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Do my best, GO! 〜輝く女性たち

第3回 エッセイスト 柳沢小実さん

2021.01.01
第3回 エッセイスト 柳沢小実さん

自分らしさを探求しながらイキイキと人生を楽しんでいる方に、生き方のヒントをお聞きする連載企画「Do My Best, Go!」。第6回は、エッセイスト・柳沢小実さんのインタビューをお届けします。

これまで新聞や雑誌、WEBサイトなど多数のメディアで、衣・食・住や旅のエッセイを綴ってきた柳沢さん。多くの女性から支持されている柳沢さんの丁寧な暮らしの中には、心と体を健やかに整えるための工夫が散りばめられていました。

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暮らしに手をかければ、人生の質が上がっていく

暮らしや旅をテーマにした著書をはじめ、エッセイストとして活躍中の柳沢小実さん。例えば、物はひとつひとつきちんと選んで大切に使い、壊れたら直して、また使う。収納は動線を意識し、ぎゅうぎゅうに詰めず、余白を残しておく。そんな丁寧で整った暮らし方の提案が、女性を中心に支持されています。ほんわかと穏やかな笑顔が印象的な柳沢さんですが、「実は、暴走突っ走り型です」と笑います。

「エッセイストになったきっかけは、大学時代から制作していた「個人で作る雑誌『ZINE(ジン)』」でした。美大に通っていたので、友達同士でZINEやフリーペーパーを作るのは当たり前の環境だったのですが、大学4年生のとき、急に思い立って一人で作り始めて。“やりたい!”と思ったら、夢中になっちゃうタイプ。そもそも自分に期待していないので、“失敗したらどうしよう”なんて考えないんです(笑)。やりたいから、やる。ただ、それだけでした」

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ZINEのおもなテーマは、音楽と暮らし。今のようにパソコンもインターネットもSNSも、まだ普及していない時代。取材から執筆、デザイン、印刷、流通まで一人で行うというのは、並大抵の労力ではなかったはずです。そのあふれるエネルギーを保ったまま、卒業後も精力的にZINEを制作。CD付きで大手レコードショップでも販売するようになり、月3000部を完売するほどの人気に。それが編集者の目に留まり、28歳のとき、記念すべき1冊目の著書を出すことになります。「タイトルは『ていねいな暮らし』。著書はある意味、スタンスの表明ですよね。1冊目をこのタイトルにしたことで、自分の進むべき道が見えてきた感がありました」と、当時を懐かしそうに振り返ります。

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プロフィール欄の肩書を“エッセイスト”にすると自分に許したのは、3冊目の著書を発売したとき。そこから、実に30冊以上もの著書を世に送り出しました。

「日常の中で小さな幸せを見つけるのは、割と得意。それに、偏愛的な収納や家仕事、暮らしの仕組みづくりなど、自分がトライアンドエラーで見つけたいいものをみなさんにシェアして喜んでもらえる――。私の仕事って、なんていい仕事だろうと思います(笑)。暮らしに手をかけることが、人生の質を上げていくことに繋がるのだと、コロナ禍で改めて感じました。仕事でも人間関係でも、人が関わってくるとすべて思い通りにするのは難しいけれど、自分の暮らしは自分のもの。家をきれいにすれば、その気持ちよさは、すぐ自分に返ってきますからね」

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一歩踏み出すことが、自分への自信に繋がる

40代に差し掛かると、誰にでも平等に訪れる心と体の変化。柳沢さんも40歳前後の数年間、気持ちが“低空飛行”だった時期があるとこっそり教えてくれました。

「年齢と共に体の変化も感じましたし、“このままずっと、お仕事を続けていけるのかな”という漠然とした不安もありました。それに、若いころは本も雑誌もめいっぱい読んで知識を蓄積できたけれど、だんだんと機動力を失って、インプットする機会が減ってしまった。この先、自分が枯れてしまうんじゃないかと思ったとき、聴講生として大学に通うことにしたんです」

昨年は某大学で中国語や中国文化を、今年は別の大学のオンライン授業で、家庭経済学やファイナンシャルプランニング入門を受講したとのだとか。どちらもすぐ今の仕事に繋がるものではありませんが、何よりよかったのは、ポジティブな気持ちの転換があったこと。

「新しい環境に身を置いたことで、仕事に対して新鮮に向き合えましたし、今まで以上に感謝の気持ちが芽生え、自分が生まれ変わったような感覚がありました。やっぱり、インプットって必要なんだなと。動き始めた時点で、漠然とした不安は消えていました。私の場合はそれが勉強だったけれど、周りには同じように不安を感じて副業を始めた人もいれば、思い切って転職した子もいます。まずは、一歩、踏み出すことが大事なんですよね」

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ほかにも趣味として金継ぎやかご編み、中国茶を習い、コロナ禍ではインスタライブも始めるなど、今では「自分が楽しそうと思うこと」を基準に、精力的に動いている柳沢さん。どんなことでもいいから、一歩、踏み出してみる――。同じ悩みを持つ同年代の女性にとっては、ぽんと優しく背中を押してくれる、お守りのような言葉なのではないでしょうか。

「ルーティン化」すれば、心と体の小さな変化に気付ける

豊かな暮らしを送るために柳沢さんが大切にしているのが、心と体の健康です。柳沢さんは健康維持のため、冷たい飲み物を控えたり、旬の食材を積極的に取り入れているほか、日々のルーティンを崩さないように心がけているといいます。

「もともと自分を律するのが苦手なタイプで、規則正しい生活を送れるようになったのは、サラリーマンの夫と結婚してから。毎朝、夫と一緒にストレッチをすることから一日が始まります。結婚して15年になりますが、ルーティンを崩さないって、実はすごく大事で。毎日同じような生活を送っていると、具合が悪くなりそうなとき、“何か変だな”と気付ける。そうすれば、早く眠ったり体を温めたり、対処できますよね? 心も同じで、普段あまり気持ちの浮き沈みがない分、不調があるとすぐにわかるんです」

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食生活も、柳沢さんがルーティン化しているものの一つ。大好きな中華やエスニックは“外で食べるもの”と割り切り、家で作る料理は基本、和食のみ。夕食は白いご飯と主菜、汁物、副菜を組み合わせた和定食のような献立が中心で、昼食は麺と決めているそうです。

「毎日の献立を考えるのって大変ですが、和食に決めてしまえば、選択肢の範囲が狭まります。買い物も肉、魚、卵、青菜、トマト、納豆、海藻類……など、基本の食材を決めてしまうことで、随分ラクになりました」

基本の食材の中でも便利に活用しているのが、きのこ。「主役にも脇役にもなれる優秀な食材。炒めものに加えると深みがぐんと増しますし、寒い時期はきのこたっぷりのきのこ汁もよく作ります」とのお答え。特におすすめのきのこ料理を聞くと、料理研究家・野口真紀さん考案の「きのこ蒸し」を挙げてくれました。

きのこ蒸し

「きのこと刻んだにんにく、アンチョビを一緒に蒸し、バルサミコ酢を煮詰めたソースとオリーブオイルをかけて。仕上げにペコリーノチーズを削ります。見た目も華やかで、おもてなしの席で何度も喜ばれたメニューです。普段は和食ですが、おもてなしのときはちょっと特別。家族で食べるときは手軽にペコリーノチーズを省いたり、バルサミコ酢をしょうゆに代えたり、アレンジしながら楽しんでいます」

「自分はこうだ」と決めつけず、変わることを恐れない

ときには失敗を経験しながら、日々の暮らしを豊かにするアイデアを発信し続けてきた柳沢さん。そうした丁寧な暮らしを提案する他方、合わせて伝えたいメッセージがあるのだと続けます。

「女性の一生って、キャリアアップ、結婚、出産と、自分以外の要素や年齢、気持ちによっても変わる“激動の人生”だと思うんです。自分のスタイルを貫くのも大事ですが、変化を受け入れるのも大事。“自分はこうだ”と決め過ぎて、“あれもダメ、これもダメ”と弾いてばかりだと、せっかく自分が変われるチャンスかもしれないのに、もったいないですよね。そのときどき、できる範囲で丁寧な暮らしを送りつつ、変化も受け入れる。それが今、いちばん提案したいことですね」

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仕事に人間関係に、家事に、育児に。人生はいつだって、悩みが尽きないもの。大事なもの、優先すべきものが、その瞬間瞬間で変わるのは、当然のことかもしれません。食生活も同様に、余裕があるときは日々バリエーションに富んだ献立を楽しめばいいし、忙しいときはルーティン化して少しでも負担を減らし、食べる時間そのものを楽しめばいい。柳沢さんの言葉通り、「変わっていいんだよ」と自分を認めることができれば、肩の力が抜けて、もっとラクになるのではないでしょうか。

今日が、人生でいちばん若い。そう思えたら、何を始めるにも遅くはないはず。カーネル・サンダースだって、ケンタッキーフライドチキンを起業したのは65歳ですからね。すごいでしょ?」そう、いたずらっぽく笑う柳沢さん。日々穏やかに、けれど、いつでも動き出せる身軽さを持って。そんな柳沢さんの姿勢は、すべての女性の生きるヒントになりそうです。

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柳沢小実(やなぎさわ・このみ)
1975年、東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。エッセイストとして、新聞や雑誌、WEBサイトなどで執筆し、衣・食・住、旅、台湾にまつわる本など、30冊以上の著書をリリース。もの選びにも定評があり、大手通販会社「フェリシモ」とコラボレーションした商品も話題に。また、収納好きが高じて整理収納アドバイザー1級を取得。身軽ですっきりとした暮らし方を研究している。近著に、読売新聞の連載をまとめた『おうち時間のつくり方~毎日が充実する82の工夫~』、『これからの暮らし計画~今を満たして、明日に備える工夫』(共に大和書房)。
www.furarifurari.com

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