【きのこアルバム】ムラサキフウセンタケ

初夏から本格的な夏に移り変わる季節「梅雨」。
梅雨は蒸し暑く、ついネガティブな印象を持たれがちですが、植物にとっては恵みの季節。しっとりと湿った美しい風景がみられるのもこの季節の特徴です。

そこで今回は、梅雨の季節の代表的な花「紫陽花」のような紫色が美しいきのこ「ムラサキフウセンタケ」をご紹介します。

ムラサキフウセンタケは、生長すると傘の直径が5～12cm、柄の長さが7～12cmほどになる比較的大きく育つきのこ。傘の表面や柄、ヒダまで美しい暗紫色をしているのが特徴です。

美しい暗紫色が錆色になるというのは、意外性があり驚きです。

また、ムラサキフウセンタケを含む「フウセンタケ属」きのこの大きな特徴として、傘から柄にかけてうっすらとクモの巣のような膜が観察できます。※この膜は通称「クモの巣膜」と呼ばれます
成熟すると傘が開き、クモの巣状の膜が柄に付着してしまうため見えづらくなってしまうことが多いのですが、フウセンタケ属きのこを見分ける際の重要なポイントと言われています。

話は変わり、少し専門的な話になりますが、専門家の間で最近話題になっているのがムラサキフウセンタケの分類についてです。以前までは、ムラサキフウセンタケには、コナラやブナなどの広葉樹に発生するタイプ（Cortinarius violaceus）と、針葉樹に発生するタイプ（Cortinarius hercynicus）の2種類が存在するとされてきましたが、DNAを解析した最近の分類学研究から、この2種には遺伝的・生態的な違いはないという結果が報告されています。きのこの研究が日に日に進む中で、きのこの常識もアップデートされているようです。

ちなみに、ムラサキフウセンタケは漢字では「紫風船茸」と書きます。「風船茸」というのは、なんだか可愛らしいような、ファンタジックな印象を受けますが、「風船茸」の由来は諸説あり、根元の部分が膨らんでいることからという説が有力。

ちなみにこのムラサキフウセンタケ、観賞用にしたくなるような美しい色をしていますが、以前は「食べられるきのこ」とされていました。しかし近年研究が進み「オレラニン」という毒素が含まれることがわかり、今は不食とされています。

最大の特徴であるこの美しい暗紫色を、目で見てお楽しみいただければ幸いです！

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梅雨が明ければ夏本番。
今は感染症対策を第一に、夏本番に向けて体調を整えていきましょう♪

【参考文献】
今関六也・大谷吉雄・本郷次雄　編（2011）増補改訂新版　山渓カラー名鑑　日本のきのこ．山と渓谷社，東京
株式会社　山と渓谷社　奥沢康正　奥沢正紀　著（1998）「きのこの語源・方言辞典 」日本のきのこ．山と渓谷社，東京
Harrower E, Bougher NL, Winterbottom C, Henkel TW, Horak E, Matheny PB (2015). “New species in Cortinarius section Cortinarius (Agaricales) from the Americas and Australasia”. MycoKeys. 11: 1–2

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