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適正体重と食事がカギ!妊活中に男女で気をつけたい習慣と栄養素とは

2024.04.08
適正体重と食事がカギ!妊活中に男女で気をつけたい習慣と栄養素とは

近年ではライフスタイルの多様化に伴い、晩婚化や妊娠・出産の高齢化が進むなど、ひと昔前とは妊娠・出産を取り巻く環境が変化しています。医療が発達し、より安心して妊娠・出産できる環境が整う一方で、不妊や産後うつなどまだまだ様々な問題があるのも事実。
このコラムでは、産婦人科医で浜松医科大学名誉教授の金山 尚裕先生に、第2次性徴が始まる思春期から産後ケアまで、妊娠・出産にまつわる様々な問題や悩み、普段の生活でケアできることなどを、シリーズでお伺いします。

初回となる今回は、妊娠について近年問題になっていることや、数年のうちに子どもが欲しいと思う男女が生活の中で意識すべきこと、とるべき栄養素などをお聞きしました。

INDEX

・現代女性に多い「晩婚化」「痩せ」が不妊のリスクに
・徹底した冷え対策で妊娠しやすい身体づくりを
・妊活は女性だけでなく男性も生活習慣の見直しが必要

現代女性に多い「晩婚化」「痩せ」が不妊のリスクに

まず、妊娠にまつわる現代の問題点について教えてください。

近年は不妊に悩む患者さんが増えています。理由として大きいのが「晩婚化が進んでいること」「痩せ体質の女性が多いこと」「生活習慣の乱れ」です。

女性は37歳頃から自然な妊娠が起こりにくくなり、43歳以上になると卵子の老化や排卵が起こりにくくなることから、自然妊娠は大変難しくなります。ですから不妊症の保険適応は43歳未満となっています。

この排卵が起こらない「無排卵」は「生理不順」として症状に現れます。尚、生理は素人用語で、正式な医学用語は月経ですが、本稿は一般向けですので生理という言葉を使わせて頂きます。無排卵による生理不順は40代中頃以降によくみられる症状ですが、現代は生理周期が安定しているはずの20~30代の女性にもみられます。この生理不順が原因で妊娠しにくくなる方が非常に増えています。

なぜ20~30代の女性で生理不順が増えているのでしょうか。

大きな原因が「痩せ」と「生活習慣の乱れ」です。「痩せ」とは、BMI(体重kg ÷ (身長m)²)が18.5未満の人で、日本人女性の約3割が「痩せ」です。妊娠に必要な女性ホルモンは脂肪細胞からも分泌されます。また脂肪細胞からアディポサイトカインといって脳の女性ホルモン刺激因子も産生されます。そのため、痩せていると女性ホルモンの分泌が減り、排卵が起こりにくくなってしまい、結果、不妊に繋がります。

生理不順は病気ではないと考えている方も多いですが、放置すればするほど重症の排卵障害に繋がるため、早めに医療機関に相談することが大切です。

妊娠しやすい身体づくりのためには、自分の「適正体重」を知り、適正体重を心がけることが大切。適正体重は「身長m×身長m×22」で求めることができますので、日々の食事や運動により、維持できるとよいですね。

また、「生活習慣の乱れ」も大きな原因の一つ。ストレスや偏った食生活により女性ホルモンの分泌が減ることで、無排卵を引き起こしやすくなります。
加えて、生活習慣が悪いことで起こる多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)も不妊の原因のひとつです。あまり聞きなれない病気かもしれませんが、女性の約7%が多嚢胞性卵巣症候群といわれています。

多嚢胞性卵巣症候群とは、どんな病気でしょうか。

多嚢胞性卵巣症候群は、排卵しない卵胞が卵巣にとどまり排卵しにくくなる疾患です。生活習慣病のひとつで、朝食を抜く・間食が多い・栄養バランスが悪い・運動不足の人は注意が必要です。治療せずに放置すると不妊の原因になるだけでなく、将来的に糖尿病や高血圧などのリスクも高まります。

徹底した冷え対策で妊娠しやすい身体づくりを

そのほか、数年のうちに妊娠したいと希望している女性が生活の中で意識すべきことはありますか?

身体が冷えると子宮や卵巣などの血流が悪くなるため、とにかく冷えを取ることが重要です。1年中身体が温かい人は不妊症になりにくく、妊娠中も病気にかかりにくくなります。

冷え対策としては、保温性の高い遠赤外線の靴下やレッグウォーマー・足底カイロ、フットバスを使用するほか、ウォーキングエアロビクスなどの有酸素運動がおすすめです。お風呂はシャワーで済ませるのではなく、半身浴などでしっかり汗をかいて内臓の血流を良くしましょう。十分な睡眠やストレスの発散、正しい姿勢を意識することも冷え対策として有効です。

では、数年のうちに妊娠したいと思っている女性が、食事で気をつけることと摂りたい栄養素を教えてください。

まずは健康な身体でいることが前提ですので、栄養バランスのよい食事を、しっかりと3食食べるよう心がけましょう。エネルギーや身体の素になる炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質の三大栄養素はもちろん、これらを効率良く補給するためにはビタミン・ミネラルなどの潤滑栄養素も欠かせません。

身体が冷えている方は、バランスよく食事をすることで、食べたものがしっかりと代謝されるようになるので冷えの改善にも繋がります。他にも、冷え対策には大豆やマグロ、鶏卵、赤身肉などに多く含まれる栄養素「アルギニン」は、体内の一酸化窒素(NO)の産生を高めることで血流を促進する作用があるのでおすすめです。

また、エリンギやブロッコリー、枝豆などに多く含まれる「葉酸」は胎児の成長に欠かせない栄養素です。妊娠1ヶ月以上前からの摂取が推奨されているため、妊活中からしっかり摂取しましょう。葉酸には血管の状態を良くする作用もあり、身体を温めるだけでなく妊娠中の病気予防にも役立ちます。

また、きのこ類や魚類に多く含まれる「ビタミンD」はカルシウムの吸収を高めるだけでなく、免疫力を高めたり、子宮内膜の状態を良くしたりする作用もあり、今特に注目を集めている栄養素です。

このようにみていくと、妊活中に「きのこ」が特に有益であることがわかります。きのこは三大栄養素の代謝に必要なビタミンB群などの潤滑栄養素が豊富なうえ、血行を良くするナイアシンも豊富。また葉酸・ビタミンDなど限られた食材にしか含まれていない栄養素や、腸内環境を整える食物繊維も豊富なため、健康な身体づくりに役立つといえます。

妊活は女性だけでなく男性も生活習慣の見直しが必要

また、不妊の原因は女性にあるものと思われがちですが、実は男女半々だとお聞きしました。妊活中のパートナーを持つ男性が、生活の中で意識すべきことはありますか?

締め付けの強いズボンやパンツばかり履くと睾丸が圧迫され、不妊のリスクになると言われています。精子は熱に弱いため、サウナなどで睾丸を過度に温めること良くありません。また、禁欲期間を不要に長くすると精子が弱ってしまうため、適度に排出することも大切です。

妊活中のパートナーを持つ男性が食事で気をつけることや摂りたい栄養素はありますか?

女性と同様に、まずは男性も生活習慣を整え、栄養バランスのよい食事をとることが大切です。栄養バランスが偏っていたり、脂質の多い食事をとりすぎたりすることで精子の状態が悪くなるため、普段の食事で不足しやすいきのこ・野菜を意識的に摂ることで「ビタミン・ミネラル」をしっかりとることや、糖質・脂質の吸収を穏やかにする「食物繊維」の豊富な食事を心がけましょう。
また、先程説明した「アルギニン」や、ナッツ類や貝類、赤身肉、卵などに多く含まれる亜鉛も、精子の状態を良くしてくれます。

妊活は女性だけでなく、男性も積極的に取り組むべき問題です。そして、日々の食事や生活習慣を見直し、男女ともに健康的な身体に近づくことが健康的な妊娠・出産への近道。ストレスや偏った食生活、栄養不足など、身体に負担がかかった時、一番先に障害が起こるのが生殖機能です。ぜひ、お互いを思いやり、協力し合いながら、日々の生活習慣の中で工夫できることを話し合ったり、見直したりして、まずは健康な心身を維持していただければと思います。

profile

金山 尚裕(かなやま なおひろ)

浜松医科大学 名誉教授/静岡医療科学専門大学校 学校長
日本産科婦人科学会 名誉会員/日本周産期・新生児医学会 監事・名誉会員/日本生殖医学会 功労会員/日本分娩研究会 理事長/日本胎盤学会名誉会員/日本妊娠高血圧学会名誉会員

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