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暮らしの中の笑顔、美のある「暮らし」。

vol.05 扇子

風光明媚な四季が織りなす情景、おもてなし文化に根ざした情緒。
美しさに彩られた国、日本。

日本には、笑顔あふれる暮らしを営むための、美しく、素晴らしい「技」と「心」が受け継がれています。

幸せな日々の暮らしに欠かせないのは、家族の「健康」。
その健康を支えるのもまた「暮らし」です。

豊かな毎日の暮らしを支える、日本の技にスポットをあてた、
感動の「美」ストーリーをお届けします。

職人の“手”が生み出す、涼

[宮脇賣扇庵(京都市中京区)]扇子

Craftsman Story

創業は文政6年。

江戸時代からほぼすべての製品を自社の職人が作り続けている、宮脇賣扇庵。

扇子は87回も職人の手を通ると言われ、その工程は20余りに分かれている。

竹から扇骨を作り、扇面を貼り、絵付けをして出来上がる、職人の技によって組み立てられた「京扇子」。

手触りや開き具合、重さ、使い勝手など、用と美が一体となった扇作りの技術を、
職人たちの想いや熱意とともに後世へ受け継ぐこと。

それが、老舗扇店の使命である。

扇は人生の節目に登場するものとして、日本文化には欠かせない物の一つ。

初めての宮参りで扇を奉納することに始まり、3歳、5歳、7歳の祝事の神詣では必ず扇を持つのが習わしだ。

7歳になれば、童用扇を持つようになり、京都では13歳になると行う十三参りを境に扇も大人用に変わる。

かつては、大人になると好みの扇子をもつことが許されたという。

いまでも扇は、結婚式、七五三、成人式など、人生の節目に彩りを添えてくれる。

そしてまた、夏には人々に風流に涼を与えてくれる、身近にある道具でもある。

良いものは、いつまでも変わらない。

長く使われ、愛され続けていく。

 

Product Story

今年も、この日が来た。

長い間、小さな箱にしまわれていた私が、

明るい日差しを目にする日。

蝉の声とともに、真っ青に晴れ渡った空に入道雲がそびえ立つ。

そんな日の朝に、箱の蓋が開けられる。

(今年も、扇子の時期が来たな・・・)

ちょっとうれしそうな顔で、私を見つめる、彼。

8年前に京都のお店で私を見つけてくれた。

大事な商談に行くときも、家族で旅行に行くときも、鞄の中に私を忍ばせてくれる。

暑い夏の3ヶ月だけ、毎日一緒に過ごすのだ。

「いい扇子をお持ちですね」

「ありがとうございます。一目惚れしてしまったものなんです。これを持ち歩き始めると、夏が来たなという気がするんです」

お客さんに、私を褒められ、少し恥ずかしそうに、パタパタと仰ぎ始める。

私と彼のいい関係。

また、小さな箱に仕舞われるまでの、特別な関係。

だから毎年、箱を開けてくれる日が楽しみなんだ。

Endless Story

そのすべての工程が、職人の手作業で行われる扇子づくり。

大きく分けて「扇骨作り」「扇面作り」「扇骨と扇面を組み合わせる仕上げ作業」の3つの工程を、
専門の職人が行っている。

日本の工芸品として、技術継承を大切に考える宮脇賣扇庵のものづくり。

丁寧に仕上げられた逸品は、人の心を動かし、
長く長く、使うことで、手に馴染み、他には変えがたい価値が生まれる。

そして、長きにわたって毎日の暮らしに溶け込む名品は、
私たちの暮らしを美しく、豊かにし「健康」にする。

取材協力:宮脇賣扇庵 http://www.baisenan.co.jp/

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