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研究員の研究日誌

新品種開発のはじまりは野生~きのこ採集のお話~

2021.09.24
新品種開発のはじまりは野生~きのこ採集のお話~

はじめまして!開発研究課の後藤と申します。
きのこらぼLaboの記事を読んでくださり、誠にありがとうございます!

以前、河西が書いた新品種開発についての話題の中で、「新品種開発のはじまりは野生のきのこ」というお話がありました。私たち研究員はもっともっと良い品種を開発したい!という想いから新品種開発に使用する新たな材料を求めて、野生のきのこを採集しに行くことがあります。今回は私が昨年の秋にブナシメジ採集に行った時のお話しをしたいと思います。

ここはとあるブナ林の中…私は先輩社員とともにブナシメジ採集にやってきました。
恥ずかしながら、入社するまできのこといえば“食べるもの”としてしか付き合いのなかった私は、ブナシメジがどんな場所でどのように生えているのか、どうやって見分けるのか全く知りませんでした。ブナシメジは主にブナの倒木の湿気が十分にある場所に生えており、傘に大理石模様のような特徴的な斑紋があります。斑紋を頼りに、私たちは倒木を見つけては探し回りました。しかし、倒木はかなりの数があり、1本1本皆で探しましたが、すぐに見つかるものではありませんでした。これがきのこ採集の洗礼か…

そんな中、探索開始から1時間後に私は人生で初めてブナシメジを見つけました!
それがこちら↓

倒木の折れた部分からにょきっと…か、かわ、かわいい…!このままストラップにして携帯に付けたいくらいの可愛さでした。柄が折れないように、根元からそっと採集しました。形を崩してしまうと、雑菌が付いてしまい、分離(子実体から菌糸を得ること)が大変になってしまうのです。

その後も探索を続けましたが、開始3時間で3株。もう日も暮れてきたので、あの倒木を最後に見て終わろう!ということになりました。全然見つからない~疲れた~帰りたい~(涙)とほぼ諦めのテンションで臨んだ最後の倒木がこちらです↓

ここにも!ここにも!!ここにも!!!
見た瞬間に今までの疲れが一気に吹っ飛びました。この倒木はブナシメジの楽園だったのです!ついにきのこの神様が我々に微笑みました。そして、この日は合計18株を得ることができました。

研究所に帰ってから全菌株の分離を行い、得られた菌糸からきのこを発生させてみました。例がこちら↓

なんか、採った時と見た目が全然違うし…食べてみると、とっても苦い!渋い!
実は野生の菌株をそのまま当社の栽培方法で栽培してもきのこを発生させることができない場合があり、できたとしても市販のきのこのように形が良いとは限らないのです。また、野生のブナシメジは苦い場合が多いです。でも、野生だって良いところはたくさんあります。傘がかわいいとか、苦い中にも旨味があるとか…そんな野生の良いところを活かすために、より形のいい菌株、より苦くない菌株などを掛け合わせることで、もっと良い品種を作っていきます。

スーパーでなんとなく売っているきのこは、野生株採集から始まり、交配と選抜を繰り返してきた研究員たちの努力の結晶なのです!より食べやすく、おいしいきのこを皆様にお届けすることが私たちの使命です。

この記事を読んでくださった方、次にスーパーでブナシメジを手にしたときに、少しだけでいいので「このきのこもブナ林の端っこから始まっているんだなあ」と思い出していただけたら、うれしいです!
それでは、お付き合いいただきありがとうございました。
※きのこ採集は必ず詳しい知識のある方の指導の下、行ってください。

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