連休明けの子どもの心の不調にも。食事が“気持ち”を整えるのに効果的なワケとは
2026.05.18
新学期が始まって1か月ほどが経ち、子ども達も少しずつ新しい環境に慣れてくる時期ですね。一方で、ゴールデンウィークを過ぎたあたりから「なんとなく元気がない」「学校の話をしたがらない」「朝は起きているのに動きが鈍い」といった子どもの“変化”を感じている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
中にはこうした変化に戸惑い、「このまま学校に行けなくなってしまうのでは」と不安を感じる保護者の方も少なくありません。文部科学省の調査では、不登校の児童生徒は年々増加しており、その背景には無気力や不安といった要因も多く見られることが報告されています。
しかし、こうした変化は特別なことではなく、環境の変化に適応しようとする中で誰にでも起こりうるものです。無理に元気を出させようとするのではなく、子どもの状態に目を向けながら少しずつ整えていくことが大切です。
そこで今回は、5月に子ども達が心の不調を感じやすい理由や、食事でできる対策法をご紹介します。心身の調子を整えて、初夏も元気に過ごしていきましょう。
INDEX
- 5月に心の不調が現れやすい理由とは
- 子どもの心のコンディションを整えるためには「腸」の健康がカギ!
- 心身の不調ケアに役立つ栄養素とは
- 食欲低下には「食べやすさ」もポイント!
- 心が揺らぐ時期のカラダの土台は「きのこ」で整える!
- <Let’s Eat!>子どもの元気な毎日を応援する菌活レシピ
5月に心の不調が現れやすい理由とは

新年度の始まりは、子どもにとって大きな環境の変化が続く時期です。クラス替えや新しい先生、友だちとの関係づくりなど、目に見えない緊張や気疲れが少しずつ積み重なっています。表面上は元気に見えていても、心の中では無理をしていることも少なくありません。
新年度から緊張が続いていた中でゴールデンウィークの連休に入り、いったん緊張が緩むことで、それまで感じていた疲れが表面化しやすくなります。そして連休中に楽しい時間を過ごした後に、再び日常へ戻ることで戸惑いや負担が大きくなり、不調となって現れるのです。
また、子どもは自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合もあります。そのため、「行きたくない」という気持ちが、頭痛や腹痛、食欲の低下といった身体のサインとして現れることもあります。
こうした変化は、決して甘えではなく、環境に適応しようとする過程の一部と捉えることが大切です。もし学校に行くのを渋る場合にも、一定期間休養し“気持ちのエネルギーをチャージ”することで学校に行けるようになる場合もあります。保護者の方にはぜひ、子どもの気持ちを聞き出そうとするのではなく、子どもが安心して心身を休め、“エネルギーをチャージ”できる環境づくりを大切にしていただければと思います。
子どもの心のコンディションを整えるためには「腸」の健康がカギ!
新しい環境によるストレスや不安が続くと、心だけでなく身体の状態にも影響が出てきます。こうした心と身体のコンディションについて、近年では腸内環境との関係が注目されています。
私たちの身体では、腸と脳が神経やホルモンを通じて双方向に情報をやり取りしており、これを「腸脳相関」といいます。
神経伝達物質のひとつである「セロトニン」は、気分の安定や安心感に関わる物質で、別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、その多くが腸で産生されています。そのため、腸内環境が乱れ、セロトニンの産生がされにくくなると、気分の落ち込みや不安感などにも影響する可能性があると考えられています。
また、腸内環境を整えるうえで大切なのが、腸内細菌の働きです。腸内細菌は、きのこ類をはじめ食事からとる食物繊維などを利用して、短鎖脂肪酸と呼ばれる成分をつくります。
短鎖脂肪酸は腸内環境を整えることに加え、身体の炎症を抑える働きや神経系の働きにも関わると考えられています。腸内細菌が元気に働くことで身体全体の調子が整いやすくなると考えると、イメージしやすいかもしれません。近年の研究では、腸の働きがストレス応答や気分の状態にも関係している可能性が示唆されるなど、注目を集めています。
短鎖脂肪酸はきのこを定期的に食べることで増えることがわかっているため、全身の健康維持のためにも意識してとり入れていきましょう。
心身の不調ケアに役立つ栄養素とは
ここでは次に、心身の調子を整えるのに役立つ具体的な栄養素をご紹介します。
① 食物繊維
短鎖脂肪酸の産生や腸内細菌の働きを支えるために欠かせないのが食物繊維です。食物繊維には水に溶けやすい水溶性食物繊維と溶けにくい不溶性食物繊維があり、それぞれが腸内で異なる役割を果たします。
きのこ類には、これらの2種類の食物繊維がバランスよく含まれているほか、食物繊維の一種であるβグルカンと呼ばれる栄養素も豊富に含まれています。βグルカンは免疫細胞に直接働きかけることで体調管理にも役立つ栄養素なのです。
② GABA
心の緊張やストレスに関わる栄養素として注目されている成分にGABAがあります。GABAは神経の興奮を抑える働きを持つ成分で、リラックスに関わると考えられています。
きのこには食物繊維の他にもGABAも豊富に含まれており、自律神経に働きかけることで気持ちを落ち着かせたりストレスを抑えたりするのに役立ちます。
食欲低下には「食べやすさ」もポイント!

子どもの心が不安定なときは、「どうにか元に戻さなければ」と焦る気持ちが強くなりがちです。しかし、無理に励ましたり問いかけたりすることが、かえって負担になってしまうこともあります。
さらに、心の不調があると、食欲が落ちて食事量が減ってしまうことも少なくありません。すると身体や脳に必要なエネルギーが不足し、さらに元気が出にくくなることがあります。
このようなときは、「しっかり食べさせなければ」と考えすぎるのではなく、まずは「食べやすさ」を大切にすることがポイントです。量が多く食べられない場合は少量でも構いません。温かい汁物や食べ慣れたおかずなど、口にしやすいものから取り入れていくとよいでしょう。
また、主食やたんぱく源となるおかずに加えて、きのこや野菜などを組み合わせることで、腸内環境を整える食事につながります。毎食完璧に整える必要はなく、できる範囲で続けていくことが大切です。食事は心の回復を支える土台として、無理のない形で整えていきましょう。
何よりまず大切なのは、食卓が安心して過ごせる場所であることです。一緒に食事をする時間を共有することで子ども自身が安心でき、ゆっくりと自分自身の気持ちを整理できることも多くあります。ぜひ、心にとめていただければと思います。
心が揺らぐ時期のカラダの土台は「きのこ」で整える!
5月に見られる子どもの心の不調は、環境の変化の中で誰にでも起こりうるものです。すぐに大きな改善が見られなくても、少しずつ回復していくことも多くあります。
食事はすぐに結果が現れるものではありませんが、身体と心の土台を整える大切な役割を担っています。無理のない範囲で整えながら、子どものペースを見守っていくことが大切です。
きのこは食物繊維やGABAが豊富な他にも、1年中手に入りやすくどんな料理とも合わせやすい食材です。普段の食事に少しずつとり入れながら、やさしく子どもの身体と心を支えていきましょう。
<Let’s Eat!>子どもの元気な毎日を応援する菌活レシピ
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きのこで元気!具沢山おにぎり
マイタケやエリンギなどのきのこに加えて、旬のじゃがいもを使った子どもが食べやすいおにぎりです。手軽に少量からでも食べられるため、食欲が落ちているときにも無理なくとり入れやすい一品です。炊飯器でまとめて作れる手軽さも魅力で、朝食や軽食、お弁当にもピッタリです。きのこに含まれる食物繊維やビタミンB群に加え、ごはんやじゃがいもの炭水化物、卵のたんぱく質を一度に摂ることができる栄養バランスの整った一品です。
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やさしい味わい♪マイタケ鶏そぼろ
きのこと鶏ひき肉を組み合わせた子どもも食べやすい一品です。作り置きしておくことでご飯の上にのせたり、うどんと合わせたりと様々なアレンジに使えるメニューです。鶏肉に含まれるトリプトファンは、気分の安定に関わる神経伝達物質の材料となる栄養素で、きのこに含まれるビタミンB6は、そのトリプトファンの代謝をサポートするとされています。心のコンディションを整える栄養を日常の食事の中で、上手にとり入れていきましょう。
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きのこと長芋のバターしょう油炒め
きのこと旬の長芋を使った香ばしいバター醤油の風味が食欲をそそる一品です。長芋のほくほくとした食感ときのこのうま味が合わさり、子どもも食べやすい味わいです。きのこや長芋に含まれる食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、腸内で全身の健康に役立つ短鎖脂肪酸が作られます。日々の食事に取り入れながら、腸内環境を整えるサポートにつなげていきましょう。
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きのこたっぷり豚汁
きのこをたっぷり使った、大人も子どもも食べ慣れた味わいの豚汁です。味噌のやさしい風味で、食欲が落ちているときにも食べやすく、きのこや味噌には、リラックスに関わる成分として知られるGABAが含まれているため、メンタル面の不調を感じやすいこの時期にピッタリです。具沢山で栄養満点のため、ぜひお試しください。
profile
松本大学人間健康学部健康栄養学科専任講師
兵庫大学を卒業後、管理栄養士免許を取得し、運動と栄養の両面から研究する運動栄養学を大阪体育大学大学院で学ぶ。大学院卒業後は、スポーツクラブアクトス、チームニッポン・マルチサポート事業(栄養)で健康づくりの運動指導やトップアスリート栄養サポートに従事して現職に就く。現在は、運動栄養学の教育・研究とともに、県内・外のアスリートの栄養サポートを行う。
【資格】
管理栄養士、日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士、修士(スポーツ科学)



