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Do My Best, GO! 〜アスリートインタビュー

プロアスリートを支える食事に迫る。第60回 サッカー・浅野拓磨選手インタビュー

2025.11.01
プロアスリートを支える食事に迫る。第60回 サッカー・浅野拓磨選手インタビュー

アスリートへのインタビューを通し、明日への一歩を応援する「Do My Best, Go!」。今回は、2022年カタールワールドカップ・ドイツ戦で決勝ゴールを叩き出し、ベスト16入りの原動力となった浅野拓磨選手(マジョルカ=スペイン)のインタビューをお送りします。これまでのキャリアや転機の際に考えたこと、カタールW杯までの道のり、そしてアスリートの食生活まで幅広くお話しいただきました。

▶ 浅野選手の食事インタビューはこちら

浅野選手は幼少期から30年近くサッカーをしていらっしゃいますが、まず、これまでのキャリアにおける人生の転機をいくつか挙げていただけますでしょうか。

1つ目は中学校から高校に上がる時でした。それが非常に大きなターニングポイントだったと思います。僕は地元・菰野町(三重県)の八風中学校でサッカーをしていましたが、もともと強豪校の四日市中央工業高校に行くという選択肢は全くなかった。僕の家は大家族でお金のことで両親に負担をかける道は進めない。それでもサッカー選手になるという夢は持っていたので、どういう道のりでプロになるべきかという悩みを抱えていました。

そんな時に、(顧問の)先生が「高校3年間は両親、家族全員に苦労をかけるかも分からんけど、3年後に自分で返していけば、ええやないか」と言ってくれた。そう聞いた瞬間、確かにそうだと腑に落ちたんです。

中学3年生はまだ子どもですから、基本的には目の前のことしか見ることができない。でも、先生から3年後、5年後という先のビジョンで物事を見据えることの大切さを教えてもらえた。それは大きな意味がありました。3年間苦しくても、4年目に花が咲けばいいといった考え方はプロになってからも通じますよね。自分も3年後にどうなっているか分からないという怖さはありましたけど、そこで決断できたことが本当に大きかった。あの時の自分を褒めてあげたいと思いますね。

四中工に行かなければ、高校サッカー選手権での大活躍も、サンフレッチェ広島でプレーするというプロ入りの道を切り開くこともできなかったかもしれませんね。その他のターニングポイントについても教えていただけますか。

2016年夏の海外移籍ですね。僕は広島で2015年から活躍し始めて、その年のE-1選手権で日本代表になれましたが、その頃には海外へ行くという考えがすでに自分の中にありました。

でも「自分はまだ広島で何も成し遂げていない」という思いもあって、代理人や家族にも相談しましたが、やっぱり正解は自分の中にしかない。悩んでいたタイミングで、欧州組も含めた日本代表合宿に初めて参加することになり、ウォーミングアップのジョギングをしていた時に香川真司さん(C大阪)から「お前、海外来るの?」と声をかけられました。移籍を迷っていることを真司さんに伝えると「え、迷う必要ないやん」とあっさり言われて、笑顔で「ウエルカム・トゥ・ジャーマニー」と僕に握手を求めてきたんです。その瞬間、この握手をしたら俺はもう絶対ドイツに行くだろうなと思いましたね。

その後、ドイツ行きを決めた浅野選手ですが、アーセナル(イングランド)からビッグオファーが舞い込みました。

そうなんです。ドイツ行きを代理人に伝えたあとにアーセナルから話が来た。それもターニングポイントでした。その時も、活躍できるのはどっちなのか、成長に繋がるのはどっちなのかと考え続けているうちに、ドイツのクラブとの契約日が迫ってきたんです。

そんなタイミングで森保さんとも話をすることができたんです。森保さんから「拓磨のファンの一人としては拓磨がアーセナルのスタジアムに立っている姿を見てみたいな」という言葉をもらった瞬間にアーセナルに行こうと心が決まりました。

恩師の森保さんが背中を押してくれたんですね。

森保さんの言葉だけではなくて自分を応援してくれている人がサッカー選手としてどんな姿を見たいかをイメージした時、それならアーセナルだろうと感じたんです。サッカー選手をやっている意味ってこれだなとすごく思えたし、チャレンジして失敗したらしゃあないわっていうくらいの気持ちになれたんです。

その後、浅野選手は2016年夏にアーセナルからレンタルでドイツのシュツットガルトに行き、代表にも定着していましたが、2018年ロシアW杯では最後の最後で落選に。その悔しさをバネに海外での戦いを積み重ね、2022年カタールW杯をつかみました。

何があっても次に進んでこれたのは、周りの人たちがいてくれたからです。その環境に感謝したいと思いますね。カタールの時も、これまでに見てきた先輩の姿、今まで聞いた言葉は脳裏にちゃんと刻まれていたと思います。だから、あの時はもう全てを出すという気持ちだけ。怪我をしても何でもいいから、とにかく出し切ることだけを考えてのぞみました。

結果的にドイツ戦でゴールは決めましたが、カタールは悔しい思い出しかない。自分は次のW杯に向けて進んでいるので、僕の中では自分を成長させてくれた過去の一つでしかない。全ては次の2026年北中米W杯次第だと思います。

2024年夏にスペインへ赴いたのも、自分の幅を広げたかったからですか?

そこまではあまり考えてなかったですけど、僕自身は1つの目標としていろんな国でプレーしてみたかった。レベルの高いところというのが前提ですけど、ドイツでは自分がどういう選手かというイメージがつかめたので、他の国に行って、未知なる自分を知りたいという気持ちがありました。もちろんフランスやイタリア、イングランド・プレミアでもプレーしたいっていう気持ちは常にありますけど、スペインからの話があった時に行ってみたいと思えたのは確かです。

ここからは食生活ついて教えてください。浅野選手は専属の料理人をつけているということですが、いつ頃からですか?

僕が料理人をつけたのは、ハノーファー(ドイツ)でプレーしていた2019年の頭だったと思います。日本にいた頃の自分はずっと寮に住んでいたので、食事管理をしてもらっていました。当時から揚げ物を摂らないなど、日本代表でプレーするために何が必要なのかというのは考えていましたが、2016年夏に海外に行ってからはそれを自分で考えなければいけなくなりました。

シュツットガルトでの2年間は自炊したり、チームで提供される食事を摂ったり、できる限りの食事管理はしていましたけど、「これじゃあ足りないな」というのはずっと感じていた。もっといい選手になるために必要なことの1つが食事だったので、ずっと料理人をつけたいと考えていて、マネージャーとも相談しながら、料理人を探し、専属契約するに至りました。

そこからはメニューなども任せる形にしたのですか?

はい。料理人にお任せしていました。長く面倒を見てもらっていた栄養士とコミュニケーションを取ってもらいつつ、メニューを考えて作ってもらっていました。そして、途中で自分の5番目の弟(史也さん)に「料理人をやらないか」と打診しました。それでボーフムに移籍した2021年夏からは弟と同居して、食事を作ってもらっています。

そういう中で、最近は腸内環境のことを考えるようになったそうですね。

はい。この歳になって感じるのは、いろいろなものを積み重ねてきたなということ。良くも悪くも経験があるから今の自分がいるわけですが、コンディション的にも積み重なってきているものがあるなと実感しています。少しでも選手として成長するためにやれることはあると思いますし、それ次第でコンディション面がもっとよくなるかもしれない。その1つとして考えられるのが、食事や睡眠、トレーニングのところです。

特に食事に関しては「今まで自分に何が足りなかったんだろう」「何が必要なんだろう」と真剣に考えるようになって、腸内環境がコンディションを左右するのではないかと思い当たりました。良い食事とされているものを食べるだけでいいコンディションを作れるかというと、そんな簡単なものじゃないだろうなと。これまでも食事を突き詰めてきましたけど、リカバリーが追いついていないから怪我してしまうのかなとも感じています。

昨年も筋肉系の怪我がすごく多かった。それを克服するためにも、腸内環境に目を向けることは大切なのかなと。きのこは腸を整えるのに役立つ食材だと思いますので、これを機にもっと注目したいなと感じています。

欧州に住んでいると、きのこ類は手に入りやすいですよね。

そうですね。きのこ類は結構な頻度で食べていますね。僕はもともと好きなので。しいたけとかシメジ、エノキ、エリンギ、また平べったいマイタケも好きです。料理人の史也も栄養素や腸内環境を考えて入れてくれていると思います。

外食に行ってもきのこ料理があったら自然と取りますね。体にいいイメージのものは真っ先に取るタイプなので。無意識ですけど、僕を支えてくれている食材の1つになっていますね。

どのような食べ方がお好きですか?

鍋もそうですし、何でも好きですね。欧州だときのこの炒め物とか、味付けされているきのこがバイキングでも出てきますし、結構食べる機会は多いです。サラダにも入っていますし、いろいろな食べ方をしています。

2026年W杯まで1年を切りました、意気込みをお聞かせください。

意気込みというのか、僕のなかでは絶対に行くと思っているので、そのために過ごしています。ただ、そのためには必要なことを1つでもサボったり、やらなかったら行けなくなってしまうし、全てをやり切ったら大舞台に立てる未来が待っている。答えは見えている状態なので、やるべきことの1つ1つを本当にやり続けるだけだなとは思います。それで結果的に行けるか行けないかはもうその時にならないと分からない。それまでの自分に何ができるかっていうのをつねに考えながら、1回の練習、1回の食事にこだわっていきたいです。

では、プロ選手を目指しているジュニアアスリートへのアドバイスをお願いします。

今は何よりも楽しむことが大事だとは思います。それがないと、なりたい自分には辿り着けないというのは、どの世界でも同じかなと思います。仮にサッカー選手になれなかったとして、次の夢を目指そうとした時も、楽しくなければ絶対に叶わない。どれだけ苦しくても、悔しくても、その瞬間さえも楽しいと思えるような時間の過ごし方をしてほしいです。そのためにも、自分が100%でやれるかどうかが大事。1日1日を全力で過ごせるかどうかが本当に重要です。

僕自身が中学から高校に行った時の話にもつながりますけど、今しか見えていないと、怖くなったり、チャレンジしづらいかもしれないですけど、5年後とか10年後を見据えれば、今、悩んでいることなんてちっぽけなものに思えてくる。1年後、5年後、10年後に自分がどうなりたいかという夢や目標を子どもたちには持ってほしいと思いますね。

では最後に、浅野選手が考える「食事の重要性」について教えてください。

食事というのは本当に正解がないもの。模索を続けていくことにはなりますが、来年は2026年北中米W杯に出場して結果を残すことが自分にとっての正解になります。時間は1年もないですけど、そのための1食1食にこだわっていきたいと思っています。あまりストレスを抱えてもよくないですけど、僕は幸いにして好き嫌いが全くない。何を食べても美味しく感じられる人間なので、1食も本当妥協しないくらい突き詰めて、食事から成長していきたい。そう考えてこの1年間、取り組んでいきます。

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コメント

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profile

浅野 拓磨

(あさの たくま)

1994年11月10日生まれ、三重県三重郡菰野町出身。
四日市中央工業高校―サンフレッチェ広島―一シュツットガルト→ハノーファー→パルチザン・ベオグラード→ボーフム→マジョルカ。
7人兄弟の三男として生まれ、兄弟の影響で幼少期からサッカーを始める。四日市中央工業へ進学後、多くのJクラブから注目され、2013年にサンフレッチェ広島入り。2015年E-1選手権で日本代表デビュー。2016年にはリオデジャネイロ五輪にも参戦。同年にアーセナルへ完全移籍し、そこから当時ドイツ2部のシュツットガルトへレンタルされ、欧州キャリアの第一歩を踏み出した。2018年ロシアW杯では落選という挫折を乗り越え、広島時代の恩師・森保一監督とともに2022年カタールW杯でメンバー入り。ドイツ戦で決勝弾を挙げるという歴史的快挙を果たした。
2024年夏からは欧州5クラブ目となるスペイン1部・マジョルカに新天地を見出した。24-25シーズンは負傷の影響でフル稼働とはならず、日本代表からも遠ざかる形となったが、本人は2026年北中米W杯参戦を目指し、25-26シーズンに全力を注いでいる。

協力:THE DIGEST