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きのこ面白情報

かわいいきのこグッズや、不思議で楽しいきのこカルチャーをご紹介!

【きのこ面白情報】とよ田キノ子さんコラムVol.22

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きのこを愛したミス・ポター
こんにちは。
とよ田キノ子です。

きのこグッズには動物がよく登場するというお話はVol.11で紹介しましたが、
その動物のひとつに、ウサギがいます。
そして、世界的に有名なウサギとして思い浮かぶのは、そう、「ピーターラビット」です。
1902年、ビアトリクス・ポター作の児童書『The Tale of Peter Rabbit』から始まった
ピーターラビットシリーズは、累計発行部数が1億5000万部を越え、
100年経った今もなお、全世界で愛され続けている作品のひとつです。
ピーターラビットシリーズで動物たちの物語を多く残しているビアトリクスですが、
きのこ研究者だったということはあまり知られていません。

1866年、イギリスのロンドン市内にある裕福な家庭でビアトリクスは生まれ育ちます。
幼少の頃から小動物や植物に興味を持ち、飽きることなく観察やスケッチをしていたそうです。
ある時期から、その興味はきのこへと注がれて行き、
本格的にきのこ研究の道へと進み始めました。
彼女が研究で得た成果は論文「きのこの胞子の発芽について」としてまとめられましたが(※1)
当時の女性の社会的地位は低く、取り合ってもらうことができませんでした。
このことに気を落としたビアトリクスは、以後きのこ研究の道を諦め、
子供たちのために絵本を執筆し始めます。
そして、後世に残る名作『ピーターラビットのおはなし』が生まれることになるのです。

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ビアトリクスが生涯に描いたきのこの絵画は250点以上におよびます。
これらの多くは、イギリス・湖水地方の中心に位置するアンブルサイドにある、
The Armitt Library & Museum(アーミット図書館&美術館)に本人によって寄贈され、
ビアトリクスが情熱を注いで描いたきのこの原画を見ることができます。
その美しいきのこの水彩画などを中心に、スケッチをまとめたのがこの1冊、
『A Victorian Naturalist: Beatrix Potter’s Drawings from the Armitt Collection』です。
ビアトリクスの生涯と歴史背景を含めて紹介されています。

鋭い観察眼によって描かれたきのこたちは、まさにその場を切り取ったかのようなリアルさで
緻密かつ正確(顕微鏡で見た胞子や菌糸まで!)、それでいて優しさや暖かさを感じるのは、
ビアトリクスのきのこや自然に対する慈しみが伝わってくるからかもしれません。
晩年は、自身の財産で湖水地方の土地を買い上げ、自然と景観を守る活動(※2)に努めるほど
自然を愛し、動物を愛し、絵や文学を愛し、そして、きのこを愛した、ビアトリクス・ポター。
もし、ビアトリクスが現代に生まれていたら…
きのこの研究を続け、持ち前の探究心で世界を驚かせる研究発表をしていたかもしれません。
しかし、きのこ研究者の道を歩まなかったからこそ、名作「ピーターラビット」が生まれ、
現代の、遠く離れた日本の私たちも彼女の作品に触れることができました。
ビアトリクスにとっては不運なことだったかもしれませんが、
私たちの素晴らしい財産となったことに、感謝せずにはいられません。
そして、そんな研究熱心なビアトリクスをも魅了し虜にした、きのこ。
きのこは、いつの世も私たちの知的好奇心や探究心を刺激する存在なのだなあと、
改めて、この不思議で愉快な友達のことを誇りに思うのでした。

※1
現在、ビアトリクスの論文は行方知れずになっていますが、その理論の正しさが認められており、
彼女の論文を取り合わなかったリンネ協会が正式に謝罪したのは1997年…つい最近のことです。
※2
生前、ナショナル・トラスト(歴史的名所や自然的景勝地の保護を目的とした団体)のメンバーだったビアトリクスは、死後、自身が所有している土地(約526万坪)と15の農場を寄付するよう遺言に残しました。ビアトリクスが託した土地や建物は、現在は湖水地方国立公園の一部となっており、ナショナル・トラストによって今も彼女の意志が引き継がれて、徹底した保護が行われています。

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とよ田キノ子
アートディレクター、グラフィック&ウェブデザイナー、きのこグッズコレクター。
2007年に“キノコ病”を発症し、以後「とよ田キノ子」名義で活動を開始。
キノコグッズコレクションの展示や、キノコをモチーフにしたイラスト作品展、
キノコイベント等を開催。
2011年9月、グラフィック社より出版された『きのこ(乙女の玉手箱シリーズ)』を監修。
日々、キノコの魅力を伝える“胞子活動”を行っています。
信州きのこの会会員。

とよ田キノ子さんウェブサイトはコチラ

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