【きのこを旅するvol.9】切手に置物、チョコレート…さまざまな姿でわたしたちを楽しませてくれる「きのこ雑貨」
2024.02.01
2月を迎え、バレンタインデーの時期となりました。家族や恋人、自分自身、上司や同僚など、どんなチョコレートを贈ろうか考えるのもこの時期の楽しみの一つかもしれません。
チョコレート売り場を覗いてみると、「きのこ」をモチーフにした国内外のさまざまなチョコが販売されていることに気づきます。実はチョコレートにとどまらず、きのこをモチーフにしたりきのこからヒントを得たりして作られた生活雑貨やオブジェが多数存在しています。その理由は、きのこがひとえに「さまざまな形」、「さまざまな色」をもつ非常に多様性に富んだ存在だからかもしれません。
そこで今回は、身の回りに広がる、さまざまな姿かたちをしたきのこの世界をご紹介していきます。
これもきのこ?!世界に存在する一風変わったきのこの数々
きのこ雑貨を紹介する前に、人々の創造性をかきたてる、さまざまな形・さまざまな色を持つユニークなきのこの世界をご紹介します。
世界には、確認されているだけでも数万種類のきのこがあり、確認できていないものも含めると数百万種類ものきのこが存在するのではないかと推定されています。そのなかから、中でも異彩を放つきのこの数々を紹介します。
ヤマブシタケ(Lion’s Mane, Hericium erinaceus)

まずは形が特徴的なきのこ「ヤマブシタケ」。ブナ林などに発生するきのこで、日本では「ウサギタケ」や「ハリセンボン」と呼ぶ地域がある他、海外では「ライオンのたてがみ(Lion’s Mame)」という異名をもちます。白色の柔らかい針状の突起が地面に向かって垂れ下がっており、大きい個体は20cmにも及ぶそうです。
アカカゴタケ(Latticed Stinkhorn, Clathrus ruber)

次は、草地や庭などに発生する、色も形も特徴的な「アカカゴタケ」。発生当初は直径2cmほどの白色の球体状をしており、成熟すると白い表皮が裂けることで鮮やかな紅色をした籠状のきのこが現れます。独特な臭いで昆虫を引き寄せ、昆虫に胞子を付着させることでより遠くまで胞子を運べるよう進化したきのこです。
キヌガサタケ(Veiled Lady, Phallus indusiatus)

次は、優美な姿から「きのこの女王」という異名をもつ「キヌガサタケ」。朝になると釣り鐘型の傘(写真の黒い部分)から、数時間かけて網状のマントのような菌網を垂らします。同日の夕方には萎れてしまうという儚いきのこでもあります。
Birds Nest Fungi

Nidulariaceae Dumort(Photo by Liz Popich)
次は直訳すると「鳥の巣のきのこ」と呼ばれるBirds Nest Fungi。傘のなかに複数の小皮子をもつ二重構造をしたきのこで、まるで鳥の巣のなかに卵があるように見えるため、このような名前で呼ばれています。オーストラリアや南米などで見ることができます。
ラクタリウス・インディゴ(Indigo Milk Cap)

ラクタリウス・インディゴ(Photo by Dan Molter)
最後は、鮮やかな青色が美しい「ラクタリウス・インディゴ」。「はつたけ」の一種で、日本だけでなく、北アメリカ、東アジア、中央アフリカなど、世界の広い範囲に発生しています。パラボラアンテナのような青色の傘は粘着性をもち、空気に触れると緑色に変化します。
このようにきのこには多種多様な種類が存在し、なぜそのような形・色に進化したのか解明されていなものが沢山あります。しかし、理由がわからない、想像を掻き立てるところもまた、きのこが人々を魅了する理由なのかもしれません。
生活雑貨やオブジェなどにみられるさまざまなきのこたち
そこで次は、きのこが模された、さまざまな生活雑貨やオブジェを見ていきましょう。
カファレルのきのこポット

一つ目は、世界で初めてジャンドゥーヤチョコレートを発明し、イタリア王室の御用達となった、イタリアの老舗チョコレートブランド「カファレル」のきのこチョコレート。さまざまな色や模様がデザインされたきのこチョコレートと、容器のきのこポットが有名です。ヨーロッパではきのこはラッキーモチーフとして使用されています。
切手

次にご紹介するのは「きのこ切手」。きのこを描いた切手が最初に発行されたのは、1958年のルーマニアです。ルーマニアの属する東欧はきのこ狩りの風習のある地域であり、カラカサタケやコガネホウキタケなど10種類のきのこが切手に描かれています。きのこの切手は東欧から世界へとすぐに波及し、1964年にモンゴルでアジア発のきのこの切手が発行されたのを皮切りに、日本でも1974年に国際食用きのこ会議を記念したきのこの切手が発行されています。きのこのバリエーションの豊富さゆえに、世界各国で広がり、楽しまれてきたのかもしれません。
(株)いきもんのキノコソフトマスコット

個性的なカプセルトイを次々と世に出している(株)いきもんが、きのこをモチーフにした様々なマスコットを販売しています。さまざまな形・色がリアルに表現されたマスコットは子どもから大人まで楽しむことができ、こちらもバリエーションの豊富なきのこだからこそ作り出せる世界です。
レゴ®ブロック「キノコハウス」

レゴ®マインクラフト キノコハウス(Credit by レゴジャパン株式会社)
「よく遊べ(play well)」をモットーに、1932年にデンマークで立ち上げられた玩具会社「レゴ」と、ブロックを組み立てる人気のコンピューターゲーム「マインクラフト」とのコラボで、レゴブロックで作ったきのこハウスを販売しています。世界中で愛される「レゴ」にも登場するほど、きのこの形は子どもにも大人にも愛されていることが伺えます。
ルイヴィトンのバッグ
続いては、おとぎ話に登場するような、きのこをあしらった「ルイヴィトン」のポシェット。21世紀に入りアートとファッションの融合した作品が続々と登場。きのこのポシェットも、ルイヴィトンのチーフデザイナーであるマーク・ジェイコブスと、英国のアーティストであるジュリー・ヴァーホーヴェンのコラボレーション作品で、名だたるデザイナーもきのこに注目していることが伺えます。
きのこファッション
最後にきのこを模したファッションをご紹介します。ファッションというと、近年、きのこは動物性のレザーの代替品として注目を浴びています。菌糸体を培養して作ったきのこレザーの質感は動物性のレザーに似ており、きのこを素材としたファッションを打ち出すため、きのこがもつ「特徴的な見栄え」を想起させる服がファッションショーなどで発表されています。
きのこはなぜここまで多様化したのか

さまざまな形や色をしたきのこが世界各地に存在しますが、なぜきのこはここまで多様化したのでしょうか。未解明な部分が多い分野ですが、京都大学の佐藤氏による、きのこの仲間の大半が含まれる「ハラタケ綱菌類」を対象とした研究では、ハラタケ綱菌類は、白亜紀後期(7000万年前~9000万年前)に被子植物と出会い、地下で共生関係を結んだことがきっかけとなって、急速な種多様化を果たした可能性を示しています。
また他の説では、地下に張り巡らされたきのこの本体である「菌糸」が、繁殖のために自らを四方八方に伸ばす際、周辺の別の菌糸を引き寄せたり、避けたり、重力の影響など環境によって様々なに変化することで、菌糸自体が変化・多様化した可能性が示されています。私たちが普段目にする「きのこ」は、胞子を飛ばすために菌糸が密集してできた「子実体」であるため、菌糸自体が変化することで子実体の形も変化・多様化してきたとも考えられています。
このように、時代の変化に伴ってきのこの生息する環境が変化・多様化することで、きのこ自身もさまざまな形、さまざまな色に進化してきました。同時に、生態系で重要な役割を担う「分解者」であるきのこが多様化することは、地球の進化発展にも大きく寄与してきたと考えられ、きのこの進化を紐解くことは、地球の進化を紐解く一歩といえるかもしれません。
きのこの多様化こそがオマージュ品の源泉
自然の万物は、長い歴史や進化を経て、自然界のルールにしたがって形作られてきました。きのこも同じであり、何億年もの歴史の中で起こる地球環境の変化に伴って、実にさまざまな姿かたちをしたきのこが誕生しています。
こうしたインスピレーションを刺激する多種多様な姿かたちのきのこだからこそ、時代や国を超えて多くの人々を魅了してきたことも、さまざまなきのこ生活雑貨やオブジェが登場していることも、ある意味自然な流れといえるのかもしれませんね。
参考文献
- The numbers of fungi: contributions from traditional taxonomic studies and challenges of metabarcoding
- 13 Bizarre and Beautiful Mushrooms
- 11 Colorful Mushrooms and Other Fabulous Fungi
- A Magical World Of Rare Mushrooms Revealed By Steve Axford
- アカカゴタケ(GKZ 植物事典)
- キノコの女王(マハレ野生動物保護協会)
- 消費者の部屋(農林水産省)
- Birds Nest and Cannonball Fungi(Australian National Herbarium)
- Gianduja 1965
- The Matryoshka Doll in Russian Culture(Macalester)
- The LEGO Group History(LEGO)
- You Aren’t Tripping: Fungi Are Taking Over Fashion
- 奥深いキノコ類の世界(独立行政法人農畜産業振興機構)
- キノコ切手の博物館
- きのこ文学ワンダーランド
- きのこハンドブック 新装版
- 細胞性粘菌のサバイバル : 環境ストレスへの巧みな応答
- 世にも美しい変形菌 : 身近な宝探しの楽しみ方
- 『アート/ファッションの芸術家たち: 21世紀の創造と融合』
- 『サーキュラーデザイン: 持続可能な社会をつくる製品・サービス・ビジネス』
- 『キノコと人間: 医薬・幻覚・毒キノコ』
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