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研究員の研究日誌

きのこを食べると死亡率が下がる?~アメリカの大規模調査研究論文より~

2022.02.16
きのこを食べると死亡率が下がる?~アメリカの大規模調査研究論文より~

こんにちは。ホクト㈱開発研究課の森です。
今回は、題名を見た瞬間にかなりテンションが上がってしまった研究論文を紹介します!それは昨年発表された論文で、「アメリカ人成人におけるきのこ摂取量と全死因死亡率および特定原因死亡率の関連:国民健康栄養調査からの前向きコホート研究」という題名です(1)。平たく言うと、「キノコを食べると死亡リスクが低下するか調べました」ということですから、衝撃的な論文です。しかも、アメリカの国民健康栄養調査と国民死亡指標という国家政策として集めたデータを解析しているので、解析人数が15,546名と非常に多く、信頼性もある程度高いのではないかと思います。研究内容をざっくりと、図にしてみました。

研究の結果、きのこを食べている人は、人種、性別、ライフスタイル、カロリーや栄養素の摂取、喫煙、アルコール摂取など、きのことは別の要素による影響を除いたうえでも、死亡率が有意に低いことが分かりました。
・・・これでついに長年抱いていたモヤモヤが晴れました!
私が昔よく遊んだ大人気のTVゲームに、きのこをゲットするとパワーUPする有名なキャラクターが出てきましたが、きのこは力が出るような食べ物という印象がなく、しっくりきていませんでした。でも、この結果をみれば一理あるのかもしれませんね。

では、なぜきのこを食べると死亡率が下がるのでしょうか?この論文では、きのこに特有の抗酸化成分「エルゴチオネイン」が関係しているのではないかと考察しています。私たちの体は、常に活性酸素によるダメージを受けて老化が進み、命が削られています。この活性酸素を消去するエルゴチオネインが死亡率を低下させている可能性は大いにあると思います。
一昨年発表されたスウェーデンの研究では、エルゴチオネインの血中濃度が高い人ほど死亡率が低い、という結果も報告されています(2)。

私達の調査では、この研究が行われたアメリカで多く食べられているマッシュルーム(ツクリタケ)より、日本でよく食べられているヒラタケ、エリンギ、ブナシメジなどの方が、エルゴチオネインをたくさん含んでいるようです。そのうえ論文によるとアメリカ人のきのこ摂取量は1日当たり平均3.7 gですが、日本人は1日あたり平均17.6gのきのこを食べています(令和元年度国民健康・栄養調査)。
日本は平均寿命が世界で1位(WHO発表2021年版World Health Statistics、男女平均寿命で84.3歳)ですが、きのことエルゴオネインの貢献もあるのではないか?と思ってしまうのは、私だけでしょうか?いつかそんなことが証明されたら嬉しいです。

ホクト株式会社 開発研究課 森 光一郎(薬学博士)

参考文献
(1) Dijibri M. Ba et. al., Association of mushroom consumption with all-cause and cause-specific mortality among American adults: prospective cohort study findings from NHANES III. Nutrition Journal (2021), 20:38.
(2) Einar Smith et. al., Ergothioneine is associated with reduced mortality and decreased risk of cardiovascular disease. Heart (2020), 106(9), 691-697.

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