知って得する除脂肪体重(前編)
2019.06.01
LBM(エルビーエム)という言葉を聞いたことがありますか? あまり聞き慣れない言葉ですが、じつは、成長期の子どもの成長管理に、ぜひ活用してほしい指標なのです。特にアスリートとしてトレーニングを習慣としているお子さんなら、年に一度、身長や体重を測るだけではなく、LBMの数値にもぜひ着目してください。成長期の身体のしくみを理解したうえで、しっかりと成長をサポートしていきましょう。
注目すべきは「LBM(除脂肪体重)」!
これまでの身体測定では、体重の数字を見て「増えた」と感じたり、身長が「何㎝も伸びた」といって喜んでいたかもしれません。じつは、身長と体重の数字だけを気にしていては見落としてしまう、成長が著しいこの時期にこそ、大切なことがあります。
それは、“健康的な肉体”として、しっかり成長できているかどうか、です。
成長期の身体の状況を知るために、定期的に確認したいのが、除脂肪体重(Lean Body Mass;以下LBM)です。読んで字のごとく、体重から脂肪を除いた数値がLBM。その約7割が筋肉で、そのほか骨や内臓、血液を含む水分が含まれます。
このLBMが成長期に増えるということは、骨の量を増やす、骨の密度を高くする(折れにくい骨を作る)ことや、筋肉量の増加、筋肉の質をよくするなど、身体の成長に大切なものをたくさん獲得できるということです。さらには、アスリートはもちろん、誰にとっても必須といえる「ケガをしにくい身体」や「太りにくい身体」を手に入れることにもつながります。
これからのコンディション管理は、LBMがおすすめ!
これまで多くのアスリートが行ってきたコンディション管理は、毎日の測定で一喜一憂した、主に「体重」や「体脂肪」の数値によるものでした。アスリートに限らず、特に「ヤセ」が問題となっている10代の女子中高生は、体重が増えること、脂肪がつくことに対して恐怖を抱いている人もいるはずです。しかし、体重や体脂肪率の数値にばかり気を取られて、「増やさないように」とか「落とさなくては」と思い、食べずに運動するなどの間違った行動を起こすことはとても危険です。
また、男子の場合はスポーツをする/しないにかかわらず、体重増加=筋肉の増加を意味しますが、女子は将来子どもを産むために莫大なエネルギーが必要になることから、出産に向けて“脂肪をためる”という身体のしくみが備わっており、脂肪量も増加します。ですから女子の場合、中でもアスリートについては特に、筋肉量と脂肪量を分けてとらえる必要があります。大切なのは、成長して身長が伸びていくと同時に適切に体重が増え、その内訳として筋肉量が増えていくことなのです(※体脂肪率はあくまで体重に占める脂肪の割合であり、行っている競技、また成長段階によっても数値やその変動に個人差があります)。
身長が2cm伸びたとき、LBMは約1.0kg増えるのが理想といわれます。トレーニングをしているのに、筋肉が減っては困りますよね。ですから、体重が増えたということよりも、筋肉がちゃんと増えているのかを確認する意味で、LBMに注目し、これからは、体重や体脂肪率ではなく、LBMでコンディション管理をしていってもらいたいのです。
あなたのLBMは何㎏?
では、どのように算出するのでしょうか。LBMは、体重と体脂肪率(計測可能な体重計を利用)がわかれば、簡単な計算で求めることができます。
<LBM(除脂肪体重)算出の計算式>
LBM(㎏) = 体重(㎏) × (100-体脂肪率(%))÷ 100
ではここで、LBMを用いたコンディション管理の一例を挙げてみます。
<例>Aさん(女子)計測年齢:10歳2か月→11歳0か月(※この間の期間も定期的に計測・管理しています)
10歳2か月 | 11歳0か月 | 比較 | |
---|---|---|---|
身長 | 131.1㎝ | 142.5㎝ | +11.4㎝ |
体重 | 28.3㎏ | 34.1㎏ | +5.8㎏ |
脂肪量 | 5.4㎏ | 5.8㎏ | +0.4㎏ |
LBM | 22.9㎏ | 28.3㎏ | +5.4㎏ |
Aさんの場合、10か月の間に、身長は11.4㎝伸び、体重が5.8㎏増加。まさに成長スパート期です。ここで着目したいのが、体重の内訳(体組成)です。脂肪量、LBMともに増加が見られますが、LBMが大幅に増えていることがわかります。つまり、体重増加が脂肪によるものではなく骨や筋肉が増えたことによるものであり、Aさんは健康的に発育していることが確認できるのです。
女性スポーツ研究センターでは、これまでのコンディション管理の概念を一掃して、LBMでコンディション管理を考えていくということを提案しています。
後編では、この考えを応用した、もっと具体的な指標を紹介します!
- 監修者 関口 晃子 (Akiko Sekiguchi)
- 順天堂大学大学院卒業後、カナダのHalifax Alta Gymnastics Club にて約4年間、現地の子どもたちに体操を指導した経験を持つ。帰国後は、英語・体操・アウトドアプログラムを通じて元気なカラダとココロをつくる活動「操SO」を主宰。複数の大学で非常勤講師を務める傍ら、2011年より女性スポーツ研究センターのコーディネーターとしても活動。「女性アスリートダイアリー」初版開発に携わった他、2014年からは独立行政法人国立病院機構 西別府病院 スポーツ医学センター長・松田貴雄医師を中心とした「発育発達期の女子の調査研究」のサポートを行うなど、未来の日本スポーツ界を支える女子アスリートのための調査研究に従事する。
女性スポーツ研究センター コーディネーター
女子美術大学、淑徳大学短期大学非常勤講師(専門分野:成長期女子アスリートの発育発達、幼児期~低学年における体操指導)
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