人と菌の物語
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歴史が育んだ、きのこの効果と人体の秘密
第7回 腸脳相関の神秘と心身の健康に寄り添うきのこ

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腸が独自に考え、脳に影響する“腸脳相関”の神秘

ヒトは脳が指令を出し、他のすべての臓器が働いていると思われがちですが、実は腸の中にも脳と同様の機能があることが証明されています。

腸は単なるクダではなく、独自で考え、脳や感情の機能もコントロールしている“第二の脳” ——。

“腸が考える?!”なんて、すぐに納得する人は少ないかもしれませんが、その構造は次のようになっています。
腸の外側には、網タイツのような神経の繊維の束「神経網」が縦横無尽に張り巡らされ、結び目には情報処理・伝達の神経細胞「ニューロン」が多数存在しています。腸はこの神経網の働きにより、自ら意思を持って活動します。
そして腸内に食べ物が運ばれてくると、腸内に点在する感覚細胞の「パラニューロン」が化学成分をいち早く認識。肝臓や膵臓などに指令を発し、内容物を分解する酵素や胆汁を腸の中に招き入れます。

それと同時に消化、吸収、合成といった適切な反応を引き起こし、未消化物を肛門の方向に運んだり、有害な物質だと認識したら下痢を引き起こし体内から排除するなど、健康を維持するために身体を守ってくれます。

寝ている時でも腸内の内容物が腐敗しないことでも明らかなように、上記のような活動は脳に関係なく、腸独自で行っているのです。

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といっても腸と脳は好き勝手に活動しているわけではありません。血管と血液を通じて、腸内と脳内それぞれでつくられた物質を相互に取り入れ、間接的に影響を与え合っています。それを「腸脳相関」と呼びます。

たとえば、運動調節、ホルモン調節や快感を増幅する神経伝達物質「ドーパミン」。その元となる「前駆体物質」(ある化学物質が生成する前段階にできる物質)が脳内に運ばれて行くと、脳内の特定の部位が興奮し、各機能調節を司る神経中枢が刺激されて脳機能が活性されます。さらに、このドーパミン変換にも腸内細菌は関与しており、ドーパミンの産生に抑制的に働いていることが研究によりわかってきました。

また、うつ病の人は便秘に悩むケースが多いのも腸脳相関が一因と言われています。うつ症状は自律神経に影響して腸管の運動を低下させ、排便に悪影響を及ぼします。便が腸内に滞留すると腹痛や膨満感が出てきて、その感覚が脳に届いて不快に感じ、また腸管の運動が低下……といった悪循環に陥ります。

つまり腸と脳は独自で活動しながらも、お互いの状態に深く影響し合っているのです。

NEXT▶腸内細菌がヒトの脳や心、疾患も左右する!?

監修:辨野義己(べんの よしみ)
1948年生まれ。酪農学園大学獣医学科を卒業。東京農工大学大学院をへて特殊法人理化学研究所入所 研究員。独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター・微生物材料開発室室長。現在は、同所科技ハブ産連本部辨野特別研究室特別招聘研究員。十文字女子大学客員教授、農学博士(東京大学)。受賞歴は、日本獣医学会賞(1986年)、日本微生物資源学会賞 (2003年)、酪農学園大学獣医学部同窓会「三愛賞」(2007年)、文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)(2009年)、Top Ten New Species Award (2009)
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