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Method of Improving Performance

遺伝する「運動能力」(前編)

2019.11.01
遺伝する「運動能力」(前編)

「遺伝子」という言葉から、どのようなことを想像しますか? 遺伝子上のDNA配列は「ヒトの設計図」とも言われ、一人ひとりが異なったDNA配列を持ち、基本的に一生変わることはありません。最近では、スポーツに関する遺伝の研究が進み、競技力に影響するといわれる遺伝型も明らかになってきました。さらにはトップレベルのアスリートが自分の遺伝型を解析してもらうなど、スポーツ界でも注目を集めています。 アスリートのパフォーマンス向上には、食事や睡眠、トレーニングなど、自分自身の心がけや環境による要素も非常に重要なのは言うまでもありません。しかし今回は、少し視点を変え、アスリートと“遺伝”の関連性についてご紹介します。

運動能力の遺伝率は66%

運動能力と遺伝の関係といえば、一般的に「足が速い両親の子供は足が速い」などと言われるのを耳にされた方も多いと思います。
研究を進めていくと、必ずしもそれではない組み合わせがあることも明らかになりつつあります。また、「遺伝要因」以外の要素として「環境要因」が考えられますが、同じDNA配列を持って生まれたはずの一卵性双生児でも、環境によって様々な違いが表れることも、これまでの「双子研究」などでわかってきています。
とはいえ、大規模な研究において“運動能力の66%は遺伝要因で決まる”という報告がなされているように、運動能力はやはり遺伝によるところが大きいといえます。

アスリートにおける競技力の遺伝率

De Moor MH et al, Twin Res Hum Genet, 2007

遺伝子情報から自分の体質を知るということ

近頃は、自分の遺伝子が持つ情報を遺伝子検査で解析してもらい、生まれ持った体質や、将来かかりやすい病気、自分に合ったダイエット法など、あらゆることを遺伝型から知ろうとする人が増えてきています。
スポーツの世界でも同様に、私のところでもプロアスリートから依頼を受けて遺伝子検査を行い、その結果をフィードバックすることがあります。確かに、トップレベルのアスリートを目指す人にとって、自分がどんな遺伝型を持ち合わせているかを知ることはとても重要です。遺伝型がわかれば、自分に合った競技種目を選んでいくことも可能ですし、遺伝型に合ったトレーニング方法やケガの予防を進めることもできるからです。

遺伝とスポーツを研究しようと思った理由

ゴールまでの“戦略”を立てようアスリートが遺伝情報を知ることの意味を、私の経験談を例としてご紹介しましょう。
高校時代、陸上長距離(5,000m)の選手としてハードなトレーニングを続けていた私は、県代表として全国高校駅伝にも出場しました。しかし、ある時期、成績が伸び悩み、故障を繰り返していた私は、ふくらはぎの筋肉の大きさが、同じトレーニングを積んできた仲間と自分とでは違うということに気づき、疑問を抱きました。「自分はこの競技に向いていないのでは?」と思ったときには、すでに他の選択肢はなく、のちに私のような筋肉を持つ選手は長距離よりも中距離種目、またはパワー系競技のほうが成績を残せた可能性があることを知ったのです。
この経験が遺伝研究の道へと進ませ、「若い世代のアスリートに、このような競技のミスマッチを経験してほしくない」との思いが、今も私の研究を突き動かしています。

後半では、どのような遺伝子検査がスポーツ分野で主流となっているのか、また、検査で得た遺伝情報の具体的な利用例をご紹介します。

監修者 福 典之(Noriyuki Fuku)

監修者 福 典之(Noriyuki Fuku)
順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科スポーツ健康医科学研究所准教授
1998年、国際武道大学大学院武道・スポーツ研究科修了。2002年に名古屋大学大学院医学研究科にて博士号を取得。科学技術振興事業団技術員、国立健康・栄養研究所健康増進研究部特別研究員、東京健康長寿医療センター健康長寿ゲノム探索研究員を経て、2014年からは順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科の特任研究員となり、同年7月に准教授就任。2017年からは先任准教授として、スポーツ遺伝学ならびにスポーツ生理・生化学を専門とし、主に運動能力やスポーツ傷害を規定する遺伝要因の解明に取り組んでいる。さらに、遺伝子分析サービスを提供する企業の検査方法の監修も担当し、研究成果を社会に還元するよう努めている。

今月の菌勝メシ

遺伝する「運動能力」

運動神経と関わりのある「遺伝」ですが、能力を最大限に引き出すためにも、食事からケガをしないしっかりと動ける身体づくりを行うことが重要です。そこで身体づくりに必要なのは丈夫な筋肉。筋肉の質を高めるタンパク質とそのタンパク質の代謝を高めるビタミンB6をしっかりと摂れるメニューを選んで、さらにパフォーマンスを高めましょう!

きのこと鮭の塩バタースープ

筋肉の質を高めるタンパク質とそのタンパク質の代謝を高めるビタミンB6をしっかりと補給できるメニュー。きのこに含まれるビタミンB6が鮭の良質なタンパク質をしっかりと代謝して筋肉づくりに効果的。きのこや野菜の旨味がしっかり引き出されているので、エネルギー源となるごはんもススムアスリートにオススメのメニューです。

レシピイメージ きのこと鮭の塩バタースープ

【協力】NPO法人ジュース(JWS)

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