女性に多い“膀胱炎・尿もれ”。泌尿器疾患が起こりやすい理由と生活の中でできる対策法とは
2026.01.12
「女性の健康と一生」をテーマに、女性特有の身体の変化やその対策について、食事のポイントと共に毎月様々な話題をお届けする本コーナー。
今回は、「女性特有の病気」の中でも、年代を問わず多くの女性が悩みを抱えやすい「泌尿器疾患」について、具体的な症状や食事でできる予防法をご紹介します。
くしゃみをしたときの尿もれや、何度もトイレに行きたくなる頻尿、そして膀胱炎。このような泌尿器の悩みは、多くの女性が経験していますが、「年齢のせいだから仕方ない」「恥ずかしくて相談できない」と思い込み、我慢している方も少なくありません。また、特に40代以降は女性ホルモンの変化によって症状が現れやすくなるといわれています。
しかし、放置すると症状の悪化につながるケースもあるため、正しい知識と日常のケアで予防をしていきましょう。
そこで今回は、産婦人科医の金山先生に、女性に多い泌尿器疾患の主な症状や特徴、更年期との関係、さらに毎日の生活で意識できるケアや栄養のポイントについて伺いました。
INDEX
女性の身体は膀胱炎にかかりやすい?

まず「女性に起こる泌尿器疾患」について、代表的なものを教えてください。
女性は年代に関わらず尿道口から膀胱までの距離が短いため、一般的に男性よりも膀胱炎などの尿路感染症や、尿漏れなどの疾患にかかりやすい傾向があります。さらに、長時間排尿を我慢してしまうことで、膀胱炎を発症することも少なくありません。
世代に関わらず、女性は膀胱炎や尿失禁になりやすいというお話でした。世代によって症状がでやすい泌尿器疾患はありますか?
閉経後にはさまざまな泌尿器疾患を発症しやすくなりますが、その一つが「膀胱下垂」です。女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、子宮を含めて膀胱を支える筋肉が減少し、膀胱が下がってくることが原因とされています。膀胱下垂は、頻尿や残尿感、尿もれといった症状を引き起こすほか、膀胱炎の原因となることもあります。特に、出産を複数回経験している方や、骨盤底の筋肉がもともと弱い方などは膀胱下垂になりやすいと言われています。
閉経後には女性ホルモンの減少により、さらに膀胱炎や尿漏れの症状が出やすくなるのですね。
そうですね。さらに補足すると、閉経後の尿漏れには大きく2つのタイプがあります。1つは「腹圧性尿失禁」、もう1つは「切迫性尿失禁」です。
腹圧性尿失禁は、膀胱下垂などが原因により、咳やくしゃみをしたときなどお腹に力を入った際に尿が漏れてしまうタイプです。
一方で切迫性尿失禁は、膀胱に関わる神経の働きが変化することで突然尿意を感じ、トイレに行く前に漏れてしまう症状です。切迫性尿失禁は、副交感神経を調整する薬などで改善が期待できる場合も多いので、まずは早めに医療機関の受診をおすすめします。
女性ホルモンの減少が泌尿器疾患の原因に
その他にも、更年期になりやすい泌尿器疾患があれば教えてください。
閉経後には「無菌性膀胱炎」も増えます。これは、女性ホルモンの減少により尿道や膀胱の萎縮性変化(組織が本来の機能を失って薄く縮むこと)が原因で、細菌がいないのにも関わらず膀胱炎の症状が出てしまう疾患です。
泌尿器科で細菌が検出されなかった場合でも、産婦人科で女性ホルモン治療を行うことで、症状が改善するケースもありますよ。また、同じく膀胱や尿道の萎縮性変化が原因で、血尿が出る場合もあります。内科や腎臓内科、泌尿器科で調べても明らかな異常が見つからなかった方は、産婦人科を受診してみるのも良いと思います。
他にも、血尿の原因はあるのでしょうか?
尿道口の入り口にできる「尿道カルンケル」という小さなポリープが、血尿の原因となっている場合もあります。尿道カルンケルは、は尿道の入り口を直接診察しないとわからないため、内科では見つからないことも少なくありません。この尿道カルンケルも、女性ホルモンを2〜3週間投与することで改善することが多いですよ。
膀胱炎を予防するために今日からできること
全世代の女性に多いという膀胱炎について、日常生活でできる予防法はありますか?
膀胱炎は女性の身体の構造上、どうしても起こりやすい疾患です。それを防ぐポイントとしては「腟内の乳酸菌」があげられます。健康な女性は、腟内だけでなく尿道口周辺にも乳酸菌が存在し、外部からの雑菌の侵入を防いでいます。しかし、尿道口周辺に乳酸菌が減少したり存在しなくなったりすると雑菌が入り、膀胱炎を起こしやすくなります。
尿道口周辺に乳酸菌が存在する環境を保つためには、腟内に乳酸菌がいる状態を維持しなければなりません。その一つの方法として、乳酸菌や乳酸を含んだデリケートゾーン用のボディソープを使うのもおすすめです。腟内乳酸菌のpH(アルカリ性の度合い)はおよそ4程度の弱酸性であるため、pH4〜5程度のボディソープを毎日使うことが、乳酸菌の維持に役立ちます。
また、膀胱炎になりやすい方の中には、排尿を我慢する傾向があります。排尿を我慢せず、尿量を増やすことも膀胱炎予防につながります。カフェインを含む飲み物を補給するだけでなく、きのこ類や納豆などカリウムが豊富な食材には利尿作用がありますので、普段の食事に取り入れていきましょう。
膀胱炎を防ぐために、他にも自分でできることはありますか?
膀胱炎の原因となる雑菌を増やさないためには、身体の免疫機能を高めなければなりません。免疫機能を高めるには、手足の末端などの冷えを防ぎ「末梢循環」を良くすることが大切です。栄養バランスの良い食事に加え、適度な有酸素運動や質の良い睡眠を意識して、末梢循環の促進をしましょう。
実は、免疫を支えるうえで欠かせないのが「腸」の働きです。
腸は免疫細胞の約7割が存在している重要な器官であるため、腸を整えることで健康の維持・増進につながります。
そこで意識したいのが、食事で腸を整えること。中でもおすすめの食材が『きのこ』です。
きのこには食物繊維が豊富に含まれており、臨床研究からも腸内環境を整える効果があることが知られています。また、きのこには、食物繊維の一種で免疫細胞に働きかけると言われるβグルカンも豊富に含まれているため、免疫力を高めるのにも役立ちます。
さらに、腸内の善玉菌が食物繊維を代謝することで増える「短鎖脂肪酸」は、免疫機能の向上をサポートする働きがあり、この短鎖脂肪酸は、きのこを食べることで増えることもわかっています。

他にも、きのこには血行を促す働きをもつ「ナイアシン」や、糖質を代謝することで熱を作りだす「ビタミンB1」も豊富なため、日々の食事にきのこを意識的に取り入れていくことが、身体の内側からの予防につながります。
泌尿器疾患は我慢せずに受診を

では、膀胱下垂や血尿などを防ぐために、日頃からできることはありますか?
骨盤底の筋肉を落とさないためには、骨盤底筋を鍛える筋トレや体操を日頃から行うことが大切です。
例えば、「肛門を締めて10秒キープすることを数回繰り返す」「椅子に座り、膝と膝を軽くくっつけた状態でテレビを見る」などの日常生活の中でもすぐに始められる筋トレは、無理せず続けられるのでおすすめですね。また、筋肉量の維持には、運動だけでなく栄養面からのサポートも欠かせません。きのこに含まれるビタミンB6は、たんぱく質の代謝を促す働きがあるため、効率の良い筋肉づくりをサポートしてくれます。骨盤底筋を意識した運動と合わせて、ぜひ取り入れてみてくださいね。
一方で、腎臓内科や泌尿器科で調べても原因がわからない血尿は、女性ホルモンの減少による尿道や膀胱の萎縮性変化によるものであることが多いです。それらを防ぐためには、女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンも積極的に摂取していきましょう。
最後に金山先生からメッセージがあればお願いします。
世代に関わらず泌尿器科疾患を抱える女性は多いですが、特に50代以上の女性は症状を抱えながら過ごしている方が少なくありません。夜間の排尿回数が増えるなどの症状が現れている人は、4〜5人に1人いるとも言われます。しかし、その多くが受診せずに我慢しているのが現状です。
女性特有の泌尿器科疾患は、恥ずかしさや病気だと思っていないという認識の薄さから、受診をためらう気持ちがあるかもしれません。また、何年も産婦人科に通院していない場合は「産婦人科に行くこと」自体、ハードルが高いと思っている方もいらっしゃるでしょう。
だからこそ、40代後半頃からは、気軽に相談できるかかりつけの産婦人科医を持っておくことが大切になります。そうすることで、泌尿器科関連のデリケートな悩みについても、より相談しやすくなるはずです。
ここまでお伝えしてきた通り、更年期以降は、腟と同じような変化が尿道口や膀胱にも起こりえます。そのため、閉経後に残尿感や違和感、血尿などの泌尿器症状が現れた場合は、泌尿器科だけでなく、産婦人科も受診の選択肢に入れてみてください。
女性の身体はもともと泌尿器科疾患にかかりやすい構造だと理解した上で、日頃からバランスの良い食事や筋トレ等の軽い運動を取り入れながら、自分自身の身体を大切にしていきましょう。
profile
浜松医科大学 名誉教授/静岡医療科学専門大学校 学校長
日本産科婦人科学会 名誉会員/日本周産期・新生児医学会 監事・名誉会員/日本生殖医学会 功労会員/日本分娩研究会 理事長/日本胎盤学会名誉会員/日本妊娠高血圧学会名誉会員


