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女性の健康と一生

認知症は女性に多いってホント?閉経後に高まるリスクと今日からできるセルフケア法

2026.03.09
認知症は女性に多いってホント?閉経後に高まるリスクと今日からできるセルフケア法

「女性の健康と一生」をテーマに、女性特有の身体の変化やその対策について、食事のポイントとともに毎月さまざまな話題をお届けする本コーナー。

今回は、男性よりも女性に多いとされる「認知症」についてご紹介します。

認知症は様々な種類がありますが、その中でも約6〜7割を占めるアルツハイマー型では、患者の約3分の2が女性だといわれています。その背景には、閉経を境に急激に減少する女性ホルモン「エストロゲン」の影響が深く関係していると考えられています。

そこで今回は、産婦人科医で浜松医科大学名誉教授の金山先生に、女性の方が認知症になりやすい詳しい原因や、生活習慣や食事でできる予防法についてお聞きしました。

INDEX

認知症患者が男性よりも女性に多いのはなぜ?

はじめに、認知症が男性よりも女性に多い理由を教えてください。

女性の方が多い大きな要因の一つとして考えられるのが、女性ホルモンである「エストロゲン」の減少です。エストロゲンは、脳の視床下部や中脳、大脳などさまざまな部位の機能に関わり、自律神経のコントロールにも影響を与えています。

閉経を境にエストロゲンが急激に低下することで脳への刺激も減少するため、神経細胞の働きや脳機能の維持に影響が及び、認知機能の低下につながる可能性があると考えられているのです。

女性ホルモンのエストロゲンが、脳の働きに影響を与えているということですね。

例えば、代表的な脳の神経伝達物質の一つにGABAがありますが、エストロゲンからの刺激が減少すると、このGABAの働きも低下するといわれています。

GABAは神経の興奮を抑え、ストレスや緊張状態を緩和する役割を担っているため、その作用が弱まると、イライラ感やのぼせ、ほてりなど、自律神経の乱れによるさまざまな症状があらわれやすくなります。こうした変化が重なることで、脳の健康維持が難しくなる可能性があるのです。

一方、男性の場合も男性ホルモンである「テストステロン」が認知機能に関係しているとされています。ただし、その減少は女性ホルモンとは違って急激ではなく、比較的緩やかに進むため、女性ほど大きな影響は受けにくいと考えられています。

女性と男性では、認知症のなりやすさにどれくらいの違いがあるのでしょうか?

先ほどもご紹介しましたが、認知症には複数の種類があり、その中で約6〜7割と最も大きな割合を占めるのが「アルツハイマー型認知症」です。そして、アルツハイマー型患者の約3分の2は女性であるといわれています。

もちろん、女性の平均寿命が男性に比べて約6年長いことも一因と考えられますが、女性ホルモンの急激な減少の影響も大きいといえるでしょう。

さらに、専業主婦をされていて家に一人でいる時間が多い女性の場合は、脳を刺激する機会が比較的少ない傾向もあります。そうしたことも、認知機能低下に拍車をかけていると考えられています。

女性ホルモンの激減を防ぐためにできることとは

女性ホルモンの急激な減少の影響により、女性の方が男性よりも認知症になりやすいとわかりました。そのリスクを少しでも減らすために日頃からできることはありますか?

閉経後に起こるエストロゲンの急激な減少を防ぐためにも、40代後半ごろからかかりつけの産婦人科へ定期的に通うことが大切です。自分のホルモン状態や体調の変化を早めに把握し、適切な対応を取ることが予防につながります。

特に、のぼせやほてりなどの更年期の症状が強くあらわれている場合には、女性ホルモン療法も有効な選択肢の一つです。エストロゲンを適切に補うことで、それらの症状の改善が期待できるだけでなく、脳への刺激を維持できる可能性も期待できます。

また、若い頃にピルを長期間使用していた女性は、認知機能があまり低下しない、あるいはアルツハイマー型認知症が発症しにくいという報告もあります。

これは、ピルを服用することで女性ホルモンが安定し、月経前症候群や月経時のホルモン変動が抑えられることが良い影響を与えているとされ、こうしたホルモン環境の安定が、脳や卵巣機能にとって良いと考えられています。

閉経後時間が経過してしまった場合は、ホルモン補充療法の効果はないのでしょうか?

女性ホルモン療法は、エストロゲンが急激に減少する40代後半あるいは閉経直後から始めるのが一般的です。閉経の平均年齢が51〜52歳だとすると、60歳ごろまでは効果があるといわれています。

つまり、閉経してから6〜7年以内であれば女性ホルモン療法の効果が出るかもしれませんが、60歳を過ぎてから新たに始めても十分な効果は得られにくいと考えられています。これは認知症予防に関しても同様の傾向が指摘されています。

また、産婦人科ではエストロゲンの低下への対処として、女性ホルモン療法の前に生活習慣の見直しや漢方療法から始めるケースも多いですね。食事や睡眠、運動習慣の改善によって体質改善を図り、それでも改善が不十分な場合にホルモン療法を検討するという流れが多いと思います。

「生活習慣の見直し」というお話もありましたが、認知症予防のためにどのようなことを心がけるとよいでしょうか?

いくつかご紹介いたしますが、1つ目は適度な運動です。ウォーキングなどの有酸素運動は血流を改善し、脳への酸素や栄養の供給を促します。また、神経伝達物質であるGABAの働きをサポートするともいわれています。
運動といってもランニングなどのハードな運動である必要はありません。週に2〜3回、30分程度のウォーキングでも十分に効果が期待でき、無理なく定期的に続けることが大切です。

更年期以降の運動不足は、いわば「運動不足病」とも表現され、病気に近い状態だともいえます。運動は「良い薬を飲むのと同じくらいの効果がある」と考えて、積極的に取り入れていただきたいですね。

2つ目に、睡眠の質を保つことも欠かせません。慢性的な不眠は脳に負担をかけ、GABAの働きにも影響を及ぼすと考えられているため、生活リズムを整え、深い睡眠を確保することが大切です。

また、閉経後に卵巣機能が低下しても、完全に働かなくなるわけではではありません。脳からの刺激があれば卵巣機能も活性化する可能性もあるといわれています。おしゃれをしたり、夢中になれる趣味や推しを作ったりすることも、心身へのよい刺激につながるかもしれませんね。

脳の健康維持には、栄養豊富な食材「きのこ」も効果的!

認知症のリスクを減らすために、「食事」でできることもありますか?

はい、3つ目にご紹介したいのがまさに「食事」です。
女性ホルモンを減りにくくするためには、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きを持つ「イソフラボン」を意識してとることも一つの方法です。イソフラボンは大豆や豆腐などの大豆製品に豊富に含まれており、更年期対策としても広く知られています。

加えて、認知機能の維持のために積極的な摂取をおすすめしたい食材が「きのこ」です。
きのこには脳の神経伝達物質である「GABA」が豊富なため、脳の健康維持に効果的です。また、きのこなど一部の菌類のみが生み出せる「エルゴチオネイン」という抗酸化成分には、認知機能を維持する効果が期待されています。(詳細は こちら

また、GABAやエルゴチオネイン、きのこに豊富な「オルニチン」には睡眠の質向上をサポートする働きもあるため、質の良い睡眠で脳のストレスを緩和させるのにも役立つ可能性があります。ぜひ意識して毎日の食事にとり入れていきましょう。

他に、脳の機能を助けるような栄養素があれば教えてください。

脳の機能を助ける栄養素で知っていただきたいのは、「ビタミンB1」です。ビタミンB1は糖質の代謝を促し、脳の主要なエネルギー源であるブドウ糖をつくるのを助ける働きがあります。

脳は大量のエネルギーを消費する臓器のため、エネルギー不足はそのまま機能低下につながってしまいます。ビタミンB1が欠乏すると「ウェルニッケ脳症」という神経機能や脳機能が低下する病気になることもあるため、注意が必要です。

きのこにはこのビタミンB1も豊富なため、脳のエネルギー源となる糖質と合わせてとり入れて脳機能をサポートしていきましょう。

最後に金山先生から読者の方へ、アドバイスなどがあればお願いします。

ここまでお伝えしてきた通り、女性に認知症が多い背景には、女性ホルモンの大きな変化が関わっていると考えられます。特に、閉経前後は心身にさまざまな変化があらわれやすい時期です。そのため、身体の変化を正しく理解し、脳や心身のサインに目を向けることが、将来の健康を守る第一歩になります。

ご自身の身体と丁寧に向き合いながら、バランスのよい食事や適度な運動、整った生活習慣を意識して、いきいきとした健康的な毎日を過ごしていきましょう。

profile

金山 尚裕(かなやま なおひろ)

浜松医科大学 名誉教授/静岡医療科学専門大学校 学校長
日本産科婦人科学会 名誉会員/日本周産期・新生児医学会 監事・名誉会員/日本生殖医学会 功労会員/日本分娩研究会 理事長/日本胎盤学会名誉会員/日本妊娠高血圧学会名誉会員