PAGETOP
子育てLabo

産後の変化と過ごし方。授乳期に摂りたい食材とは?

2025.03.17
産後の変化と過ごし方。授乳期に摂りたい食材とは?

妊活から妊娠、出産、産後まで、マタニティ期に大切にしたいことを食事のポイントとともにお届けする本コーナー。今回は、「産後の身体とケア」をテーマにお届けします。

妊娠・出産を終えた身体は、大きなダメージを抱えた状態です。しかし、すぐに授乳などの育児もしなければならないため、産後の身体を知り、適切にケアをすることが大切です。

そこで今回は、産婦人科医で浜松医科大学名誉教授の金山先生に、産後の身体の状態や過ごし方のポイント、授乳期に積極的に摂りたい食材などについてお聞きしました。

INDEX

産後の身体は更年期に近い状態

まずは、出産直後の身体の状態について教えてください。

出産後は、子宮腔内の分泌物が外に排出される「悪露」と呼ばれる出血があります。産後2〜3日は量も多く血液とほぼ同じ見た目です。それ以降はだんだん減っていき、色も赤色から褐色、そして黄色、無色へと変化し、産後4〜6週間後にはなくなることがほとんどです。

さらに、産後3日ほどは、子宮収縮による痛みを感じる方が多いですね。これは後陣痛とも言われています。また、産後は体力も免疫力も非常に弱まりますから、さまざまな感染症にもかかりやすい時期です。

では、産後6〜8週間にあたる産褥期の身体は、どのような状態になるのでしょうか?

産褥期の身体は、更年期の状態と非常によく似ています。妊娠中は胎盤からエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが大量に分泌されます。その分泌量はなんと妊娠前の50倍から100倍にものぼると言われています。それが出産で胎盤と一緒に外に出されてしまうため、女性ホルモンのバランスが崩れ、更年期障害と同じような症状があらわれるのです。

具体的には、疲れやすい、眠れない、肌が荒れる、膣が乾燥するなどの症状が出ます。手足の冷えに悩む方も多いですね。また、精神的にも不安定になりやすく、涙もろくなったりイライラしやすくなったりする方も少なくありません。

産後の身体で気をつけたいことと授乳期の悩み

産後は更年期に近い症状も出るとお伺いしました。お母さんが心がけた方が良いことを教えてください。

出産後の身体は大きなダメージを負っている状態です。身体を回復させるために、入院中はもちろん、退院後も2週間程度は慣れない育児で疲労が蓄積しますのでなるべく安静にするよう心がけてください。ただ、全く動かないでいると血栓症になるおそれがありますので、長時間同じ姿勢でいるのは避けて、水分補給も意識的に行いましょう。

また、先ほどお伝えした通り、ホルモンバランスの乱れにより、精神的にも不安になりやすい時期です。昼夜続く授乳や赤ちゃんのお世話による寝不足も加わり、ストレスを抱えるお母さんも多くいます。気分の落ち込みや不安感が2週間以上続く「産後うつ」になる人も、出産後の女性の10%以上を占めています。

そのため、なるべく1人で頑張りすぎないのが大切です。旦那さんをはじめ家族のサポートを受けたり、積極的に産後ケアセンターを活用するなどして、週に1回以上は、ぐっすり眠る時間を確保できるようにしてほしいと思います。

産後の授乳にお悩みの方も多いと聞きます。授乳期に良く起こるトラブルや、それを防ぐ方法もお伺いできますか?

乳管が詰まって母乳が溜まりすぎてしまったり、乳頭や乳管にできた傷から細菌が入ってしまったりして、乳腺が炎症を起こす「乳腺炎」になることがあります。ただし、乳腺炎は乳腺のケアで防げる場合も多いので、産後2〜3週間は特にしっかりとケアを行うとよいでしょう。

例えば乳管のマッサージをして母乳を出しやすくしたり、搾乳をしたりするなど、乳腺に母乳が溜まらないように意識してみてください。これらの乳腺ケアは、退院までの期間や、産後の健診で助産師の方がしっかりと指導をしてくれると思います。

産後の免疫力や母乳のために。積極的に摂りたい栄養素とは

産後のさまざまな症状を軽減するために、食事で意識することはありますか?

何よりも大切なのは、欠食をしないことです。出産直後はなかなか食欲が出ないかもしれませんが、なるべく朝昼晩バランスのよい食事を食べるようにしましょう。そして、出産後は女性ホルモンが急激に減りますから、女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボンを摂取するのもおすすめです。大豆イソフラボンが多く含まれるのは、大豆や納豆、豆腐、油揚げなどですね。

また、産後は免疫力も低下しています。免疫力の向上に役立つビタミンDや、粘膜を強化して風邪の予防をしてくれるビタミンB2が豊富なきのこは、積極的に取り入れてほしい食材です。手足の冷えを防ぐという観点でも、きのこに含まれるナイアシンは、血行を良くして末梢循環を改善してくれます。身体を温める根菜類とあわせて意識して摂りましょう。

授乳のために、栄養面で気にした方がよいことがあれば教えてください。

母乳の出をよくするためには、きのこや根菜、海藻など食物繊維の含まれる食材をたくさん食べるとよいですね。さらに、母乳の元となる血液に欠かせないのは牛赤身肉やレバーなどに多く含まれる鉄分です。また、産前にも意識的に摂るべきと言われる葉酸は、実は産後も血管をよい状態に保ったり、血液の源である赤血球を作ったりするのに必要不可欠な栄養素です。授乳中にも葉酸が豊富なエリンギやブロッコリー、枝豆などを、ぜひ食事に取り入れてください。

反対に、授乳中には摂取をしない方がよいものもあります。まず、アルコールやカフェインは赤ちゃんの脳の発達や発育に悪影響を及ぼすことがあるため、授乳中は控えましょう。油や砂糖が多く使われているインスタント食品や揚げ物なども、母乳の出や質が悪くなるので、たくさん食べるのは避けてほしいですね。さらに、油の中でもなるべく摂らない方がよいものとしては、お菓子やパンに含まれることのあるトランス脂肪酸(ショートニング)が挙げられます。

トランス脂肪酸は血管の老化を促進すると言われ、身体にとってよいものではありません。さらに、油は母乳に移行しやすいため、なるべくオリーブオイルや亜麻仁油などの植物由来の油を選択するのがおすすめです。

最後に、産後の方へ先生からお伝えしたいことがあればお願いします。

前回分娩時にも大切だとお伝えした「腹式呼吸」は、授乳で猫背になりやすい産後にも有効です。末梢循環も改善し、冷えやストレス状態の緩和に役立つので、授乳の前後などにぜひ取り入れてみてください。

産後すぐに始まる赤ちゃんの育児は、お母さんの身体にも心にも大きな負担がかかります。とにかく1人で頑張ろうとせずに、積極的に周りのサポートを受けるようにしてほしいと思います。身体を温めたりバランスのよい食事を心がけたりしながら、無理のない範囲で、育児と身体のケアを両立していきましょう。

きのこらぼに無料会員登録をしていただき、ログインした状態で記事をご覧いただくとポイントがもらえます。
貯まったポイントは、プレゼント応募にご利用いただけます。