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きのこを訪ねて

冬虫夏草を見つける楽しみ

2024.09.16
冬虫夏草を見つける楽しみ

夏が終わりを迎え、秋の風を感じ始める時期。夏から秋にかけて見られるきのこはたくさんありますが、中でも探すのを楽しみにしているもののひとつに「冬虫夏草(とうちゅうかそう)」があります。
冬虫夏草とは、虫から生えるきのこの総称です。
生きた昆虫やクモなどに寄生し、その宿主の死後、夏頃になるとミイラになった虫の死骸からきのこが発生します。
中には昆虫に寄生したのち行動を操り、 “ゾンビ化”させてしまう種類もいるなど、ちょっと怖い印象もある反面、漢方や薬膳の生薬としても広く知られているきのこなのです。

ミイラやゾンビ、漢方などと聞くと、なんだか珍しいもののようにも思えるかもしれませんが、実は意外と身近な場所でも発生しています。
ただ、宿主となる昆虫などが土や倒木に潜っていることも多く、地上に子実体(きのこ)が出てこないとなかなか見つけることができないため、子実体となって出てくる夏の時期に探すのです。
きのこを見つけて辿っていけば、その先には宿主の昆虫も眠っているため、私の冬虫夏草探しの楽しみは「発掘」でもあります。
いかにきのこを折らずに宿主まで到達できるかというところもポイントです。
(※地上部にいる宿主から発生する種類もいます)

<左写真:地上部の様子、右写真:発掘したオオセミタケ(撮影:5月)>

上記はオオセミタケです。
掘るのに夢中だったため発掘中の写真がないのが悔やまれますが、地中にいたセミの幼虫から発生しているのがよくわかると思います。
こん棒みたいな子実体のボリュームとセミの幼虫の存在感がなんともかっこいい!
なお、セミの幼虫から発生する冬虫夏草はオオセミタケの他にも、セミタケ、ツクツクボウシタケ、ウスイロセミタケ、エニワセミタケなど複数の種類があり、それぞれ子実体の色や形が異なるのも面白いところです。
そして、そんなセミ幼虫生冬虫夏草をモチーフにしたグッズがこちら。

映画・テレビ等の美術小道具や特殊メイクなどを手がけている LINK FACTORY(リンクファクトリー)さんによる、陶器製冬虫夏草一輪挿し『冬虫花瓶』です。
セミの幼虫の花瓶に草花をいけることで冬虫夏草になるという商品。
きのこにとって子実体は、植物でいう花のようなものでもありますので、これは、季節によって様々な子実体を咲かせることができるという、セミ幼虫の冬虫夏草らしいナイスアイデアな逸品です。
冬虫夏草の説明で「ゾンビ」や「寄生」という単語が出てきたように、冬虫夏草とホラー系特殊造形を生業にされている会社さんとの親和性はバッチリですし、造形も流石のクオリティ。
個人的には、ぬらっとした光沢がセミ殻らしくて気に入っています。
ここで、冬虫夏草にまつわるコレクション品をもうひとつ。

OPTIQUE PARIS MIKI(オプティックパリミキ)の「きのこめがね」シリーズ。
デザインは、きのこ雑貨を多く手がける、Shima.shimaさんのイラストです。
この冬虫夏草フレームは「きのこめがね」シリーズ第2弾にラインナップされているもの。それにしてもメガネのフレームに冬虫夏草をあしらうというのは、きのこ好きでも驚いてしまいます。
そして、同シリーズには「ヤコウタケ」デザインもあり、こちらはなんと、ヤコウタケ部分が蓄光で光るという驚きの仕掛けが!(もちろん買いました)
思い切ったデザイン展開に感謝です。

こういったユニークなきのこグッズに出会うのも、森で冬虫夏草を探すのも、どちらも「見つける楽しみ」という共通点があります。
先ほどご紹介したオオセミタケは、子どもたちと一緒に遊びに行ったキャンプ場近くで見つけたのですが、近年のキャンプブームでキャンプ場が拡張整備されたり、来場者が増加したりすることで、これまで冬虫夏草がよく発生していた場所がなくなってしまったケースもあり、少し残念に感じる部分もあります。
また、冬虫夏草は他のきのこに比べて目立たないので、気づかず踏み潰してしまうこともあるかもしれません。

私自身はこれからもずっと、冬虫夏草を「見つける楽しみ」を続けられるよう、自然を大切にしながら過ごしていきたいものです。

profile

とよ田キノ子(とよだ きのこ)

ウェブデザイナー、きのこ愛好家。
2007年に“きのこ病”を発症し、以後「とよ田キノ子」名義で活動を開始。
きのこグッズコレクションの展示や、きのこをモチーフにしたイラスト作品展、きのこイベントなどを開催。
日々、きのこの魅力を伝える“胞子活動”を行っている。
『乙女の玉手箱シリーズ きのこ』(グラフィック社)監修、『きのこ旅』(グラフィック社)著、『八画文化会館叢書vol.04 公園手帖2 キノコ公園』(八画出版部)著。