持ってから本格的に競技を始めるまで、1年くらいかかりました。怖いとかではなくて、自分が入って邪魔にならないか、こんなレベルところにいてよいのか、と感じてしまって。ですが、実際入ってみるとみんな温かいんです。強さや激しさに憧れるのとは別に、なんか楽しそう、くらいの雰囲気で入って来られるような環境づくりができたらと思っています。
小学校などで体験会などを開催すると本当に盛り上がるので、機会があればまたやりたいですね。パラスポーツですが、健常者であっても車いすに乗ればできちゃう競技なので、みんなで楽しめます。そういう機会が増えていけば、自然と競技人口とかも増えるかも、とちょっと期待しています

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

最後に、子どもたちに対して、身体づくりや食事面でアドバイスをお願いします。

私はもともと好き嫌いがなかったですし、母も料理が得意な方でだったので、たくさん品数をつくってくれていました。だから今まで健康に過ごせてこれたと思います。
ですが、まず皆さんに伝えたいのは、食べることを楽しむことが一番だよ、ということですね。誰かと一緒に食べると、食事が楽しいという経験は皆さんあると思います。栄養バランスを考えようとか、好き嫌いはダメとか、もちろん大事ですが、まずは食事を楽しんでほしいと思っています

倉橋選手の Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
「楽」っていう字は大切にしています。楽しいから頑張れるし、頑張っていたら楽しいこともあるし。いろいろあっても、気楽にいこう、楽しもうと思っています。

■ストレス解消法やリラックスの方法は?
コロナの状況によって左右されますが、旅行とか。動物が好きなので、動物園とか動物がいるところによく行っていました。実家にも犬と猫がいて、コミュニケーションをとっています。うちの猫はかなり狂暴ですが、それでも癒されます

■忘れられない試合は?
パラの準決勝、イギリスに負けた試合ですね。試合後の感情は今までないくらいぐちゃぐちゃでした。でも、そういった気持ちの積み重ねが、競技をする上で大切なんだと思います。

■これからの目標、目指す姿は?
女性だけの車いすラグビー大会を日本で開催したいです!

■倉橋さんにとって車いすラグビーとは?
生き甲斐とかそういう感じではなく、本当に競技として「楽しいスポーツ」だと思っています。試合は特に。それからたくさんの知識と経験、出会いをくれました。私の世界を広げてくれるものです。

倉橋選手が今食べたい菌勝メシ

コメント

一度に沢山食べることが難しく複数回に分けているので、栄養バランスを特に意識しています。また、身体が不自由な分、腸の状態にも気を遣っているので、このメニューは一品で栄養バランスがよく、食物繊維の豊富なきのこも沢山入っているので嬉しいですね。

きのこで菌活!うま塩鶏うどん

きのこに豊富な食物繊維は、全身の免疫細胞の約7割が集まる腸を整えて、全身の健康づくりを応援します。また、高タンパク低脂肪の鶏肉とビタミンやミネラルなどの潤滑栄養素が豊富なきのこを合わせることで、カロリーは抑えつつも運動に必要な栄養素はしっかり確保できます。

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profile

倉橋香衣

(くらはしかえ)

1990年9月15日生まれ、兵庫県出身。

商船三井/AXE所属
小学生から器械体操を始め、大学ではトランポリン部へ。3年時、練習中の事故で頸髄を損傷し、鎖骨から下の感覚を失うも、リハビリに励み、2014年に大学へ復学。2015年に車いすのクラブチームへ加入し、競技生活をスタートさせると、2年後、日本代表に選出、翌年の世界選手権では日本の初優勝に貢献した。先の東京 2020でも銅メダルを獲得。初めてかつ唯一の女性の車いすラグビー日本代表として存在感を放ち続けている。

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