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Do my best, GO! 〜輝く女性たち

第8回 and CURRY主宰 阿部由希奈さん

2021.07.01
第8回 and CURRY主宰 阿部由希奈さん

自分らしさを探求しながらイキイキと人生を楽しんでいる方に、生き方のヒントを伺う連載企画「Do My Best, Go!」。第8回は、店舗をひとつに決めず、あらゆる場所で活動する“流しのカレー屋” 阿部由希奈さんのインタビューをお届けします。

元々は会社勤めをしていた阿部さん。スパイスカレー好きが高じて365日カレーを食べ歩くようになると、とうとう食べるだけに留まらず、自分の手でカレーを作ってひとに振る舞うように。そのままカレーの世界へ没入し、現在はカレーの仕事1本。スタッフ数名と一緒にand CURRYというブランドを育てています。仕事と子育ての両立、大好きなカレーと生きていくために阿部さんが大切にしていることを伺いました。

阿部由希奈さん

“スパイスカレーは優しい” という発見

2017年7月、世田谷区羽根木にカレー活動の拠点としてKitchen and CURRY(キッチンアンドカリー)を開設し、今年で3年。“流しのカレー屋”として活動を始める前の阿部さんは、食べることが大好きな普通の会社員だったそうです。

「とても忙しく働いていたので、少しのんびり働いてみたいと別の会社へ転職をしたのですが、時間ができたらできたで別のことに時間を費やしてしまって、実際はまったくのんびりできませんでした(笑)。そんな時、ふと一週間を振り返ってみたら、毎日カレーを食べていることに気が付いて。それならば、もっとカレーを深掘りしてみよう! と思いついたのです」

軽い気持ちでスタートしたカレー研究。渋谷にある『ネパリコ』というカレー屋の“ダルバート” との出会いが阿部さんをめくるめくカレーの世界へ誘いました。「ダルバートは、ネパールでいうカレー定食。豆のカレーとチキンカレー、そしてスパイスで炒めた野菜の副菜がワンプレートに盛り付けられていたのですが、食べてびっくり。特に豆のカレーは、刺激がほとんどなくまろやかで、まるでスープ! グイグイ飲めるような滋味深い味わいだったのです。こんなに優しいカレーがあるんだ、とカレーの概念がくつ返されましたね」

阿部由希奈さん

そしてSNSを見守ってくれていた知り合いのたこ焼き屋の店主のひと言が、阿部さんの人生を大きく変えることに。「そんなにカレーが好きなら、うちで出してみる? と声をかけてくれたのです。あのひと言がなかったら、“流しのカレー屋”にはなっていないし、今の人生を歩んでいないですね」と振り返ります。

「もちろん、会社員時代も仕事に喜びを感じていましたが、and CURRYは自分でゼロから作ったブランド。自分が“ここだ”と思った農家さんから野菜や米を取り寄せ、それを組み立て、お客様が召し上がった上で対価を払ってくださるというシンプルな仕組みにこそ、商売の面白さを感じています。お客様の“おいしかったよ”という言葉は純度100%の喜びです」とにっこり。ジョブチェンジして5年余り、初めはたった一人でスタートしたand CURRYも今ではスタッフが複数名いるチームに。間借りカレー屋を始めた女性や三人の子どもを持つママまで、支えるメンバーも個性豊かな顔ぶれが揃います。

阿部由希奈さん

野菜不足を解消できるような「健康的な」カレーを

カレーといえば、炭水化物のイメージですが、具材を自由に変えられるカレーはとてもヘルシーな料理。阿部さんがメニューを考えるときのテーマも“健康”といっても過言ではありません。

阿部由希奈さん

「例えば、チキンカレーのメインとなる具材が鶏肉だけ、というお店も少なくありませんよね。でも、Kitchen and CURRYへきたら、たっぷりの野菜と一緒に召し上がっていただきたいと思っています。日々の生活で満足いく量の野菜を摂取するのは簡単なことではありません。だからこそ、ひと皿食べたら普段感じている野菜不足の罪悪感が薄れるようなカレーを作りたい。野菜の副菜も2種類のせているんですよ」

健康的で身体にやさしいカレーを提供したいという思いもあって、野菜は高知の自然栽培農家から旬野菜を仕入れているそう。家庭料理としてのスパイスカレーの可能性も追求しており、7月16日には自身3冊目となるレシピ本が発売になります。
今回の取材では、最新刊『and CURRYのフライデーカレー』から“きのこビーフカレー” を作ってくださいました。牛肉の旨みに負けないきのこの存在感がキラリと光るひと皿です。

阿部由希奈さん

身体メンテナンスは必須。内側からも整える

プライベートでは、2020年2月に女の子をご出産。現在は、育児と仕事を行ったり来たりする多忙な生活をしているそうですが、健康を保つための秘訣は?
「立ち仕事ですし、体のメンテナンスは定期的に行うように気をつけています。若いときは自分の身体に無頓着で勢いだけで働いていたので、健康への意識はここ数年でずいぶんと変わりましたね。ふだんの姿勢なども含め、自分の身体の特徴や弱点を理解した上で動かすことが大事だなぁと思っています」

阿部由希奈さん

また、Kitchen and CURRYのモーニングメニューでは、肉や魚など動物性の食材を一切使わないヴィーガンカレーと米粉で作ったグルテンフリーのパンケーキを提供。これも、朝から身体や胃腸に負担をかけない食事を摂ることを、自身のライフスタイルでも実践しているからなのだとか。

「ヴィーガンを勉強するにつれ、動物性の食材は消化するためにとてもカロリーを使っていることがわかりました。つまり、胃や腸に負担をかけているということ。それを理解してからは、野菜中心の食生活を心がけ、なるべく乳製品は控えるようにしています。時々でもいいから、消化器官を休ませる意識を持てば、身体にも、環境にもやさしいと思うんです」

ヴィーガンは、決して意識が高いひとのためのものではなく、宗教や文化を越えて世界中の人間が等しくテーブルを囲むためにも、そして腸内環境を整えるためにも、とても有効な選択肢だと思っているそうです。

阿部由希奈さん

「腸内環境と気分には密接な関係があると知ってからはとても興味があって、毎日菌食材を取り入れています。一方プライベートでは、“殺菌しすぎない”ことにも気をつけています。菌をゼロにしてしまうのも、免疫力を下げてしまう原因になるといわれていますよね。観葉植物に水をあげるとき、時々土を触って微生物に触れるようにもしています」

カレーときのこは相性抜群。可能性は無限大!

Kitchen and CURRYで人気のきのこカレーについて伺うと、「きのことチキンのカレー、きのことトマトのカレー、きのことごぼうのクリーミーカレー!」と3つのカレーを教えてくれました。きのこと組み合わせている食材はどれもうま味食材として知られているものですよね? 

「そうなんです。うま味の強いものと掛け合わせても、味が負けないところがきのこの一番の魅力。存在感があるから、主役にも脇役にもなれる食材です。ヴィーガンを勉強し始めてより実感したことですが、動物性の食材を使わずにコク、旨味、深みを出すのはなかなか大変。それなのに、きのこを入れたら一発大逆転(笑)。玉ねぎと一緒に炒めたらしっかりとだしが出るし、後入れにすればほどよいうま味とジューシー感が生きてきます。どんなに煮込んでも、プリッとしたおいしい食感が失われないのも最高。煮込むだけでなく、クミンシードやチリホールと炒めれば、カレーの副菜としても大活躍してくれます」

阿部由希奈さん

「きのこは娘も喜んで食べるので、家にも常備。さっとほぐしてから冷凍しています。最近はブナシメジの虜です(笑)。特に今、カットブナシメジには本当に助けられているんですよ。娘を抱っこしながらの料理でひと手間省けることを考えれば、うれしい選択肢。最近はナムルの素など調味液付きで売られているので、加熱して和えるだけで一品が完成するのも助かります」

阿部由希奈さん

そうそう、ときのこの思い出話が続きます。「きのこといえば、エリンギ!初めてエリンギに出会ったときの衝撃は忘れられません。当時、小学生だったと思いますが、形、大きさ、味すべてが驚きでした。それまできのこが食卓に出ても喜ぶことはなかったのに、エリンギはごちそうだと思って食べていましたね。フライパンでシンプルに焼いたエリンギにポン酢をかけて食べるのが本当に大好きだったんですよ」

カレーや食べものの話をすると、どんどんイキイキとした表情になる阿部さん。“食べておいしい” だけでなく、食材を愛情を込めて育てている生産者さんへの尊敬の気持ちが溢れていました。阿部さんの作るひと皿のカレーには、その向こう側にいるひとたちの愛情もギュッと詰まっているのです。

阿部由希奈さん
阿部由希奈さん

profile

阿部由希奈

(あべ・ゆきな)

and CURRY(アンドカリー)主宰。店舗を持たず、あらゆる場所で活動する“流しのカレー屋”。2018年7月、世田谷区羽根木にカレー活動の拠点としてKitchen and CURRY(キッチンアンドカリー)を開設。旬の野菜を中心としたカレーを提供している(水曜と金曜はモーニング、木曜はランチとディナー、土曜はランチのみ。オープン時間に変動あり。詳しくはInstagram:@ andcurry.officialで)。著書に『スパイスでおいしくなる and CURRYのカレーレッスン』(立東舎)『野菜が主役 季節のカレー』(世界文化社)。最新刊『and CURRYのフライデーカレー』(立東舎)では、身近なスパイスと食材で週1回、誰でも気軽に本格的なスパイスカレーを作れるレシピを紹介している。

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