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きのこ面白情報

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【きのこ面白情報】きのこ写真家 新井文彦

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きのこを見て、宇宙を想う!?

きのこの写真を撮ることが仕事なので、夏から秋にかけて、ほぼ毎日森へ通っています。メインフィールドは北海道阿寒湖周辺。ここには本当に素晴らしい森が広がっています。
阿寒の森で、きのこを見つけたら、じっくり観察。形や色や大きさのチェックはもちろん、匂いを嗅いでみたり、触ってみたり、時にはちょっとだけ齧ってみたり、五感をフル稼働させて、きのこと対峙します。
ところで、きのこの本体は、いわゆる「きのこ」ではありません。

え?どういうこと?

実は、一般に「きのこ」と呼ばれているものは、子実体(=生殖器官)で、きのこの本体は、土や木の中に糸状に広がる菌糸。きのこだと思って観察していたものは、実は、きのこのほんの一部なんです!
きのこの本体が見たい!と、子実体の周りを掘ってみても、おそらく、肉眼で菌糸を見つけるのは無理。では、きのこの本体を「見る」にはどうするか?顕微鏡などを持ち出す、という方法がありますが、けっこう敷居が高いですよね。そこで、知識です。そして、想像力。
きのこに関する本や資料に手当たり次第当ってみる。きのこに詳しい人に教えを請う。そして、肉眼で見えないなら、自分に蓄積した知識をもとに、想像しちゃえばいいんです!そう、それこそ、プロではない、アマチュアならではのきのこの楽しみ方と言えましょう(笑)。

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森の底にたった1本生えている、きのこの子実体。一見、独立して生きているようですが、多くの場合、細い「枝」を伸ばして植物の根との間で共生体をつくり、栄養のやりとりをしています。その共生体のことを菌根と言い、菌根を持っているきのこを菌根菌と言います。

例えば、マツタケはマツの菌根菌、ハナイグチはカラマツの菌根菌です。ある種のきのこは、特定の植物だけではなく、いくつかの植物と菌根をつくってつながっています。陸上植物の数は20万種とも30万種とも言われていますが、その8割以上が菌根菌と共生しているのだとか。つまり、森の植物のほとんどが、地中のきのこネットワークを通じてつながっているんです!すごいですよねえ。

ちなみに、菌根菌の人工栽培は大変難しいとされています。研究は日々進められているので、きのこの王様・マツタケが、1年を通じて安価で安定して供給される日も、そう遠い未来のことではないでしょう。ね、ホクトさん?


今、ぼくたちの目の前にある自然は、地球が誕生して以来およそ45億年の月日を経て、動物や植物や菌類やその他たくさんの生物や、あるいは無機物が、相互に関係してつくりあげた極めて精緻なシステムです。いや、宇宙開闢(かいびゃく)以来、約138億年かけてつくられた!と言っても過言ではありません。きのこも、植物も、人間も、地球も、太陽も、夜空にきらめく星々も、同じ宇宙で生まれた原子でできているわけで……。自然を大切にすることは、自分たちを大切にすることなんですよね!
大自然の森の中で、きのこを、見るだけではなく、五感を駆使して全身で感じたり、脳みそをフル回転させて、ふふふな想像や、むふふな妄想を繰り広げ、かつ、カメラのシャッターを押す……。こんな時間が楽しくないわけがありません!きのこ写真家冥利に尽きます。

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写真は一瞬を切り取る、とよく言われますが、自然写真の場合、切り取った一瞬は、宇宙誕生以来138億年の歴史が積み重なった上での一瞬なわけで、必ずしもその瞬間だけを抽出したものではありません。見えない「本体」を想像し、周りの自然との関係性や、時には宇宙にまで思いを巡らせ、きのことの会話を楽しみつつ、シャッターを切る……。きのこ撮影の醍醐味です。この時代に、この阿寒の森で、天文学的な確率でお互いが出会ったのですから、美しく撮らなければきのこに叱られちゃいます。

それにしても、知れば知るほど、きのこは奥が深いです。

新井さん、あなたにとってのきのことは?
「科学であり、哲学であり、飯の種であり、飯のおかずです。」

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新井文彦
きのこ・粘菌写真家。1965年、群馬県生まれ。夏から秋にかけては、北海道・道東地方で、アウトドア系ガイド業にもいそしむ。本と、柴犬と、ギターと、ラーメンと、お酒と、阿寒湖周辺の森と、そしてもちろん、きのこ・粘菌をこよなく愛する。著書は『きのこの話』(ちくまプリマー新書)。糸井重里氏主催のインターネットサイト・ほぼ日刊イトイ新聞で「きのこの話」を連載中(毎週菌曜日更新)。http://www.1101.com/kinokonohanashi/
本人ウェブサイト「浮雲倶楽部」http://ukigumoclub.com/
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新井文彦写真展「静かな湖畔の森のきのこ」
北海道阿寒湖温泉 奏楽の森ギャラリー
9月1日(日)〜10月31日(木)
10:00〜1700・19:00〜21:00【水曜定休】
http://www.akanhire.co.jp
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