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女性の健康と一生

女性に多い「貧血」。セルフチェックの方法と予防に欠かせない栄養素とは?

2025.10.13
女性に多い「貧血」。セルフチェックの方法と予防に欠かせない栄養素とは?

「女性の健康と一生」をテーマに、女性特有の身体の変化やその対策について、食事のポイントと共に毎月様々な話題をお届けする本コーナー。
今回は、女性に多いといわれる「貧血」の原因やセルフチェックの方法、食事でできる予防法についてご紹介します。

日本人女性の約40%、なかでも20代から40代の月経のある女性の約65%は貧血だと言われていることをご存じでしょうか?

「女性に貧血が多いと聞くけど、なぜ?」「娘が貧血みたいだけど、どんな影響が考えられるんだろう?」「自分が貧血かどうか、セルフチェックできる方法はあるのかな?」―貧血に対して、このような疑問や不安を持っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、産婦人科医で浜松医科大学名誉教授の金山先生に、女性に貧血が多い理由や、自分でできるチェック方法、予防のために摂りたい栄養素などをお聞きしました。

INDEX

女性に貧血が多い理由とは?

男性と比べて女性には貧血の人が多いと聞きます。まずは、その理由を教えてください。

女性に貧血が多い理由の一つは、月経により毎月出血があることです。出血量が正常範囲であれば貧血にはなりませんが、出血量が多い方や、期間が長く続く方は、貧血につながりやすいですね。
その他には、鉄分などの栄養不足も貧血の原因として挙げられます。そのため、ダイエットをしている女性は、必要な栄養素が足りず貧血になってしまうケースも少なくありません。

月経の量や期間について、注意をした方が良い人の特徴を教えてください。

例えば、血の塊が多い方は注意をした方がいいですね。具体的には、月経2日目に少量の血の塊が1個程度であれば心配ありませんが、3個も4個も出る方は要注意です。
また、月経2日目や3日目に夜用ナプキンを頻繁に交換しなければならないほどの経血量がある方や、7日以上月経が続くような方も、高い確率で貧血だといえるでしょう。それだけではなく、子宮筋腫の可能性も少なくありませんから、ぜひ一度、産婦人科を受診してみてほしいと思います。

長期間の貧血状態が招く様々なリスク

貧血になりやすい年齢、なりにくい年齢はありますか?

月経がある20代から40代は、特に貧血になりやすい年代です。ただし、閉経後であれば貧血の心配がなくなる、というわけではありません。更年期以降はホルモンバランスの変化により、鉄分などの栄養素の吸収がうまくできず、貧血になりやすい人もいるためです。
また、10代や20代前半には、無理なダイエットや偏った食生活などが原因で貧血になっている方も多いですね。
さらに、妊娠中も貧血のリスクが高まる時期です。胎児の赤血球を作るため、鉄分などの栄養素が通常よりも不足します。貧血になると、胎児の発育や脳の発達へ影響を及ぼす可能性があるため、妊娠前から必要な栄養素は意識的に摂取しなければなりませんね。

10代や20代前半の若年層の貧血には、どのような影響がありますか?

貧血は、全身に酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が足りていない状態です。酸素が全身に行き渡りにくくなると、集中力がなくなる、疲れやすくなる、立ちくらみをしやすくなる、といった症状がでることがあります。そのような状態では、学業や部活動のパフォーマンスも落ちてしまう可能性が高いですね。
さらに、貧血の状態で酸素を全身に届けようとするため、心臓にも負担がかかります。心肥大や心不全につながるリスクもあるので、長期にわたって貧血を放置しないようにしましょう。

まぶたや爪の状態でわかる!簡単セルフチェック法

では、貧血かどうかをセルフチェックすることはできるのでしょうか?

「貧血かどうか」を確認するには、病院で診察や血液検査を受けるのが確実ですが、自宅で簡単にできるセルフチェックの方法もあります。

例えば、「まぶたの裏の色」を見てみてください。健康な場合は赤みがありますが、貧血の方は白っぽく見えます。まぶたの裏の色は、家族や友人など貧血のない健康な方と比較すれば大まかな貧血の有無は判ります。
同様に、「爪の状態」からもセルフチェックができます。爪の色が白っぽかったり、もろくて剥がれやすくなっていたりする場合は、貧血のサインかもしれません。
また、顔色が青白い、血色が悪いといった変化がある場合も要注意です。
これらに一つでも当てはまることがある人は、「自分は大丈夫だろう」と自己判断せず、一度病院で血液検査を受けてみることをおすすめします。

貧血を予防する栄養素とは?

貧血になる方は、どのような栄養素が不足しているのでしょうか?

貧血予防に特に重要なのは、ミネラルです。中でも鉄と亜鉛の両方、またはどちらかが不足していると貧血になりやすいですね。
貧血と聞くと「鉄不足」のイメージが強いため、鉄分さえ摂取できていれば貧血にならないと考えている方も少なくないかもしれません。
しかし実は、亜鉛も酸素を運ぶ働きのあるヘモグロビンの生成に不可欠な栄養素なのです。そのため鉄分が十分に摂取できているにもかかわらず、亜鉛不足が原因で貧血になる人がいます。レバーや赤身肉の他に、きのこにも豊富に含まれています。
特に、マイタケなどには鉄と亜鉛の両方が含まれるので、積極的に取り入れるのがおすすめです。

鉄分が摂取できればよいのかと思っていましたが、亜鉛も必要なのですね。

そうですね。さらに、赤血球を直接つくる働きを持つビタミンに、ビタミンB6、B12、葉酸があります。これらが不足すると、質の良い赤血球をつくることはできません。
先ほど妊娠中の貧血に注意をしてほしいとお伝えしましたが、妊娠前から「葉酸を摂りなさい」と言われるのは、葉酸が胎児の先天異常の予防に加え、造血作用を助ける働きがあるからなのです。きのこには、ビタミンB6、B12、そして中でも葉酸が豊富に含まれるため、しっかり食事に加えていきましょう。

食事だけでは補えない方におすすめの予防法はありますか?

鉄分は、「腸」からしか吸収することができません。そのため、貧血を予防・改善するためには、まず必要な栄養素を身体に取り入れることが基本となります。毎日の食事から摂取することが望ましいですが、必要に応じて鉄剤などのサプリメントを活用することも可能ですよ。

ただし、注意すべき点もあります。鉄剤を長期にわたって服用しているにも関わらず、貧血がなかなか改善されていないケースもあります。そのような場合は、鉄分だけでなく、亜鉛やビタミン類の不足が貧血の原因となっているかもしれません。
また、鉄分を過剰に摂取しすぎてしまうと、身体に悪影響が出ることがあります。鉄分は体内で活性酸素を発生させ、老化を促進するリスクを持つため、貧血が治っているにも関わらず鉄分を長期間摂取し続けるのはおすすめできません。鉄分は「不足しているときに必要な量を補うもの」と考えていただき、「貧血になるのが不安だから、とりあえず鉄剤を飲む」という自己判断による服用は避け、食事から取り入れるように心がけましょう。

日々のバランスの良い食事で、貧血は予防できる!

最後に、金山先生から読者へのメッセージをお願いします。

貧血にならないためには、10代から栄養バランスの良い食事を意識することが大切です。特に、無理なダイエットは鉄分不足などを引き起こし、日々のパフォーマンスを下げることに繋がります。それだけではなく、将来貧血のまま妊娠をしてしまうと、胎児にまで影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要です。

しかし、ここまでお伝えしてきた通り、まぶたの裏や爪の状態を見ることで、貧血かどうかをセルフチェックすることが可能です。自分でチェックをしてみて違和感があれば病院で診察や血液検査を受けてみてください。
貧血は食事で予防や改善ができます。鉄・亜鉛・ビタミンB群・葉酸などを日々の食事から意識的に摂取して、貧血になりにくい身体を作っていきましょう。

profile

金山 尚裕(かなやま なおひろ)

浜松医科大学 名誉教授/静岡医療科学専門大学校 学校長
日本産科婦人科学会 名誉会員/日本周産期・新生児医学会 監事・名誉会員/日本生殖医学会 功労会員/日本分娩研究会 理事長/日本胎盤学会名誉会員/日本妊娠高血圧学会名誉会員