プロアスリートを支える食事に迫る。第62回 カーリング・山口 剛史選手インタビュー
2026.01.01
アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回登場するのは、カーリング・山口剛史選手。幼少期にカーリングをはじめ、2018年には日本男子20年ぶりとなる平昌五輪に出場し8位入賞。現在も日本カーリングの第一線で活躍する山口選手のここまでのキャリアとその土台となる食への意識、今後への思いなどをお聞きしました。
はじめに、カーリングを始めたきっかけを教えてください。
小学3年生の時に、地元の南富良野町にカーリング場ができて、同級生に誘ってもらって始めたのがスタートです。学校が終わった後に遊ぶところもそんなに外にないので、学校の友達と一緒に遊べる場所というイメージでいい思い出がたくさんありますね。
始めてみて、カーリングをどう感じましたか。
最初は氷の上で滑って遊ぶのがすごく楽しくて、非日常を味わう楽しさがひとつ。ストーンという重さ20キロの石を滑らせるのですが、的が40メートルぐらい先でなかなか思った通りに行きませんが小学生の時でも10回に1回ぐらいは石を弾き出すとか真ん中に止めるとかできて、思った通りにいった時の快感が楽しかったという思い出がありますね。今でもその楽しさは同じだなと思っています。
高校時代には日本ジュニア選手権で優勝し、世界ジュニア選手権に出場しています。一方で、ラグビーでも全国大会に出場、カヌーもされていたそうですね。
運動は小さい時から得意ではなかったのですが、できないことが少しずつできるのがすごく楽しくて、そういう意味でスポーツは好きでした。夏はカーリングができなかったのでラグビー中心、週末やラグビーの練習がない時はカヌーの練習、冬はラグビーの練習が終わって家に帰ったあとにカーリングの練習に行ったりしていました。
最初に大学に進むときはカヌーに打ち込むことを考えて駿河台大学を選ばれましたが、その後、駿河台大学を中退し、青森大学に進んでカーリングに本格的に取り組み始めましたね。理由を教えてください。
駿河台大学のカヌー部に入ったら、コーチも先輩たちもほとんどがカヌーの日本代表選手という環境だったんですよ。そこでワールドカップや世界選手権に遠征した話を聞いているうち、スポーツで世界のトップを狙うってすごく楽しそうだなって思うようになってきて、自分がやってきたラグビー、カヌー、カーリングを天秤にかけて、カーリングが一番世界狙えるんじゃないかなと思ったので、大学1年の秋か冬ぐらいにはカーリング1本で世界を狙おうと決心して動きました。
卒業後はSC軽井沢クラブに加入され、現在もプレーしています。チームや生活環境はいかがでしたか?
僕が大学生の頃は、まだ女子も企業の所属チームみたいなのがなかった時代でした。男子も本当に環境が良くない中だったんですけれども、その中で働きながらカーリングをやらせてもらえる環境を作ってもらったり、長野は過去の世界大会のレガシーもある中で軽井沢では国際大会があったり、環境がいいなと思いました。
SC軽井沢クラブでプレーされる中で、まずは日本代表の争いがあって、次は世界選手権そして五輪を目指していったと思いますが、男子は五輪に届かない状況がずっと続いていました。その中でどんな思いがあったでしょうか。
やっぱり世界での成績を男子の方は出せていないので注目も浴びないんだなと思っていいましたし、女子の方は本当にレベルが高いなと思っていたので悔しい思いもありましたが、まずは自分たちがまず世界の中での位置を上げていく必要があるなと思って日々努力していました。
そして2018年平昌五輪に初出場しましたね。その時を振り返っていかがでしたか?
会場が輝いてるように見えましたね。選ばれし者がプレーするみたいな感覚で、スター選手の一部だと錯覚するぐらい素晴らしいステージだなってずっと思ってプレーしていました。
予選が9試合あって、自分自身はゾーンに入っているみたいな感じですごく調子が良かったんですけども、空間が楽しすぎて、そしてものすごく集中していたので、プレー中の記憶が全然飛んでしまって今でも思い出せないです。そんなことって今までのカーリング人生で一回もないんですけれど。
平昌では女子日本代表が銅メダルを獲得しましたね。
僕はその時33、34歳ぐらいで、カーリングを長くやってきたので一線を退こうかどうか考えていたんですけれども、表彰式を観客席から見ていて、五輪という場所はプレーするだけじゃなくて、表彰台に乗って形あるものを獲得するところまでが大きいストーリーなんじゃないかなって思いました。表彰式を見たとたん、次こそはメダルを狙いたいなと思いましたし、自分のカーリング人生の中では刺激的な時間でしたね。
SC軽井沢クラブで長年プレーしていて、メンバーが替わったりチームの体制も変化したりする中で、若い選手も加わっています。どういう風にチームを引っ張っていこうとしてきたのでしょうか。
どれくらいのレベルだったら世界に行けるのかをイメージできるようになったことが大きくて、次は出るだけじゃなくてメダルを持って帰ってくるところまで考えるようになるともっとプラスアルファが必要だなって感じて新しいチームを作り始めました。
カーリングはコミュニケーションが大事なスポーツです。お互いにバックグラウンドも経験値も違いますけれど、しっかり目線を合わせて疑問に思うことは言ってもらうし、自分も疑問に思うことは相手に対して言うし、我慢しないコミュニケーションがお互いにできる環境づくりを考えてやっています。
ここからは、食生活についてお伺いします。カーリングは試合時間が長いですし、実はハードな面を持つ競技だと聞いたことがあります。
例えば心拍数でいくと、スイープ、つまりブラシでゴシゴシやった後なんかは160、170ぐらいまで上がります。ダッシュしたぐらいの心拍数くらいまで簡単に上がっていくので結構ハードだなと思います。僕はスキップという司令塔のポジションを今やっているんですけれども、去年ぐらいまではスイープもたくさんやるポジションだったので、1試合で体重が2キロぐらい落ちたりしました。
食事も大切だと思いますがどのように意識されているでしょうか。
1試合3時間近くになりますし、世界選手権では1日2試合あるのも普通で、ウォームアップとかも入れると1日8時間ちょっとになります。エネルギー切れしないように意識していて、炭水化物をちゃんと摂るのを心がけています。試合前は消化の良い炭水化物を中心に、そして試合後はタンパク質と野菜を意識して摂っています。
風邪も引きやすくなりますし、僕は口内炎ができやすいので、体調を整えるためにも、なるべく栄養バランスを考えた食事を心がけています。
食事内容も心がけている山口選手ですが、栄養豊富な食材の一つである「きのこ」の印象を教えてください。きのこはお好きでしょうか?
はい。小さい頃から食べています。きのこは低カロリーで栄養価が高く、腸内環境を整える働きがある点が魅力ですね。
最近だとしめじやエリンギあたりをよく食べます。パスタが好きなので、和風パスタにしてもトマトソース系にしても使いやすい食材だし、食感も味も好きです。今日の夜のご飯も、ホワイトソース系のマッシュルームとチキンが入ったパスタを食べました。パスタ以外だと、今の季節なら鍋に入れたり、夏だとズッキーニなどとバター炒めにして食べたりしますね。
きのこは腸内環境を改善する働きもありますが、腸の健康についても意識されていますか?
腸内環境についてはヨーグルトや発酵食品、野菜、そしてきのこを意識して摂取しています。腸内環境を整えることが疲労回復や集中力の維持につながると考え、日頃から取り入れています。
菌の食材って体の調子を整えるなっていう感じがしますね。ミネラルが多そうなイメージもあります。
では、スポーツに励んでいる子どもやジュニア選手に向けてアドバイスをいただければと思います。
まずカーリングについてお話すると、僕は30年以上やっていて日本のカーリング界の中ではトップにいる、競技者としては珍しい方にいるのかなと思うんですけども、ここまでやっぱりやれているのも、カーリングは本当に好きだから、楽しいからというのが大きいです。それがどこで植え付けられたのかと言えば、小学生のとき。氷の上を滑ったり石をぶつけてみたり、その楽しさを大切にしてほしいなと思います。
スポーツ全般に対してのアドバイスは、あまりえらそうに言えないんですけれども、スポーツは何かしら学ぶことがあるものだと思っています。自分自身の気持ちの開き方によって見えるときもあれば見れないこともあるので、なるべく気持ちを開いている時間を増やせるようにして、何かヒントを得たらまた一歩成長できます。そういう姿勢を大切にしてほしいですね。
最後に、食事面でのアドバイスをお願いします。
パフォーマンス、イコール体の出来だと思います。体に入れるものが悪ければ、疲労の回復が図れずにいい練習はできないので、いい競技結果を出したかったら、たくさんいいものを摂取して体をしっかり作ることが大切かなと思います。
山口選手が今食べたい菌勝メシ
コメント
体調を整えるため、栄養バランスの良い食事を意識しています。また、腸内環境を整えることが疲労回復や集中力の維持につながるとも考えています。きのこは低カロリーで栄養価が高く、腸を整えてくれるためよく食べており、こちらのレシピは栄養バランス・食べ応えの点からも試合前後の栄養補給にぴったりですね。
きのこと野菜のナポリタン
きのこに豊富なビタミンB1は、糖質を代謝してエネルギーに変えるのを助けるため、効率的なエネルギー補給を助けます。また、きのこに豊富な食物繊維は、免疫細胞の約7割が存在する腸を整えることで体調管理も後押しします。
profile
(やまぐち つよし)
1984年11月21日生まれ/北海道南富良野町出身/SC軽井沢クラブ所属
小学生の頃カーリングを始める。同級生にトリノ、バンクーバー五輪代表の目黒萌絵、トリノ代表の寺田桜子がいた。ラグビー、カヌーでも活躍したのち、カーリング一本に専念する。青森大学を卒業後SC軽井沢クラブへ。主にサードやスキップのポジションでチームの主軸となり、2018年平昌五輪に出場し8位。また世界選手権は7度出場し、2022年大会では4位。またミックスダブルスでも活躍し、世界選手権に3度出場している。
協力:THE DIGEST



