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暮らしの中の笑顔、美のある「暮らし」。

vol.02 帆布かばん

風光明媚な四季が織りなす情景、おもてなし文化に根ざした情緒。
美しさに彩られた国、日本。

日本には、笑顔あふれる暮らしを営むための、美しく、素晴らしい「技」と「心」が受け継がれています。

幸せな日々の暮らしに欠かせないのは、家族の「健康」。
その健康を支えるのもまた「暮らし」です。

豊かな毎日の暮らしを支える、日本の技にスポットをあてた、
感動の「美」ストーリーをお届けします。

いつも、一緒に。

[株式会社一澤信三郎帆布(京都市東山区)]帆布かばん

Craftsman Story

明治38年、京都東山で「一澤帆布」は、創業した。

ペリーが来航した嘉永6年に生まれた一澤喜兵衛は、
とても新しいもの好きで、当時は高価だったミシンを手に入れ、
西洋風のシャツやちょっとした道具入れを作り、商いを始めた。

そして、明治の末期に「帆布*」を使って職人用のかばんを作り始めたのが、
二代目の常次郎だ。

「ええ仕事せなあかん。丈夫なもん作らなあかん」

真面目で職人肌の常次郎は、かばんの品質や使い勝手を常に追求した。
昭和になり、より厚い帆布が縫えるようになると、
左官屋、大工、薬屋、牛乳屋、酒屋など、
働く人々に常次郎考案の一澤帆布製のかばんは人気を博した。

そして、今。

カタカタと鳴るミシンで、一つひとつ縫い上げるのは、
昔から続く、上質な帆布素材を使ったかばん。

時代に合わせて、新しい製品に挑戦しながらも、
その懐かしさ、素朴さ、丈夫さは、今も昔も変わらずに
多くの人に愛され続けている。

「ええ仕事せなあかん。丈夫なもん作らなあかん」

変わらぬことの大切さと変わっていくことへの不安をかきけす様に。
今日もミシンの音は鳴り続ける——。

 

Product Story

「忘れ物はないのか?」
「大丈夫、いつものかばんに全部入れたから」

と、お父さんとお姉ちゃん。
桜の花びらが風に舞う、暖かい朝。
今日は、お姉ちゃんがお嫁に行く日。

お姉ちゃんは、
朝一番で、僕の中に入れた小物や着替えをしっかりと確認して、
最後に「お父さん・お母さんへ」と書かれた手紙を大切そうに
僕のポケットにしまった。

式場へと向かうタクシーの中、言葉少なにお母さんが言う。

「このかばんも長く使ってきたわね」
「小学校のときに、買ってもらったんだよね。まだまだ使えそう。
ありがとう、お母さん」

優しい青空に、蝶が舞う。
うれしいときも悲しいときも、僕はずっとずっと側にいる。
お姉ちゃんが、お母さんになるときも、
そして、子どもたちが大きくなる日まで、ずっと。

Endless Story

使う人の使い心地を思い、丈夫な素材で作られた、帆布かばん。

良いものは、手入れをし、ときに修理をすることで、
長く、長く、使い続けることができる。
使うことで、手に馴染み、他には変えがたい価値が生まれる。

そして、長きにわたって毎日の暮らしに溶け込む名品は、
私たちの暮らしを美しく、豊かにし「健康」にする。

取材協力:一澤信三郎帆布 https://www.ichizawa.co.jp/
撮影:Y. Kubota Studio BOW
*帆布=船の帆の材料となる丈夫な布

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