人と菌の物語

歴史が育んだ、きのこの効果と人体の秘密
第6回 免疫を呼び起こす腸内細菌と秘められたきのこの驚くべきチカラ

2020.09.18
歴史が育んだ、きのこの効果と人体の秘密<br>第6回 免疫を呼び起こす腸内細菌と秘められたきのこの驚くべきチカラ

腸内環境を整えることが免疫機能正常化につながる!

免疫とは、端的にいえば体全体で働く防御システムのこと。ウイルスなど、体に有害な病原菌や物質が侵入した時に排除し、体を正常な状態に保ってくれます。

その反応が低下すると免疫不全が起こり感染症などに繋がります。かといってむやみに上げすぎると、花粉症に代表されるアレルギー反応など、免疫異常を引き起こす。つまり、免疫は正常な「バランスを保つ」ことがなにより重要なのです。

その中で、腸内細菌は免疫そのものとして働くのではなく、免疫細胞を活性化させる役割を果たします。その機能を左右するのは腸内環境。前回紹介したように健康的な体であれば、腸内は善玉菌が20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%のバランスで保たれています。日和見菌は善玉菌、悪玉菌どちらかの優勢な方になびくので、常に善玉菌が優勢になるように腸内環境を整えることが大事です。

善玉菌の代表格はビフィズス菌と乳酸菌。
ビフィズス菌が生成する酢酸は腸管運動を活発にして、早く排便を促します。さらに、悪玉菌の繁殖を抑えます。ヒトの健康に寄与する機能を持つビフィズス菌や乳酸菌は、免疫細胞に直接働きかけ、その機能を調整します。

また、近年注目されているのが、免疫機能や腸管粘膜の正常化に寄与する「酪酸(らくさん)」。それを生み出す酪酸産生菌は、誰もが持っている腸内細菌であり、がん細胞を抑制する効果があるなどのチカラが眠っています。その秘められたパワーを呼び起こし、活性化させるのが、きのこに多く含まれる食物繊維なのです。

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監修:辨野義己(べんの よしみ)
1948年生まれ。酪農学園大学獣医学科を卒業。東京農工大学大学院をへて特殊法人理化学研究所入所 研究員。独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター・微生物材料開発室室長。現在は、同所科技ハブ産連本部辨野特別研究室特別招聘研究員。十文字女子大学客員教授、農学博士(東京大学)。受賞歴は、日本獣医学会賞(1986年)、日本微生物資源学会賞 (2003年)、酪農学園大学獣医学部同窓会「三愛賞」(2007年)、文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)(2009年)、Top Ten New Species Award (2009)
生命力を食べる。 きのこふしぎ発見

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