PAGETOP
きのこ面白情報

かわいいきのこグッズや、不思議で楽しいきのこカルチャーをご紹介!

【きのこ面白情報】漫画家 日高トモキチ

001top

ホコリタケ、あるいはキツネノチャブクロという名前のきのこがあります。
丸っちくてころころした中にこまかい胞子が詰まっていて、指で突っつくとてっぺんの穴から「ポフー」とけむりのように吹き出すしくみになっています。いかにもへんてこな物体です。

002
(キツネノチャブクロもっと茶色いタヌキノチャブクロもあります。)

昆虫学者のファーブルとこのホコリタケとのかかわりを、北杜夫さんがその著書で紹介しています。少年ファーブルは長じてのち手に入れた書物を調べ、幼き日に遊んだふしぎなきのこの名を知るのです。

「(前略)…指で突ついて、煙を吹かせて面白がった例のキノコの名も、やはりその本に出ていた。『オオカミのすかし屁』とある。どうも下品な言い方のようで、気に入らなかった。その横にラテン語で、『リコペルドン』と、もっと人聞きのいい名がのせてある。ところが、それもうわべだけのことで、調べてみると、このリコペルドンたるや、まさしく『狼のすかし屁』という意味のラテン語であることを知った」(北杜夫『どくとるマンボウ小辞典』)

すかしっ屁にくらべるとチャブクロはいかにも可愛い命名です。おかしな名前はさておき、その辺にころころ生えているまるい玉が、指で突っつかれるとぽふぽふとけむを吹くのだからこれはふしぎです。少年ファーブルが夢中になったのも無理はありません。

思えば、私がきのこに興味を持つようになったのもその存在のふしぎさ、面白さからでした。

そして、きのこはいつもちょっと唐突です。
先日、京都府立植物園をぶらぶら散歩していたら、雨上がりのみずみずしい下草の間から、いきなり高さ30センチはあろうかという白いパラソルが突き出していました。マントカラカサタケというきのこです。

003
(鬼太郎のおうちにも見えなくもないマントカラカサタケの勇姿)

見てください、クローバーの中にやぶからぼうに巨大な傘がそびえ立っているおかしな景色。だけど、なんだか楽しくないですか。野ねずみやもぐらが「やれやれぬれちまったぜ」などと文句を言いながら雨宿りをしてそうな、どこかユーモラスなたたずまいの森の傘。だいたい、なんで傘のかたちをしているんでしょう? もしくは上の平たい部分を座面に見立てて椅子。アリスが迷い込んだ不思議の国では、わけ知り顔のいもむしがきのこの椅子に腰かけていました。きのこをあらわす英語はいろいろありますが、そのひとつにtoadstool=「ひきがえるの椅子」というものがあります。きのこのスツールに腰かけて、ひきがえる氏はきっと葉巻の一本もくゆらせているのでしょう。

なお、京都府立植物園はとよ田キノ子さんもおすすめの『きのこ文庫』(きのこ型の本棚が並ぶ小さな図書館)や、毎年秋に催される充実の『きのこ展』も有名で、きのこ者たちにはみのがせないサンクチュアリです。

004
(アミガサタケ、ツチグリ、オニフスベ、タマゴタケ。)

いろいろな姿かたち 雨の翌日、それまで何もなかった原っぱや切り株、地面に急にあらわれて眺めを変えてしまうへんてこなオブジェ。
けむりを吹くホコリタケ、きてれつな造型のおいしい春の使者アミガサタケ、まるでみかんの皮を剥いたようなツチグリ、目がさめるほど美しいタマゴタケやベニテングタケ、白うさぎのように可愛らしくて美味なヤマブシタケ。ぜんぶ「きのこ」というふしぎで面白いなかまなのです。

2007年秋、東京の生きものたちについて描いた連載漫画『トーキョー博物誌』の中で、新宿御苑でみつけた白いバレーボール大のおおきなきのこ、オニフスベを紹介したのが私の“きのこ漫画家”としてのデビューにあたります。緑の芝生の上に無造作にごろんと転がったふしぎな白いかたまりに目をみはり、いったいこれは何だろう、ここで何をしているのだろうと首をひねりました。創作の基本がセンス・オブ・ワンダーであるならば、これほどワンダーな落し物もなかなかありません。それゆえにきのこは漫画や小説、映像作品に奔放なイメージを与えて来たのです。あ、きのこ文学についてはこの「きのこ面白情報」5月31日付のコラムを書かれた飯沢耕太郎さんの専門ですね。

「一郎がまたすこし行きますと、一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、どってこどってこどってこと、変な楽隊をやっていました」(宮沢賢治『どんぐりと山猫』)

きのこのことを「宇宙から来た生命体にちがいない」と言い張る友だちがいます。たしかに、いつもの日常とはどこか少しちがう雰囲気を、きのこたちは身にまとっているようです。ちなみに、そんなことを主張しつつマツタケが大好物な彼です。おいしければ宇宙原産でも関係ないのでしょう。
きのこは、ちょっとゆかいで手近に楽しめる非日常なんだと思います。

日高さん、あなたにとってのきのことは?
「フシギのかたまり。」

profile-205x205
日高トモキチ
1965年生まれ、漫画家、よろず物書き。京都精華大学非常勤講師。代表作「トーキョー博物誌」 もともと一”隠れきのこ好き”だったが、雑誌ダ・ヴィンチの企画できのこライター堀博美さんと出会い、おおっぴらにきのこ者の末席を汚す仕儀に。

今おすすめのきのこレシピ

きのことトマトのマヨたま炒め

カラフルで簡単に作れて、夏に気になる「におい」ケアにも役立つメニューのご紹介です!きのこに豊富な食物繊維は腸に溜まった老廃物の排出を促すことでにおいケアをサポートします。またきのこのオルニチンは疲労臭のもととなるアンモニアの代謝に関与するため効果を後押し!きのことトマトのうま味、マヨネーズのコクがマッチした彩り豊かなメニューです。

レシピを見る