【きのこアルバム】コツブヒメヒガサヒトヨタケ

気温がだんだんと下がって空気が乾燥し、冬の足音が近づいてくる11月。11月は旧暦で霜月（しもつき）と呼ばれ、文字通り、霜が降りる月という意味があります。例年、全国的には11~12月頃に初霜が観測され、本格的な冬の訪れを感じさせてくれます。

今月は、そんな「霜月」の名に似合う、白い霜がうっすらと降りたような繊細なきのこ、「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」をご紹介します。

「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」は、漢字で「小粒姫日傘一夜茸」と書き、傘の直径は1～2cm程、柄の長さは5～9ｃｍと非常に小さなきのこです。春から秋にかけて、林や森などの湿った地面に発生するきのこで、特定の樹木から生えるものではなく、地上から生えてくるタイプのきのこです。何本かでまとまって生えている場合もあれば、ぽつんと一本だけ生えている場合もあります。
傘の色は、初めは暗い橙色でだんだんと灰色に変化していき、傘の形も同様に成長によって大きく変化します。まず、卵型から円柱形になり、釣り鐘に似た鐘形型、まんじゅう型と姿を変えた後に、ほぼ平らに傘が開き、やがて中央部がくぼんできます。写真でもわかるように、傘の表面には放射状の溝線があり、凹凸によってできる淡いコントラストがなんとも繊細で美しいきのこです。

なお、この「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」は毒の有無は不明とされています。そもそもかなり小さなサイズという事もあって、「食するに値しない」という基準から調べられていないとのこと。エノキのように一つ一つは細くても群生することで大量に採れるきのこというわけでもないので、食用には向かないということでしょう。

さて、「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」は“ヒトヨタケ”という名称が含まれていますが、以前きのこらぼで紹介したササクレヒトヨタケやザラエノヒトヨタケのように一晩で傘が溶けて液状化（自己消化）してしまうということはなく、やがて紙のように薄くなってしまうという特徴があります。具体的には、傘がだんだんと薄く平らに開いていき、のちに水平となり、それ自体が薄く軽いことから反り返ってしまうのです。

このコツブヒメヒガサヒトヨタケをはじめ、一般的なきのこの成長は、環境や個体差はあれども一日で大きく変化します。つまり、きのことの出会いは一期一会。今日見つけたきのこの姿を明日も見られるとは限らないのです。身近な場所できのこを見つけたら、是非その変化を日々見守っていただけたら嬉しいです。

また、この「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」とよく似ているきのこに「ヒメヒガサヒトヨタケ」というきのこがあります。「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」には「小粒」という言葉がつくことから、「ヒメヒガサヒトヨタケの小さいバージョン＝コツブヒメヒガサヒトヨタケ？」と思いがちですが、実はそれは間違い。実際のところ、発生場所にもよりますが、サイズ感はほとんど変わらないらしいのです。

では、一体どうやって見分ければ良いのか…？!
答えは、「胞子の大きさ」です。顕微鏡でよくよく観察すると「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」は「ヒメヒガサヒトヨタケ」よりも胞子が一回り小さい構造になっています。それが「小粒」という名前の由来なのです。肉眼では決してわからないきのこの世界…！どこまでも奥深いですね。

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表面に薄く霜が降りたように見える、繊細で美しい「コツブヒメヒガサヒトヨタケ」。
全国的に初霜が見られるのはもう少し先かもしれませんが、これからの本格的な冬の始まりを象徴しているようです。

≪出典≫
今関六也・大谷吉雄・本郷次雄　編（2011）増補改訂新版　山渓カラー名鑑　日本のきのこ．山と渓谷社，東京

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◆◇◆コツブヒメヒガサヒトヨタケ◆◇◆

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