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きのこ面白情報

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【きのこ面白情報】とよ田キノ子さんコラムVol.31 第5回ニコニコ学会βシンポジウム「きのこ会議」

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こんにちは。
とよ田キノ子です。

去る2013年12月21日、
第5回ニコニコ学会βシンポジウムに於いて「菌(くさびら)放送局特番『きのこ会議』」というセッションを開催、
私は菌類研究者・白水貴さんとともに座長を務めさせていただきました。
地球上の生物の中でも類まれな多様性を誇る菌類。
プロ・アマ、文・理を問わず、様々なジャンルからその魅力や面白さを伝え、共有することで
菌類の多様性を体現するような場をつくりたいと考えました。
(私たちに身近なのは「食」としてのきのこですが、きのこは“おいしい”だけではないのです!)
その考えのもと、「菌放送局」は菌類の魅力をもっと多くの方に伝えたい!ということで活動を開始し、
シンポジウム前に小番組やイベント開催というニコニコ学会βでも初の試みを展開。
菌類研究者と行くエクストリームきのこ狩り、国立科学博物館 筑波実験植物園「きのこ展」からの番組、
TRANS ARTS TOKYO(トランス・アーツ・トーキョー)2013での写真展示とトークイベントなど
情報を発信するだけでなく、実際に見たり聞いたり体験できる場にもなりました。

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「きのこ会議」では、
保坂健太郎さん(きのこ研究者/国立科学博物館 研究員)、飯沢耕太郎さん(きのこ文学研究家/写真評論家)、
伊沢正名さん(糞土師/糞土研究会 代表)という、素晴らしい登壇者をお迎えすることができ、
研究・文学・哲学という3方向からのアプローチが実現しました。
まずは白水さんの「菌類とは?」、とよ田の「多角的に楽しめるきのこ」についてのトーク、
その後、メイン登壇者のプレゼンテーションへ。

保坂さんからは「きのこはいつから地球にいたの?」というテーマで、
約1500万年前の琥珀に閉じ込められたきのこから始まり、
約4億年前の世界最大の菌類化石と言われている「プロトタキシーテス」まで
恐竜よりもずっと前から地球上にいた菌類について迫りました。
古代、陸上に最初に上陸した生物は菌類かもしれないなんて、ロマンのあるお話ですよね。
映画『ジュラシック・パーク』のように琥珀の中からDNAを取り出して培養するということは可能か、
一見きのこには見えない生物を菌類だと特定する過程など、
そんな謎を解き明かしていく菌類研究に触れることができました。

飯沢さんは文学のなかに生えるきのこ「きのこ文学 ア・ラ・カルト」。
「きのこ」は本体である菌糸が“見えない世界”(地下)に広がっており、
「文学」は“見えない世界”(心や無意識)に想像力の菌糸を伸ばす試みであることから
「きのこ」と「文学」は近いところにあるということを述べられ、
「文学はきのこである。あるいは、きのこは文学である。」という“きのこ文学宣言”を掲げました。
そして、一番好きなきのこ文学作品という泉鏡花『茸の舞姫』を朗読され、
会場は飯沢さんの柔らかな声と泉鏡花の創りだした幻想的で妖しいきのこの世界に包まれたのでした。

伊沢さんは「生態系の命をつなぐ菌類」について。
自然保護活動から自然写真家を経て、現在は「糞土師(ふんどし)」を名乗っている伊沢さん。
「糞土師」という読んで字のごとく、屋外で排泄をして自然に返す活動をされています。
伊沢さんは屋外排泄を続けて約40年間、その数は12,500回を超えたと言います。
排泄物というと、やはり臭くて汚いというイメージがありますが、
排泄物は生きている証であり、動植物を食べ、それを臭い汚い排泄物に変えているのは自分自身。
植物が光合成によって有機物をつくり、それを動物が食べ、動物の糞を菌類が分解して土に返し、そこから植物が育ち…という生態系の循環の中では、排泄物の存在が重要。

自分にとって排泄物はカスだけれども、他の生き物にとって排泄物はごちそうなのです。
伊沢さんは人間の排泄物が処理場で焼かれ、最終的にはセメントの原料になっている実情を見て、他の生き物の命を奪って生きている分、人間も生態系の循環の一部として、他の生き物に命を返さねばならないと感じ、屋外での排泄をするようになったそうです。

今回のプレゼンでは、地中に埋めた便が日を追う毎に動植物・菌類・昆虫などによってどのように変化していくか、
排泄物がどのように命に変わっていくかということもわかりやすく説明がありました。
伊沢さんのお話は、過去に私が講演会を実際に拝聴し、とても感銘を受けたので、
これはぜひともたくさんの方に聞いていただきたいと思っていたため、
このような機会が実現し(ちょっと時間は短かったですが)、本当にうれしく思います。

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このように、三者三様のきのこのお話、菌類の多様性を感じていただけるような場になったと思います。
飯沢さんによるきのこ文学のお話で、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』の一節、「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」と引用されましたが、まさに、今回のお三方のお話に共通することだと感じました。

研究の世界も、文学の世界も、自然界と向き合うことも…かんじんなことは、目に見えません。
しかし、それは私たちが少しだけ意識を向けることで、見えてくることも多いはず。
この「きのこ会議」が少しでもそんなことを考えてみるきっかけになればいいなと思います。
(さらには、きのこや菌類について興味を持ってくれたら、もう言うことはありません。)

このシンポジウムの様子は、ニコニコ生放送にてライブ配信されました。
会場であるニコファーレは、壁4面と天井に大型LEDディスプレイが設置されており、
ライブ配信中には来場者を取り囲むようにネット視聴者のコメントが流れる仕組みになっています。
当日、約5万人集まったネット視聴者からはリアルタイムで多くの好意的なコメントが寄せられ、
「きのこ会議」開催中はもちろんのこと、開始前・終了後もきのこ関連のコメントが目立つほど
注目度の高さを感じると同時に、それに応える強烈なインパクトを与えられたのではないかと思います。
セッション後のリアルタイムアンケートでは「とても良かった」79.2%、「良かった」14.3%と
9割以上の好評価を得ることができ、多くの方に満足していただけたと実感しています。
ニコニコ生放送をご覧になれなかった方、このコラムで興味を持ってくださった方は、
ぜひ、ぜひ、動画アーカイブをご覧ください。
ますます深く、面白いきのこの世界を垣間見ることができるはずです。

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個人的には、セッション開催の決定から当日までの約6ヶ月はとても楽しい日々でした。
企画の始まりは、なんとTwitter上!
前回の第4回ニコニコ学会βシンポジウム「むしむし生放送」を視聴中、白水さんと交わしたツイートが
ニコニコ学会β発起人の1人であるメディアアーティスト・八谷和彦さんの目に留まったことがきっかけでした。
実にユーザ参加型を謳う研究会らしい、ユーザの巻き込み方です。
準備期間はまさに初めてのことだらけで、アンカンファレンス形式での議論、定期的に行われる企画会議、
最前線で活躍されている研究者の方々とのお話に触れられることはとても貴重で刺激的な経験でした。
関わってみてわかったことは、専門家や研究者のお話はとても面白いということ!
これまで胞子活動と称して、きのこの魅力を伝える活動を細々としてきましたが、
そういった専門家や研究者とユーザをつなげたり、研究が面白いということを伝えるためのHUBのような役割になれたら、知的好奇心を刺激するような、さらに面白いコンテンツができそうだなと、
これからの胞子活動の形が見えたような気がします。

最後に。
実行委員長の江渡浩一郎さんをはじめ、スペシャリスト揃いの運営委員会のみなさんが支えてくださったお陰で、
このような場に立てたことを誇りに思うとともに、感謝いたします。
また、会場にきのこストラップのガチャガチャを設置してくださった奇譚クラブさん。
きのこストラップが、それを介して会話が生まれるコミュニケーションツールとして活躍したこと、素晴らしかったです。
そして、お忙しい中、登壇を快諾いただいた保坂さん、飯沢さん、伊沢さん、
一緒に座長を務めてくださった白水さんに最大級の感謝を。
本当にありがとうございました!!!

■第5回 ニコニコ学会β シンポジウム
「菌放送局特番『きのこ会議』」
2013年12月21日(土)at ニコファーレ(六本木)
登壇者:
保坂健太郎(きのこ研究者/国立科学博物館 研究員)
飯沢耕太郎(きのこ文学研究家/写真評論家)
伊沢正名(糞土師/糞土研究会 代表)
座長:
とよ田キノ子(きのこ愛好家/ウェブデザイナー)
白水 貴(菌類研究者/日本学術振興会 特別研究員)
セッションコーディネーター:
武田英明(国立情報学研究所 教授)
特別協賛:日本菌学会

【関連リンク】
第5回ニコニコ学会βシンポジウム(公式サイト)
シンポジウムの様子はこちらから全てご覧いただけます。
[ 「きのこ会議」からご覧になるにはこちらから ]
※動画視聴にはニコニコ動画への登録が必要です(無料)

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とよ田キノ子
アートディレクター、グラフィック&ウェブデザイナー、きのこグッズコレクター。
2007年に“キノコ病”を発症し、以後「とよ田キノ子」名義で活動を開始。
キノコグッズコレクションの展示や、キノコをモチーフにしたイラスト作品展、
キノコイベント等を開催。
2011年9月、グラフィック社より出版された『きのこ(乙女の玉手箱シリーズ)』を監修。
日々、キノコの魅力を伝える“胞子活動”を行っています。
信州きのこの会会員。

とよ田キノ子さんウェブサイトはコチラ

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