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味覚形成は胎児期から始まっている!子どもの将来の健康を左右する「味覚形成」とうま味の働き

2024.11.26
味覚形成は胎児期から始まっている!子どもの将来の健康を左右する「味覚形成」とうま味の働き

妊活から妊娠、出産、産後まで、マタニティ期に大切にしたいことを食とともにお届けする本コーナー。今回は、出産後の子どもの「味覚形成」をテーマにお届けします。

子どもの舌は「生まれた時」が最も敏感といわれており、3歳ごろまでの「味覚形成期」の食事は子どもの好き嫌いを左右するだけでなく、将来の健康や性格にも影響を与えるといわれています。そのため、味覚形成期の食事は子どもの健全な成長のためにも大切です。

今回は、そんな子どもの味覚形成について、仕組みや食事づくりのポイントを解説します。

はじめに、「子どもの頃に味覚が決まる」といわれますが、具体的に、子どもの味覚はどのように作られるのでしょうか。

まず「味覚」についてですが、味覚とは、『甘味・塩味・酸味・苦味・うま味』の5つの味を感じ取る力のことで、舌にある味蕾(みらい)と呼ばれる味細胞の集合体によって感知されます。その機能は生まれた時が最も敏感で、味蕾の数は乳児期には最も多く約1万個あるといわれていますが、その後成長と共に減少し、成人になると約7,500個になるといわれています。

味蕾で様々な味を経験することで子どもは味を覚えていきます。乳児は消化機能が完成していないため、一般的には栄養が豊富で味の刺激も丁度良い「母乳」などのミルクから味経験が始まり、その後、徐々に「離乳食」に移行し、様々な味を感じる中で、脳の発達と複雑に関連しながら味覚や味の嗜好性を作っていきます。

乳児は「母乳」で初めて「味」に触れますが、母乳には乳糖による「甘味」とグルタミン酸による「うま味」があります。この時から味覚の形成が始まり、子どもの嗜好性が形成されていきます。“母乳の味”は母親が食べたものの栄養を受けるため、母親はバランスのよい食事を心がけることも大切です。

また、最新の研究では、子どもがまだお腹の中にいる時、胎児を包む「羊水」の味にも母親が食べた食事が影響すると言われており、胎児のときから嗜好性は形成され始めているとも考えられています。ぜひ、子どもの正しい味覚形成のためにも、妊娠期~出産後まで、マタニティ期の女性はできるだけバランスのよい食事を心がけられるとよいですね。(※)

お腹の中にいる時から味覚の形成が始まっているかもしれないと思うと、より一層、バランスのよい食事の重要性を感じます。では、離乳食に移行する時に気を付けた方が良いことはありますか?

離乳食の時期になると、少しずつ味覚が落ち着きはじめ、色々な味を受け入れられるようになります。消化機能も出来上がってくる生後5~6カ月頃が「離乳食」の移行期になります。

離乳食期は主に野菜などの“食材”そのものを使用し、成長段階に合わせてペースト状~柔らかい固形状のものを用意し、子どもの味覚形成と「食べる」練習をしていきます。
いろいろな味を感じると共に、舌ざわりや食感、見た目や匂い、温度など五感を使って感じ「美味しさ」を学びます。そのため、この時期には様々な味に触れられるよう、できるだけ多くの食材を取り入れることが大切です。

また、離乳食期が終わり、1歳半ごろからは幼児期食と呼ばれる、大人に近い食事に移行します。子ども消化機能はまだ完成していないため、幼児期食では、味噌汁ならば大人の半分の薄さにするなど、特に「味の濃さ」には注意しながら食事をつくりましょう。

幼児食の時期は、子どもの自我が芽生えて好き嫌いが始まるため、思うようにご飯を食べてくれないという悩みをよく耳にします。この時に注意すべきことはありますか?

この時に注意したいことは“子どもの好き嫌いは変わりやすい”ということです。何度も食卓に出すことで急に食べられるようになることもあるので、食経験を狭めないためにも、できるだけ偏らず、多くの種類を出すよう心がけられると良いですね。

また、3歳前後になると外食の機会も出てくるかもしれません。外食先では味の濃いメニューもありますので、子どもが食べる時には薄めるなどの工夫も必要です。

味覚は、様々な味を受け入れることで発達していきます。特に、3歳頃までの食体験が味覚に大きく影響を与え、10歳頃までの“味の記憶”がその後の食の嗜好を左右するといわれており、子どもの頃の食経験は大人になってからの健康にも関係がありますので、子どもの頃はできるだけ多くの食材に触れられるよう、できる範囲で工夫をしてもらえればと思います。

「濃い味つけ」は大人も注意しないといけませんが、子どもはより注意が必要なのですね。塩味を抑えながらも美味しい料理をつくるポイントはありますか?

早い時期から塩味の強い味に慣れてしまうと、味覚が正しく形成されず、素材の味がわからなくなったり、濃い味の食べ物を求めてしまったりするため、高血圧症につながりやすくなります。

そのため、子どものころの食事では食材のうま味、つまり「出汁」を活用することが効果的です。
先程もご説明したように、母乳には「グルタミン酸」が多く含まれるため、離乳食は、グルタミン酸が含まれる食材から始めるのも一つです。グルタミン酸が多い食材といえば、ブロッコリーやきのこがあります。昆布もグルタミン酸の豊富な食材ですが、海産物のため塩味が強いという特徴も。
そこでおすすめなのが「きのこ」です。きのこはグルタミン酸を豊富に含むうえ、「グアニル酸」といううま味成分も豊富に含んでいます。きのこを使うことで、塩分や糖質を余分にとることなくうま味の豊富な離乳食を作ることができ、また、きのこは種類によってうま味成分のバランスや風味が異なるので様々な味の経験に繋がります。さらに、食物繊維が豊富なため、赤ちゃんの腸の健康づくりにも役立ちます。
きのこを離乳食に使う場合には、きのこを煮出して出汁をとったり、加熱したきのこをペースト状にしたりするのがおすすめです。

離乳食には一般的に、人参やかぼちゃ、ブロッコリーなど、甘味があってペーストにしやすい食材が使われます。ぜひそれらの食材と一緒に、赤ちゃんの身体に負担をかけずに「うま味」の経験の幅を広げられる「きのこ」も活用して、子どもの健全な味覚の形成に繋げていただければと思います。

<参考文献>
・鳥居邦夫,味覚と嗜好性-栄養バランスと生体恒常性の担い手-,栄養学雑誌,2000,VoL.58 No.2,p.49-58.
・厚生労働省「離乳の支援のポイント」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-10_20.pdf

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