PAGETOP
Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第24回 スピードスケート・髙木 菜那さんインタビュー

2022.11.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第24回 スピードスケート・髙木 菜那さんインタビュー

明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、スピードスケート日本代表選手としてオリンピック3大会に出場し、2018年平昌オリンピックではチームパシュートとマススタートの2冠に輝いた髙木菜那さん。チームパシュートで銀メダルを獲得した北京オリンピック後に現役を退いた髙木さんに、原動力となる信念や、強さの裏にある食事、ジュニアアスリートへのアドバイスなどをお話しいただきました。

まずは、スピードスケートを始めたきっかけや、学生時代について教えてください。

初めてスケート靴を履いたのは小学校1年生の冬の体育の授業だったと思います。その後、2つ上の兄が行っていた地元のスケートクラブに一緒に通うようになり、後に2つ下の妹の美帆も加わりました。また、小学校2年生の時から私の小学校にサッカー少年団ができたので、そこにも入団し、中学生までは、夏はサッカー、冬はスケートをやっていました。

高校に入る時にサッカーとスケートのどちらをやるかと考えて、実績が残っていたのがスケートだったので、高校ではスケートを部活動で頑張るということを決めました。でも、高校1年生の時は2年生、3年生の先輩方が強くて、一緒に戦えるレベルではなかったんです。もっと早くなりたいと思って、本気で練習をし始めたのが、高校2年生の時でした。

高校卒業後は実業団に入ってオリンピックを目指すようになった髙木さん。2014年にはソチオリンピックに初出場されましたね。

妹の美帆が出場した2010年バンクーバーオリンピックを現地に見に行ったのが、高校2年生の2月のことです。そこで自分も本格的にオリンピックを目指したいという気持ちが芽生えていたところで、タイミング良く実業団から声をかけていただき、その道を選びました。
オリンピックに出たいという一心で実業団に入って、そこから3年間、夢に向かって頑張っていたので、オリンピックに行けたことはすごく嬉しかったです。でも、実際に出場して感じたのは、オリンピックは行くだけではダメなんだなということでした。

ソチオリンピックが終わった後の2014年春から1年間、スケート王国のオランダに行くことになりましたね。その時の心境を教えてください。

海外で生活しながらスケートをするという新しい経験に対して、すごくポジティブな気持ちでしたね。その時の私は、スケートが速くなるのだったらどんなところでも行くという気持ちでした。もちろん、海外に行ったから必ず速くなれるという訳ではないですし、あらかじめ分かっている答えもありません。全部、自分次第だと思います。

私は、自分の滑りや、自分のやっていることに対して信念持つのは大事なのですが、せっかくオランダに行っているのに、自分はこうだからと最初から決めつけて新たなことに取り組まないのは、もったいないと思います。オランダでは一旦全部を受け入れてやってみて、そこで自分がどう変わるかというのを試しながらやっていました。

私の思う信念というのは、自分のやってきたことや過程、自分がやっていく上でこれは大切だと考えることや、速くなるためにずっとやり続けてきたことです。自分で体感して確信したことはすべて信念になっています。
反対に、プライドによって変化を拒んで自分の可能性を潰してしまうのはもったいないと思います。自分より速い人がいる時に、ある部分を変えればもっと速くなるかもしれません。

それはジュニアアスリートにも響く言葉ですね。

プライドが邪魔するというのは、ジュニア世代でもありえると思います。例えば、小学校までずっと強くて、みんなからすごいねと言われていた子が、途中でスランプになってしまったとします。そこで、自分は今まで強かったからというプライドが邪魔して、それ以上速く、強くなることを求めるのをやめてしまうのはもったいないことだと思います。

コーチから指摘を受けた時に、心の中ではプライドがあって、“いや、自分はこうだから”と思ったとしても、違う視点を取り入れたらもっとバージョンアップできるということは実際によくあるケースだと思います。聞いたことをまずは素直にやってみて、そのうえで考えることが大切なのではないかと思いますね。
それに体は1日1日でも変わります。筋肉のつき方もそうです。年齢を重ねると疲れが残ってしまうことも増えていきます。昔はこれが良かったんだという概念は捨てて、今どうやったら良くなるかということに目を向ける選手の方が強くなると思います。

体のことにも意識をされていた髙木さんですが、ここからは食事についてお尋ねします。まず、子どもの頃はどんな食生活をしていましたか?

皆さん、家庭の味とかお母さんがこれ作ってくれたとかあるじゃないですか。でも、私たちはきょうだい3人ともスケートをやっていたので、両親は子供たちがやりたいことをやらせるために、夜遅くまでずっと働いていたんです。私たちも新聞配達をしていました。

ですから、母の仕事が落ち着いている日はいろいろな料理をつくってくれましたし、母が夜勤の時は父が鍋料理をしてくれることもありました。母の実家が農家で、父の実家は酪農。私の家でも野菜を少し作ったり、両親の実家からもらってきたり、野菜はいつもふんだんにあったので、トマトをそのままジュースにして飲むのが好きでしたね。それに父が魚好きで、家族で肉を焼いて食べるのも好きで、今思うとすごくバランスの取れた食事をしていました。

ご自身で食事に気を遣うようになったのはいつ頃からでしょうか。

食事の量やメニューに気を付け始めたのは社会人になってからです。バランスよく食べることと、消費エネルギーより摂取カロリーが少なくならないようにエネルギーをしっかりとることと、タンパク質、野菜、ビタミン、ご飯をしっかり食べることを意識して摂るようになりました。あとは、油っこいものは控えるとか、お肉を食べる時には好きな牛肉だけを食べるのではなく、日によって鳥も食べて、豚も食べて、魚も摂るというように、色々な種類を食べるようにしていました。

食事のバランスに気を付けている髙木さんですが、近年、きのこが栄養価の高い食材として注目されていますが、きのこもよく食べますか?

子供の頃からキノコは好きです。特にエリンギやマイタケが好きです。エリンギはバターソテーも好きですし、子供の頃に実家でよくバーベキューをしていたので、バーベキューでエリンギを焼いて食べるのが好きでした。
マイタケは塩コショウでささっと炒めちゃいます。よく作るのは、ピーマンと一緒にマイタケを炒める料理。ピーマンだけだと加熱されてペタッとしてしまいますが、そこにマイタケが混ざっていると量が増えるし、お弁当にもピッタリです。キノコの栄養素を摂りながらピーマンの栄養も摂れますし、副菜に最適だと思います。たくさん作った時は小分けにして冷蔵庫に入れて、取り置きにしておきます。冷えても美味しいのでありがたいですよね。

食材としての栄養価の高さも意識されていますか?

そうですね、だから作り置きするのにもぴったりかなと思います。冷凍しておいて、使いたい分だけパラパラっと出して炒めたりもしていますよ。野菜とは生えている場所が違うので、きっとキノコには野菜と違う栄養価があるのだろうと思います。あと、鍋料理にキノコは必須ですよね。

きのこらぼ限定公開 INTERVIEW

では最後に、ジュニアアスリートへの食事面でのアドバイスをお願いします。

これは難しいですよね。特に女の子は思春期が来るとどうしても太りやすくなる。でもそこで変なダイエットをするとトレーニングが出来なくなります。食べることを我慢することがストレスになって、その結果、甘いものを食べるのは1番良くないこと。だから、なるべくバランスよくとることを意識してほしいです。やはりアスリートを目指すのだったら、野菜が嫌いな子はしっかり野菜も食べられるようにしておくことが大切です。

それと、忘れてほしくないのは、食べられるというのは強みでもあるということです。昨今は緊張すると食べられなくなる子供がすごく増えてきているみたいなんです。もちろん競技や種目によって異なるので一概には言えませんが、基本的には食べられないより食べられるほうが強い。食べないと怪我にもつながりますし、いろいろなことが負のループにはまっていきます。
食べ過ぎは良くないですし、偏るのも良くない。でも量を食べられる、緊張しても食べられるというのは強みになります。大事な時に緊張して吐いてしまうとか、食べられなくならないよう、“食事のトレーニング”をしておく必要があります。
ジュニアの頃からバランスよく食べることに気をつけていれば、自然とバランスの良い食事がどういうものかを体が覚えてくれます。甘いものが好きなら、1カ月頑張ったからご褒美に食べに行くなど、そういう工夫も良いと思います。バランスを意識しながら、頑張ってほしいですね。

髙木 菜那さんの Do my best,GO!

■好きな言葉、座右の銘は?
「努力することに無駄なことは1つもない」

■競技人生の中で最も忘れられないシーンは?
北京オリンピック後の3月にあったワールドカップファイナルで、ヨハン・デビットコーチがめちゃくちゃハグをしてくれた時。それまで全然褒めてくれなかったヨハンコーチが一緒にやってきた7年分、褒めてくれたのだと思います。『この小さな体(身長156センチ)でここまで戦える選手は見たことがない。すごいだろ』と、いろんな人たちに言っていました。

■リラックス方法、気持ちの切り換え方法は?
無心になりたいときは漫画を読みます。リラックスしたい時にコーヒーを飲むのも好きです。

■これからの目標は?
現役時代は1人で戦う時間が多く、限られた環境の中で生きていました。最近、小さい子供たちとのイベントに参加して感じたのは、人と触れ合うことの楽しさ。楽しそうな表情を見るのがとっても嬉しく思えたので、人と触れ合う仕事をしたいです。

■髙木さんにとって、スピードスケートとは?
『最高の宝物』です。競技を通して、チームパシュートの仲間の大切さをずっと感じてきましたし、私たちは互いに互いが大好きなメンバー同士でした。

髙木さんが今食べたい菌勝メシ

コメント

現役のときは栄養バランスのよい食事を意識していました。きのこは美味しいので料理でも良く使います!お鍋なら色々な食材が一緒にとれて、手軽に栄養バランスを整えられるのが良いですね。

きのこの韓国風蒸し鍋

きのこにはエネルギー代謝に関わるビタミンB群が豊富に含まれており、豚肉にもビタミンB1が豊富なため、一緒に取ることで効率の良いエネルギーづくりに役立ちます。また、ニラのアリシンがビタミンB1の吸収を高める点も嬉しいポイント。キムチとしょうがで身体の芯から温まる一品です。

詳しく見る>

profile

髙木 菜那

(たかぎ なな)

1992年7月2日 156センチ 48キロ 北海道中川郡幕別町出身

札内北小学校入学後にKSCスケートクラブ入団。2005年4月に幕別町立札内中学校に進学し、2007年全国中学校大会女子1000m優勝。2008年全国中学校大会女子500m2位。2008年に北海道帯広南商業高校入学し、高校2年生だった2010年3月、世界ジュニアスピードスケート選手権で、妹の美帆、押切美沙紀とともに出場したチームパシュートで銀メダルを獲得。
高校卒業後の2011年4月に日本電産サンキョーに入り、2014年ソチオリンピックに初出場。女子1500mで32位、女子チームパシュート4位。2015年世界距離別選手権で日本のチームパシュート初となる金メダルに輝いた。2018年平昌オリンピックでは女子チームパシュートと女子マススタートで金メダルを獲得し、当時日本人女子では初となる1大会複数金メダルに輝いた。マススタートはオリンピック初代女王。2019年世界距離別選手権女子チームパシュートも金メダル。
2022年北京オリンピックでは女子1500m8位入賞。上位を狙える快調な滑りを見せていた中、同走の中国選手の走路妨害(失格)の影響を受けたのが悔やまれた。女子チームパシュート決勝では終盤までリードしていたが最終コーナーで転倒して銀メダル。女子マススタートも最終コーナーでバランスを崩して転倒し、涙。ラストレースとなった3月のオランダでのワールドカップファイナル女子1500mでは5位となった。

きのこらぼに無料会員登録をしていただき、ログインした状態で記事をご覧いただくとポイントがもらえます。
貯まったポイントは、プレゼント応募にご利用いただけます。