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暮らしの中の笑顔、美のある「暮らし」。

vol.03 腕時計

風光明媚な四季が織りなす情景、おもてなし文化に根ざした情緒。
美しさに彩られた国、日本。

日本には、笑顔あふれる暮らしを営むための、美しく、素晴らしい「技」と「心」が受け継がれています。

幸せな日々の暮らしに欠かせないのは、家族の「健康」。
その健康を支えるのもまた「暮らし」です。

豊かな毎日の暮らしを支える、日本の技にスポットをあてた、
感動の「美」ストーリーをお届けします。

一生モノの価値、忘れられない想い。

[セイコーウオッチ株式会社(東京都中央区銀座)]腕時計

Craftsman Story

明治14年、東京・京橋采女町に「服部時計店」は、創業した。

国産時計の黎明期。創業者である服部金太郎が21歳のときだった。
13歳の時に時計屋になろうと決心し、日本橋の時計店で一生懸命に時計の修理や販売を学んだ。

自分の店を持った金太郎は、横浜や神戸など開港地区に開設された外国商館から、外国製の時計を仕入れ販売した。

真面目で、誠実な取引を信条とした服部時計店は、外国商館からの信頼が厚く、
服部時計店に優先的に新しいモデルを卸してくれるようになった。
商売がうまくいくようになってきたのだ。

そして、
時計の国産化という目標を抱いていた金太郎は31歳のとき、
「精工舎」を立ち上げ、ボンボン時計と呼ばれた掛時計の製造を開始する。
従業員10余名のささやかな掛時計製造工場の誕生だった。

 
「精巧な製品」により、欧米に負けない時計事業を日本に興す。

強い覚悟が「精工舎」の社名に込められた。

金太郎は、精工舎創業当初から目を世界に向け、欧米の時計先進国から学び、市場を世界に求めた。1895(明治28)年には輸出を開始。

「良品はかならず顧客の愛顧を得る」という信念のもと、「品質第一」「顧客第一」とするモノ作りに励んだのだ。

金太郎の意志とその物語は後世に語り継がれ、
「常に時代の一歩先へ」。

現在の時計の世界標準となっている世界初の水晶腕時計「クオーツ アストロン」、
2012(平成24)年の世界初のGPSソーラーウォッチ「セイコー アストロン」に代表される
エポックメイキングな製品を次々と発表。

金太郎の精神はいまも、脈々と引き継がれている――。

 

Product Story

桜が散り始める頃。ぼくはいつも思いだす。

小さな箱の中でぼくは、そのときを待ちかまえていた。
お父さんの、少しこもった声が聞こえる。

「入学・・・おめでとう。」

お兄ちゃんが高校に進学した春。
照れ臭そうにお父さんが、ぼくをお兄ちゃんにあげたんだ。

「(わぁ・・・!)」

まん丸に見開いた目が、きらきら輝く。
小さな箱を開けたときの、あの顔をぼくは忘れられないんだ。

少し大きな学生服に身を包み、
左手には、いつもぼく。
高校生のお兄ちゃんには少し背伸びした、“一生モノ”の時計。

つり革につかまるたびに、ぼくと目が合う。
ちらっと見えるぼくの姿を、お兄ちゃんはとても誇らしく、気に入ってくれていたようだ。

長い時が経ち、ぼくはいまもお兄ちゃんの書斎の机の上においてある。
あの日、ぼくを渡したお父さんはもういない。

あの日、桜が満開の天気のいい日に、
ぼくを買い、お兄ちゃんに渡したお父さんの気持ちを
ぼくは持ち続け、伝えていく。

「この時計が似合う男になれ」と。

Endless Story

銀座のシンボル時計塔にも、表されるように、
日本の時、そして世界の時を刻んできた、職人たちがつくった時計。

良いものは、手入れをし、ときに修理をすることで、
長く、長く、使い続けることができる。
使うことで、手に馴染み、他には変えがたい価値が生まれる。

そして、長きにわたって毎日の暮らしに溶け込む名品は、
私たちの暮らしを美しく、豊かにし「健康」にする。

取材協力:セイコーウォッチ株式会社 https://www.seiko-watch.co.jp/corporate/profile/

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