vol.04 傘
風光明媚な四季が織りなす情景、おもてなし文化に根ざした情緒。
美しさに彩られた国、日本。
日本には、笑顔あふれる暮らしを営むための、美しく、素晴らしい「技」と「心」が受け継がれています。
幸せな日々の暮らしに欠かせないのは、家族の「健康」。
その健康を支えるのもまた「暮らし」です。
豊かな毎日の暮らしを支える、日本の技にスポットをあてた、
感動の「美」ストーリーをお届けします。
使った人の感動をつくること。
[前原光榮商店(東京都台東区)]傘
Craftsman Story
昭和23年、前原光榮商店は、東京の下町で誕生した。
生地を織る。骨を組む。加工する。手元を整える。
「傘」の文字にある4つの“人”の意味を、各工程を受け持つ匠の数と考え、
すべての工程は、今も昔も手作業で進められる。
決して大量生産ではなく、細部にこだわったメイドインジャパンの傘作り。
皇室でも愛され使い続けられている、しっとりとした質感の洋傘は、
50年以上仕事にあたるベテランだからこそつくることのできる逸品だ。


「傘は実用一辺倒ではなく、装うものだということを忘れてはいけない」
時代にあった上質な素材と、昔ながらの技術。
いつの時代も色あせることのない、逸品は、永く永く受け継がれ、
愛され続けていく―――。
Product Story
今日、僕は、初めて雨に濡れて歩いている。
6月のあたたかな雨の夜。
うれしそうな彼女の足音と共に、夜の道を進んでいく。
そう、僕が彼女に贈られてから、今日は、初めての雨。
旦那さんを駅まで一緒に迎えに行くんだ。
【雨が降ってきたから、駅まで傘を持って行こうか?】
【定時で帰れないと思うけどいいかな?】
【もらった傘が使えるから、何時でも】
【わかった、また連絡する】
夕方のメールのやり取り。
彼女は、誰もいない部屋の中で何度か僕を開いたり、閉じたりして、
十代の少女のようにはしゃいでいた。
5月生まれの彼女に、旦那さんから贈られた僕は、
しっとりとした赤色の傘。
「この傘、きっと似合うと思うんだ。いつも、雨の日に迎えに来てくれてありがとう。あと…いつまでも、キレイでいてくれてありがとう。」
旦那さんからも彼女からも、笑顔がこぼれる。
大人の心が、ときめく瞬間。
こうして夫婦の思い出は、一つひとつ増えていく。
そして、いま僕は、
お気に入りのスカートに身を包んだ彼女と一緒に駅まで歩いている。
足取り軽く、雨の音を小気味よく弾きながら。
Endless Story
洗練された美しさと機能性を兼ね備え、日本のものづくり技術で仕上られた傘。
生地・骨・手元・加工の4つの工程を受け持つ匠の融合を重んじた傘づくり。
丁寧に仕上げられた逸品は、人の心を動かす力がある。
そして、使うことで、手に馴染み、
さまざまな思い出とともに他には変えがたい価値が生まれる。
そして、長きにわたって毎日の暮らしに溶け込む名品は、
私たちの暮らしを美しく、豊かにし「健康」にする。
取材協力:前原光榮商店 http://maehara.co.jp/